コーポレート・ガバナンス


基本的な考え方

川崎重工はグループ全体として、株主・顧客・従業員・地域社会などのステークホルダーの皆様に対して透明性の高い経営を行い、円滑な関係を構築しながら、効率的で健全な経営の維持により企業価値を向上させることを、コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方とし、当社グループにふさわしいコーポレート・ガバナンスの構築およびその継続的な充実・強化に取り組んでいます。


企業統治体制の概要

川崎重工は監査等委員会設置会社であり、取締役会の任意の諮問機関として指名諮問委員会および報酬諮問委員会を設置し、業務執行機関として経営会議、執行役員会などを設置しています。
当社における主な会議体およびその内容は以下の通りです。

取締役会

取締役会は、その員数13名(うち、5名は監査等委員である取締役)のうち社外取締役は7名(うち、3名は監査等委員である取締役)であり、過半数を占めています。また、2024年6月には初めて女性の社内取締役(監査等委員)が就任しました。現在、女性取締役は5名、外国籍取締役は2名と、知識・経験・能力のバランスに加えてその多様性を促進し、より多角的な経営判断ができる体制としています。さらに、取締役と各事業責任者(カンパニープレジデント等)を分けることにより経営の監督と執行の分離を進め、取締役会の監督機能の強化を図っています。なお、議長は取締役会の決議により会長が務めています。
取締役会では、決裁規則に基づき上程される各議案について審議するほか、取締役会実効性評価の結果等を踏まえ設定したテーマについて討議を行っています。2023年度は、グループガバナンス強化、コンプライアンス強化、女性活躍推進、資本コストや株価を意識した経営の推進等について議論しました。また、サステナビリティやコンプライアンス、リスクマネジメント、品質管理等、重要な経営課題については、基本方針を取締役会で決議し、執行側にその状況の報告を求める体制を整備しています。
これに加え、取締役会における審議の透明性および客観性の向上を目的に設置している指名諮問委員会および報酬諮問委員会は、議長および構成員の過半数を社外取締役としています。指名諮問委員会は役員選解任に関する方針・基準および役員選解任案についての妥当性などについて審議し、報酬諮問委員会は役員報酬に関する方針・制度および個別報酬の妥当性などについて審議し、それぞれ取締役会に答申もしくは助言を行っています。

監査等委員会

監査等委員会は社外取締役3名を含めた取締役5名で構成し、監査の実効性確保のため、社内取締役2名を常勤の監査等委員として選任しています。また、監査等委員には、適切な経験・能力および必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者、特に、財務報告の信頼性確保のため、財務・会計に関する十分な知見を有している者を1名以上選任しています。

業務執行体制

業務執行に関しては、経営環境の急速な変化に対応できる体制として執行役員制度を採用し、業務執行決定権限の相当部分を、取締役会にて選任された執行役員に委譲することにより、意思決定の迅速化を図っています。
グループ経営全般における社長の諮問機関として、代表取締役およびカンパニープレジデントなどで構成する経営会議を設置し、業務執行における重要事項などを審議するほか、 全社経営戦略会議や重要プロジェクト会議にて各事業・プロジェクトにおける戦略、アクションプラン、ならびにリスク評価や対応策等について多角的な議論を行うことにより、意思決定および業務執行がより適切かつ効率的に行われる体制としています。
さらに、社長を委員長とし、執行役員全員で構成する執行役員会を設置し、取締役会で決定した経営方針や経営計画、経営会議における決定事項に基づき、業務執行方針を示達するほか、経営課題に関する意見交換などを行うことにより、グループ経営における意思統一を図っています。

コーポレート・ガバナンス体制図(2024年6月26日現在)

コーポレート・ガバナンス体制図(2024年6月26日現在)

役員体制(2024年6月26日現在)

          
当社における地位
氏名
業務執行 独立 取締役在任年数※1 指名諮問委員会 報酬諮問委員会 女性 外国人 取締役会出席回数※2 監査等委員会出席回数※2
取締役会長
金花 芳則
12 16/16 -
代表取締役社長執行役員
橋本 康彦
6 16/16 -
代表取締役
副社長執行役員
山本 克也
7 16/16 -
代表取締役
副社長執行役員
中谷 浩
4 16/16 -
社外取締役
ジェニファー ロジャーズ
6 15/16 -
社外取締役
辻村 英雄
4
議長

