研究開発・知的財産活動
研究開発
研究開発に関する考え方・方針
川崎重工グループの研究開発は、「川崎重工グループ研究開発方針」に基づきつつ、時代の変化や市場・顧客のニーズを捉えながら、足元から将来にわたる新たな価値創出を担い、当社グループの両利き経営に貢献します。具体的には、持続的な成長に向けて、市場・競合動向や事業状況を踏まえ各事業部門と連携して競争力のある新しい製品・ソリューションの開発を推進するとともに、価値創出の原動力となる共通基盤技術力の強化に向けて、基盤技術の組み換え・強化や、各技術に紐づく技術系人財の育成・強化に取り組みます。また、これに向けて、グループ全体が持ち得る技術を結集し、「技術力、ものづくり力のシナジー」を最大限に発揮しながら取り組みます。
さらに、各事業部門の技術者と技術開発本部のさまざまな分野の専門家がプロジェクトチームを組んで課題を共有し、常に全体最適を目指して「新製品・新事業」の開発に取り組みます。各事業部門が保有する技術的なコア・コンピタンスを、技術開発本部が仲介して他の事業部門の製品へ相互に活用することで、技術の多面的な展開が可能となり、大きなシナジー効果を発揮します。
このように各事業部門のコア技術と技術開発本部の基盤技術を組み合わせる、いわゆる「マトリクス運営」を採用することにより、当社グループ全体で「技術のシナジー」を創出し、さらなる企業価値の向上を目指します。
体制
各事業部門は事業領域特有の研究開発を、技術開発本部は全社横断的あるいは将来的な研究開発を行っており、各プロジェクトにおいては、事業部門と技術開発本部が一体となって取り組んでいます。
また、「グループビジョン2030」の実現に向けては事業部門と本社の社長直轄プロジェクト本部や技術開発本部、水素戦略本部、DX戦略本部が一体となって当社グループの持ち得る技術を結集するとともに、最新のシステムインテグレーション技術やデジタル技術なども活用し、将来にわたる顧客への価値提供に向けた研究開発に取り組んでいます。
責任者
常務執行役員 技術開発本部長 川﨑 卓巳
責任機関・委員会
事業部門と技術開発本部が、定期的に市場環境や事業戦略を共有して開発テーマまで合意形成を行っています。
また、全社技術会議により、新たな共通技術課題や技術系人財の育成への全社的な対応に向けた方向付けを行うとともに、全社横断的な技術交流により、技術の横通しとシナジー効果の追求を図っています。
イノベーションの推進
将来にわたるグループの成長を見据え、各種イノベーションの推進に取り組み、加速的な事業の変革を推進します。
オープンイノベーション
研究開発の加速に向けて、当社グループ内での研究開発のみならず、オープンイノベーションを活用し、国内外の大学や研究機関、スタートアップなどの最先端の技術も活用します。また、他企業とのコラボレーションも積極的に推進します。
オープンイノベーション 事例
イノベーションを創出する Microsoft AI Co-Innovation Lab を神戸市に開設
日本マイクロソフトは2023年10月11日、世界6拠点目となるMicrosoft AI Co-Innovation Labを神戸市に開設し、入居する神戸商工貿易センターにて開所式を行いました。
Microsoft AI Co-Innovation Labは、マイクロソフトおよび川崎重工業株式会社と神戸市が連携し、同市に開設。AIやIoTを活用したイノベーションの創出と産業の振興を目指しており、AIを活用して、プロダクトやサービスの新たな可能性を探るスタートアップを含めさまざまな企業を支援する施設です。
「Microsoft AI Co-Innovation Lab」の詳細はマイクロソフト社ウェブサイトよりご覧ください。
フィリピン共和国の再生可能エネルギー導入拡大に向けたエネルギーシステム構築に関するMOUを締結
川崎重工は、株式会社アイケイエス、Amber Kinetics, Inc.(フィリピン共和国、以下Amber)およびAboitiz Power Corporation(フィリピン共和国)と、脱炭素社会の実現を目指したエネルギーシステム構築に関するMOU※1を締結しました。
本MOUは、フェルディナンド・マルコスフィリピン共和国大統領の公式訪日に際して開催されたLOI※2調印/交換式において調印されたものです。今後、当社を含めた4社はフィリピン共和国において、当社が開発した仮想同期発電機(VSG, Virtual Synchronous Generator)ソフトウェアを搭載したインバータとAmberが開発したフライホイールを組み合わせることにより、系統安定性を損なわずに再生可能エネルギーの導入を実現するエネルギーシステムの調査および開発、案件組成に取り組んでいきます。