議長
16/16 -
社外取締役
吉田 勝彦
2 16/16 -
社外取締役
メラニー・ブロック
1 13/13 -
取締役(監査等委員)
加藤 信久
2 16/16 14/15
取締役(監査等委員)
柿原 アツ子
新任 - -
社外取締役(監査等委員)
石井 淳子
4
(7)
16/16 15/15
社外取締役(監査等委員)
津久井 進
2 16/16 15/15
社外取締役(監査等委員)
天谷 知子
新任 - -
  • ※1 監査等委員である取締役の在任年数の括弧書きは、監査役会設置会社における監査役就任期間を含めた在任年数です。なお、当社は2020年6月25日付で監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行しています。
  • ※2 取締役会・監査等委員会出席回数は2023年度実績。

取締役会議長

取締役会議長は、取締役会長が務めています。


コーポレート・ガバナンスの機能(機関・委員会など)

指名諮問委員会
概要 役員の選解任方針・基準および選解任に関する諮問機関
構成

議長:社外取締役

構成:社内取締役2名、社外取締役3名(うち、1名は監査等委員である取締役)

開催回数 2023年度 10回
報酬諮問委員会
概要 役員報酬の方針・制度および個別報酬に関する諮問機関
構成

議長:社外取締役

構成:社内取締役2名、社外取締役3名(うち、1名は監査等委員である取締役)

開催回数 2023年度 7回
経営会議
概要 グループ経営全般における社長の諮問機関として社長を補佐
業務執行における重要事項などの審議
構成

議長:社長

構成:代表取締役およびカンパニープレジデントなど
(注)業務執行監査の観点から常勤の監査等委員も出席

開催回数 月3回程度(2023年度 31回)
執行役員会
概要 取締役会で決定した経営方針や経営計画、経営会議における決定事項に基づく業務執行方針の示達
業務執行上必要かつ重要な報告、伝達、ならびに出席者の意見交換など
構成

議長:社長

構成:取締役会で選任された執行役員全員
(注)業務執行監査の観点から常勤の監査等委員も出席

開催回数 年2回(2023年度 2回)
サステナビリティ委員会
概要 社会・環境および川崎重工グループのサステナビリティを推進するための各種施策の審議・決定
当該施策の達成状況・遵守状況のモニタリング
構成

委員長:社長

構成:取締役(監査等委員・社外取締役を除く)、カンパニープレジデント、サステナビリティ担当役員、本社各本部長など
(注)社外の知見および意見を委員会の意思決定に反映させる観点から社外取締役、業務執行監査の観点から監査等委員も出席

開催回数 年2回以上(2023年度 3回)
全社コンプライアンス委員会
概要 川崎重工グループにおけるコンプライアンスを徹底するための各種施策の審議・決定
当該施策の達成状況・遵守状況のモニタリング
構成

委員長:社長

構成:取締役(監査等委員・社外取締役を除く)、カンパニープレジデント、コンプライアンス担当役員、本社各本部長など
(注)社外の知見および意見を委員会の意思決定に反映させる観点から社外取締役、業務執行監査の観点から監査等委員も出席

開催回数 年2回以上(2023年度 2回)
全社品質会議
概要 品質管理に関する全社方針の協議および徹底
本社、カンパニーおよび関連企業間での品質管理に関する情報共有
構成

議長:技術担当副社長

構成:本社企画本部、技術開発本部、カンパニー担当部門および関連企業担当部門の代表者など

開催回数 年4回程度(2023年度 4回)
全社経営戦略会議
概要 各事業部門における経営戦略および経営計画の策定・見直し
構成

議長:社長

構成:代表取締役およびカンパニープレジデント、カンパニー企画本部長など

開催回数 年2回(2023年度 2回)
重要プロジェクト会議
概要 経営成績に対する影響が大きい重要なプロジェクトの応札や投資決定前におけるリスク管理
当該プロジェクトに係るリスク評価および対応策などについて審議
構成

議長:企画本部長

出席者:本社関係部門および当該プロジェクト担当部門

開催回数 適宜開催

取締役の選定

取締役の選定プロセス

当社の取締役会は「取締役に求められる資質」を定め、豊富で幅広い経験と見識、専門性を持った取締役を選定し、より多角的な経営判断ができる体制としています。その状況は、スキル・マトリックスとして一覧化しています。
なお、スキル・マトリックスのスキル・経験の選定に当たっては、社会課題に対するソリューションの提供を通じて当社グループの持続的な企業価値の向上を図るという観点から、取締役会の監督分野を「ビジョン・戦略定義・ガバナンス整備」、「事業構造転換」、「成長基盤整備に関わる取組み」と定義し、それぞれの監督分野に求められるスキル・経験を以下の通り設定しています。

それぞれの監督分野に求められるスキル・経験
監督分野 求められるスキル 求められる経験
ビジョン・戦略定義・
ガバナンス整備
事業戦略/ガバナンス/IT・DX・セキュリティ 企業経営
グローバル
法務・行政
金融
事業構造転換 事業戦略/ものづくり(技術・開発・生産・品質等)/営業・マーケティング
成長基盤整備に関わる取組み 事業戦略/財務・会計/人事・組織マネジメント/ものづくり(技術・開発・生産・品質等)/
営業・マーケティング/IT・DX・セキュリティ
求められるスキル・経験の選定理由

求められるスキルおよび求められる経験の選定理由は下表の通りです。

求められるスキル 求められるスキルの選定理由
事業戦略 両利きの経営に基づく成長戦略を監督するにあたり、ビジネスモデルの見直しやポートフォリオ改革、政府や自治体・他企業・研究機関との連携といった事業戦略の立案・実施に関する知見・専門性が求められるため。
ガバナンス 企業価値の持続的向上の基盤となるガバナンス体制の確立を監督するにあたり、コーポレート・ガバナンス、リスク管理、人権、コンプライアンス等を含む幅広いガバナンスの知見・専門性が求められるため。
財務・会計 強固な財務基盤を構築し、成長投資の推進と株主等のステークホルダーとの信頼関係の強化を監督するにあたり、財務・会計に関する知見・専門性が求められるため。
人事・
組織マネジメント
優秀な人材を獲得し、多様な従業員の能力を最大限に引き出す人事戦略の策定と実行を監督するにあたり、経営視点の人事・組織マネジメントに関する知見・専門性が求められるため。
ものづくり(技術・開発・生産・品質等) 社会に価値あるソリューションを提供し続けるものづくり戦略の策定と進捗を監督するにあたり、技術、開発、知財、生産、品質、安全等のものづくりに関する幅広い知見・専門性が求められるため。
営業・
マーケティング
マーケットインの視点により創出されたイノベーションの事業展開と情報発信を監督するにあたり、営業・マーケティングの知見・専門性が求められるため。
IT・DX・
セキュリティ
AIの活用、DXの推進によるソリューションの創出と進捗を監督するにあたり、IT・DX・セキュリティの知見・専門性が求められるため。
求められる経験 求められる経験の選定理由
企業経営 企業経営の経験を活かして、事業戦略やコーポレートガバナンス、サステナビリティ、人事戦略等も含めた全社の経営を監督するため。
グローバル グローバル戦略・政策の策定に関わる経験、もしくは海外現地における経営や組織マネジメントの経験を活かして、グローバルな事業成長とリスク管理を監督するため。
法務・行政 法曹界、行政機関における経験を活かして、ガバナンスやリスク管理、事業戦略等を監督するため。
金融 金融機関および当該分野の監督官庁における経験を活かして、財務戦略やものづくり、事業戦略等を監督するため。
取締役のスキル・マトリックス

現在就任している取締役のスキル・マトリックスは下表のとおりです。なお、議論の活性化を期待するスキルにチェックしています。

氏名 当社における地位 求められるスキル 求められる経験
事業戦略 ガバナンス 財務・
会計
人事・
組織マネジメント
もの
づくり
(技術
・開発
・生産
・品質)
営業・
マーケティング
IT・DX
・セキュリティ
企業経営 グローバル 法曹・
行政
金融
金花 芳則 取締役会長
橋本 康彦 代表取締役
社長執行役員
山本 克也 代表取締役
副社長執行役員
中谷 浩 代表取締役
副社長執行役員
ジェニファー
ロジャーズ
社外取締役
辻村 英雄 社外取締役
吉田 勝彦 社外取締役
メラニー・
ブロック
社外取締役
加藤 信久 取締役
(監査等委員)
柿原 アツ子 取締役
(監査等委員)
石井 淳子 社外取締役
(監査等委員)
津久井 進 社外取締役
(監査等委員)
天谷 知子 社外取締役
(監査等委員)