- ※1MOU(Memorandum of Understanding):基本合意書
- ※2LOI(Letter of Intent): 意向表明書
プロセスのイノベーション
- 3Dスキャナーを活用した製品製造プロセスの改善
- 3Dデータを活用した輸送プロセスの改善
- VR技術を利用したフロントローディングによる生産プロセス改善
- 画像処理技術を利用した自動検査システムの導入
プロセスイノベーションの効果
成果の一例として、3Dスキャナーにより製品部品の歪みを計測し、部品同士の干渉を事前に検証して、干渉を回避する処置を実施した結果、以前の組立時間と比較して作業時間を22%短縮しました。
環境面のイノベーション
当社は、製品の省エネ化・省資源化など環境性能の向上や、生産過程での廃棄物排出量・化学物質使用量の削減など環境負荷低減を進めるため、独自に定めた基準を満たす製品を「Kawasakiエコロジカル・フロンティアズ(旧:Kawasakiグリーン製品)」として登録しています。
知的財産活動
知的財産活動に関する方針
川崎重工グループでは、企業価値を持続的に向上していくためにイノベーションの創出とコア・コンピタンスを活用した競争優位な事業展開やブランド形成を行っており、知的財産はそのための重要な経営資源の一つと位置付けています。この認識のもと、「川崎重工グループ知的財産方針」に則り、「事業」と「研究開発」に「知的財産」を加えた三位一体による活動を推進することで、当社グループの知的財産権の確保・活用に努めるとともに、有効な第三者の知的財産権を尊重し侵害予防に努めています。
活動体制
戦略的知財活動を推進するため、技術開発本部知的財産部が全社的な施策の立案・推進を行い、各事業部門の知財総括責任者および知財主管部門と連携してそれぞれの事業活動に即した知財活動を行う体制を構築しています。
責任者
知的財産担当役員:代表取締役副社長執行役員 中谷 浩
責任機関・委員会
全社の知的財産活動に関する運営・基本方針策定などを行う「知的財産権委員会」を必要に応じて開催します。
戦略的知財活動
当社グループでは、連続的な成長および非連続的イノベーションの実現を目指し、知財が事業に貢献するための3本柱として「事業戦略に即した知財戦略の検討立案」「非価格競争力の源泉となる知財を確保」「知財リスクマネジメントの徹底」を掲げています。
そのため、事業企画の初期段階から参画し、知財情報を活用した事業戦略立案に資する情報の提供、戦略の提言、事業戦略を強化する知財戦略の立案と推進を行うことで、経営戦略、事業戦略と連動した知財活動の実践に努めています。
当社ブランドの不正使用対策
当社ブランドを無断使用した営業活動や模倣品の製造販売、類似商標の使用や商標登録出願などに対し、商標権などの権利に基づき、しかるべき対抗措置を講じています。この活動を一層展開することにより、当社ブランドに対する市場の信頼を守り、さらに高めていくことに貢献していきます。
発明奨励制度
従業員が行った発明に対しては、特許法職務発明規定を踏まえ、出願時(出願報奨)、登録時(登録報奨)、実施時(実績報奨)にそれぞれ報奨する旨を社内規程に定め、確実に実施しています。さらに、発明に対して秘匿戦略をとった場合についても同様に報奨しています。特に実績報奨金は会社への貢献度を十分に考慮して支給しており、その水準は同業他社や社会の動向を踏まえて、適正となるよう努めています。
従業員への教育
知的財産が事業競争力を高めるための重要な経営資源であること、それゆえ自社の知的財産権の確保・活用に努め、また有効な第三者の知的財産権を尊重することが基本事項であるとして、各職位階層に応じた知財マインド高揚活動を実施しています。
知的財産データ
特許保有件数推移※1(川崎重工グループ)
(年)
国/地域名 | 単位 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 |
---|---|---|---|---|---|---|
日本 | 件 | 2,732 | 2,842 | 2,775 | 2,916 | 3,049 |
米国 | 件 | 1,278 | 1,440 | 1,521 | 1,626 | 1,673 |
欧州※2 | 件 | 385 | 484 | 493 | 585 | 616 |
中国 | 件 | 605 | 707 | 731 | 822 | 928 |
その他 | 件 | 803 | 968 | 1,063 | 1,194 | 1,294 |
- ※1数値は各年末時点での川崎重工+主要連結子会社の件数
- ※2権利継続中の欧州広域特許の件数
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