取締役の選定基準

「取締役に求められる資質」

  1. 1.川崎重工グループの経営理念・ビジョンへの深い理解と共感を有すること。
  2. 2.持続的成長と中長期的企業価値向上への貢献を果たせること。
  3. 3.全社的視点を持ち、そのための豊富かつ幅広い経験、高い見識・専門性を有すること。
  4. 4.取締役会の一員として独立した客観的立場から経営・業務執行を監督できること。
  5. 5.能動的・積極的に権限を行使し、取締役会において、または経営陣に対して、適切に意見を述べることができること。
  1. (注)監査等委員である取締役については、監査の実効性を確保する観点から、当社事業に精通し、または会社経営、法務、財務・会計、行政などの分野における高い見識・専門性を有すること、少なくとも1名に関しては財務・会計に関する十分な知見を有することとする。

社外取締役の独立性判断基準

次の各号に掲げる事項すべてに該当しない場合、独立性を満たすと判断しています。

  1. 1.当該社外役員が、業務執行取締役、執行役、支配人そのほかの重要な使用人として現在在籍している、または過去10年間において在籍していた会社(当該会社が定める重要な子会社を含む)(以下「出身会社」という)が、川崎重工グループと取引を行っている場合に、過去5事業年度の平均取引額が、当社グループおよび出身会社の過去5事業年度の平均売上高の2%を超える。
  2. 2.当該社外役員が、法律、会計もしくは税務の専門家またはコンサルタント(法人格を有する場合は法人)として、当社グループから直接受領する報酬(当社役員としての報酬を除く)の過去5事業年度の平均額が、1,000万円を超える。
  3. 3.当該社外役員が、業務執行役員を務めている非営利団体に対する当社グループからの寄付金などの過去5事業年度の平均額が、1,000万円を超え、かつ当該団体の総収入または経常収支の2%を超える。
  4. 4.当該社外役員の出身会社が、当社発行済株式総数の10%以上の株式を保有する主要株主である。
  5. 5.当該社外役員の二親等内の親族が、前四号に定める条件に合致する者もしくは当社グループの業務執行取締役、執行役、支配人そのほかの重要な使用人である。

取締役会の実効性

取締役の任期/制限

取締役の任期 取締役 1年
取締役(監査等委員) 2年
取締役の兼任の
制限に関する基準
当社取締役会では、当社取締役がほかの上場会社の役員を兼任する場合、当社を除く3社の就任までと兼任数の上限を定めています。なお、取締役の個別の兼務状況を株主総会招集通知や有価証券報告書にて開示しています。

取締役会の実効性評価

当社取締役会は、独立社外取締役を含む取締役が、各自が持つ知見・経験に基づき自由闊達に議論を行い、適切に経営判断を行えるよう努めています。その一環として、2015年度より、毎年、取締役会の実効性を評価・分析しています。

実効性評価の方法

外部専門家からの助言および協力を得て、全取締役への匿名アンケート方式により実施しました。
具体的な評価手順は以下の通りです。

  1. 1.取締役会にて前回評価時に設定した課題への取り組み状況を確認し、今回の実効性評価の実施方法(評価方法・主な質問項目など)を決定
  2. 2.全取締役へアンケートを実施
  3. 3.外部専門家にてアンケートを集計・分析し、分析結果について取締役会にて議論
  4. 4.分析結果や取締役会での議論を踏まえ、取締役会にて取り組むべき課題および対応方針を決定

アンケートの質問項目

アンケート質問項目(大項目)は以下の通りで、5段階評価および自由記述形式で実施しています。また、前回アンケートからの継続性を確保しつつ、改訂コーポレートガバナンス・コードの変更点を考慮した内容としています。

  • アンケート質問項目
  1. 取締役会の在り方
  2. 取締役会の構成
  3. 取締役会の運営
  4. 取締役会の議論
  5. 取締役会のモニタリング機能
  6. トレーニング
  7. 株主(投資家)との対話
  8. ご自身の取り組み
  9. 監査等委員会
  10. 総括

評価結果とそれに基づく取締役会議論の結果

アンケートの分析結果から、昨年と同様に取締役会の現状に関する評価は全般的に高く、全設問の相加平均値(自由記述は除く)は昨年と同程度となりました。

最も評点が高かったのは「自由闊達で建設的な議論や意見交換がなされているか」の項目で、取締役会において形式的ではない活発な議論が行われていることを評価する声が多く得られました。さらに、最も評点が向上した項目は「女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人財の多様性の確保の考え方やその目標、人財育成方針・社内環境整備方針」に関する項目で、取締役会討議での複数回の議論や、その結果を踏まえたアクション実施などの取り組みが評価された結果となりました。
また、2023年度取締役会で課題として取り上げた項目のうち「中核人財の多様性確保」については評点が大きく向上しており、課題に対する議論やアクションが着実に進められていることが理由として考えられます。
一方、「デジタルトランスフォーメーション推進の監督」に関する項目が最も評価が低く、AI を含めた自社の将来や方向性、人財確保などに対する経営方針の議論が望まれる結果となりました。(具体的な取り組み内容は「これまでの課題に対する取り組み」をご参照ください。)

これら結果を踏まえ、今後も改善に向けた取り組みを進めていきます。
(課題および強化に向けた取り組みは「さらなる実効性向上に向けた取り組み」をご参照ください。)

上記分析結果などを踏まえた取締役会での議論の結果、「当社取締役会の実効性は確保されている」と判断します。

これまでの課題に対する取り組み

昨年度のアンケート結果より、課題として設定した項目の取り組み状況については以下の通りです。

  1. 1.後継者育成計画(サクセッションプラン)の定着化
    ショート、ロング等の各種リストを整備するとともに、交代のプロセスを定義しました。ショートリストの候補者についてはコンピテンシーに照らした評価を実施するとともに、各役員の職務・人財要件定義書に織り込みました。また、候補者を評価する中で育成課題も明確にし、その点を踏まえたタフアサインメントを適宜付与しています。
  2. 2.中核人財の多様性確保
    後継者育成計画では、役員層の候補者プールに従来以上に多様なルートから人選できる仕組みを検討するとともに、幹部層ではビジョン実現に望まれる行動に着目した評価基準(行動特性評価)による多様な人財の発掘・登用を推進しています。また、多様性の重要テーマである女性活躍について、取締役会において現状と課題の共有、推進強化に必要な視点を討議しました。その際の議論を踏まえ、具体的活動を検討、着手しています。
  3. 3.取締役会における中長期経営方針に関する議論の充実
    2023年度はグループガバナンス強化、コンプライアンス強化、多様な人財の活躍(女性活躍推進)、企業理念の体系整理、資本コストと株価を重視した経営を重要課題として取り上げ議論しました。
  4. 4.品質管理におけるグループ全体の内部統制システムの強化
    社内へのメッセージ発信やeラーニングを用いた教育を実施し、全従業員の意識醸成を促進するとともに、従業員意識調査などを行い、問題の早期発見に取り組みました。また、TQM(Total Quality Management)手法を事業活動へ効果的に活かすべく、業務プロセスの整流化を基盤として、そこにTQM手法を適用することを推進しています。

さらなる実効性向上に向けた取り組み

今回の評価結果および取締役会での議論を踏まえ、取り組むべき課題として設定した主な項目は以下の通りです。今後さらなる取締役会の実効性向上に向けた取り組みを進めていきます。

  1. 1.後継者育成計画(サクセッションプラン)の定着化
    現在実施中の人財登用の仕組みを安定的に運用しつつ、改善を進めていきます。また、将来の後継者候補(幹部層)の育成計画については、カンパニープレジデントとの対話を通じて実効性を高めていきます。さらに、職務・人財要件定義書や評価を運用する中で、引き続きコンピテンシー(行動特性)の全役員への浸透に取り組みます。
  2. 2.中核人財の多様性確保
    2024年度は、女性ライン長の計画的な育成スキームや、事業探索人財の発掘・育成を中心として、引き続き役員候補者プールを多様化することを進めていきます。また、人財マネジメント委員会を通じて、ビジョン実現等経営目標実現に関する多様性確保の重要性認識を深め、今後の全社・部門の取り組みに反映します。
  3. 3.取締役会における中長期経営方針に関する議論の充実
    引き続き「グループビジョン2030」達成に向けて重要課題に沿ったテーマを選定し、取締役会で議論を実施するとともに、決定した方針を執行側へ展開し、具体的アクションに繋げる取り組みを更に強化していきます。
    (2024年度討議予定の重要テーマ)
    資本効率性を意識した事業構成の再検討、多様な人財の活躍、グループガバナンスの強化、DX推進、知財戦略など
  4. 4.品質・コンプライアンス推進の取り組みに対するモニタリング強化
    2023年度に引き続き、TQM(Total Quality Management)を軸とした業務プロセスの整流化・標準化推進、コンプライアンスに関する類似事案の洗い出し等により、全社品質管理の強化を推進していきます。また、グループのガバナンス体制や内部統制システムの見直しにより、不正・誤謬を排除する仕組みづくりを行います。

監査

内部監査

内部監査部門である監査部(19名)が、川崎重工グループの経営活動全般における業務執行が法規ならびに社内ルールに基づいて適切に運用されているかなどの監査を定常的に行うなど、内部統制機能の向上を図っています。監査部長は、個々の監査結果を監査報告書により社長および監査等委員会に報告するとともに、取締役会および経営会議に年2回の総括報告を行っています。

監査等委員会監査

監査等委員会は監査等委員である取締役5名で構成し、このうち3名は当社との取引関係等の利害関係のない社外取締役(東京証券取引所規則の定める独立役員)を選任しています。また、監査の実効性確保のため、社内取締役2名を常勤の監査等委員として選任するとともに、財務報告の信頼性確保のため財務および会計に関する十分な知見を有する監査等委員を配置しています。
なお、社外取締役を含めた全監査等委員は、相互・緊密に情報共有を行い、監査等委員会の監査機能の充実を図っています。
これらに加え、監査等委員会の職務執行を補助するため、監査等委員会室を設置し、専任スタッフを2名配置しています。なお、当該専任スタッフの人事異動・評価等に関しては監査等委員会の事前の同意を得るものとし、業務執行取締役からの独立性を高め、監査等委員会の指示の実効性を確保しています。

常勤監査等委員は、取締役会および経営会議などのそのほか重要な会議へ出席し必要な意見を述べるとともに、監査の環境の整備および社内の情報の収集に努め、内部統制システムの構築・運用の状況を日常的に監視しています。また、収集した社内の情報などについては、適時に社外監査等委員と共有しています。
社外監査等委員は、それぞれの専門的知見に基づき、取締役会および(必要に応じて)経営会議などのそのほか重要な会議へ出席し必要な意見を述べるほか、上記の活動を通して監査に必要な情報の入手に努めるとともに、他の監査等委員と協力して監査の環境の整備に努めています。また、監査等委員会への出席などを通じて常勤の監査等委員との情報共有に努めています。

会計監査

川崎重工は、会計監査人である有限責任あずさ監査法人の財務諸表監査を受けています。監査等委員会は、会計監査人と定期的に会合を開催し、監査計画および監査重点項目の説明や監査結果の報告を相互に行うとともに、情報交換や意見交換を行うなど連携を図っています。なお、監査上の主要な検討事項(KAM)については、会計監査人および取締役・経理部門と緊密に連携の上、ディスカッションを行っています。


取締役の報酬

取締役(監査等委員および社外取締役を除く)の報酬は、2020年11月に制定しましたグループビジョン2030「つぎの社会へ、信頼のこたえを ~Trustworthy Solutions for the Future~」の実現に向け、次の基本方針に基づくものとしています。

基本方針

「ペイ・フォー・ミッション(企業として成すべきことを成したことへの報酬)」の考え方に基づき、各役員の職責と成果に応じた報酬体系とし、短期に加え、中長期の企業価値の向上への貢献に報いるとともに、株主をはじめとするステークホルダーとの価値共有を実現します。

取締役(監査等委員・社外取締役を除く)の報酬

取締役の報酬は、「基本報酬」「短期インセンティブ型報酬」および「長期インセンティブ型報酬」で構成し、「基本報酬」および「短期インセンティブ型報酬」は金銭で支給します。また、「長期インセンティブ型報酬」は、株主との利益・リスクの共有を図るとともに、中長期的な企業価値向上へ貢献するインセンティブを高めることを目的として、業績連動型株式報酬とします。
なお、「長期インセンティブ型報酬」においては、対象取締役が当社に損害を与えたことに起因して解任されまたは辞任した場合等一定の場合には、取締役会の決議により、付与されていたポイントの全部または一部を失効させることができます。
各報酬の構成比率は、前事業年度のグループ連結業績が目標とする水準を達成し、かつ各取締役が設定した前事業年度に係る目標の達成度が100%の場合に、おおむね「50%:30%:20%」となるよう設定します。

報酬水準

報酬水準は他社の状況および外部専門機関による役員報酬調査データを勘案の上、適切な水準となるよう設定しています。取締役社長執行役員の報酬を100とした場合の役位別の報酬水準はおおむね以下の通りです。

取締役会長 87
取締役社長執行役員 100
取締役副社長執行役員 65
取締役常務執行役員 44

取締役報酬の構成(監査等委員・社外取締役を除く)

  支給方法 内容
基本報酬(固定) 金銭 各取締役のミッションに基づいて個々のグレードを定め、これに応じた報酬とします。
短期インセンティブ型報酬(業績連動) 金銭 単年度の業績目標の達成度等に応じた業績連動報酬とし、グループ連結業績および各取締役の目標達成度に基づき決定します。
グループ連結業績の指標は、単年度の業績目標の着実な達成と株主との価値共有を促すため、親会社株主に帰属する当期利益(以下「当期利益」)とします。
当期利益に応じた支給率は下記①、目標達成度の詳細は下記②の通りです。なお、当社グループは、資本コストや株価を意識した経営の一環として、税後ROICを経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の一つとし、当期利益の水準を税後ROICに基づいて設定しています。
長期インセンティブ型報酬(固定+業績連動) 株式 株式交付信託の仕組みを活用し、在任期間に応じて付与されたポイント(固定付与分)、および各対象取締役の目標達成度に応じて付与されたポイント(業績反映分)に基づき、原則として取締役退任時に当社株式の交付および当社株式換価処分金相当額の金銭の給付を行います。付与するポイントには固定付与分と業績反映分を設け、固定付与分については在任期間に基づき一定数の株式を付与することで株主との価値共有を図ります。また、業績反映分については、各対象取締役の目標達成度に基づき株式を付与することで中長期的な企業価値の向上へのインセンティブとします。各対象取締役の目標達成度は、各対象取締役が前事業年度に設定した全社および管掌組織・担当業務における中長期的課題に対する目標の達成度とします。
固定付与分と業績反映分の比率は、目標の達成度が標準的な水準であった場合に「50%:50%」となるよう設定しています。なお、当面は固定付与分と業績反映分の比率を「50%:50%」としますが、将来的には中長期的な企業価値向上へのインセンティブを高めていくため、業績反映分の比率を高めていくこととしています。目標達成度の詳細は下記②の通りです。

取締役の報酬構成比

取締役の報酬構成比
  • 前事業年度のグループ連結業績が目標とする水準を達成し、かつ各取締役が設定した前事業年度に係る目標の達成度が100%の場合

① 親会社株主に帰属する当期利益に応じた支給率

当期利益 支給率 (%)
0未満 -
0~250億円未満 0~45
250億円~450億円未満 50~95
450億円~700億円未満 100~195
700億円以上 200~
  • 現状の資本コストが4~5%であることに鑑み、目標とする当期利益を、資本コスト相当の税後ROICを達成する水準として450億円、 資本コストを約3%上回る税後ROICの水準として700億円としています。

② 目標達成度

目標設定

取締役は全社および管掌組織・担当業務における短期的課題・中長期的課題に対して目標を設定し、その達成度を短期インセンティブ型報酬、長期インセンティブ型報酬に反映します。なお、設定する目標は、業績に関する重要な財務指標に加え、SDGs達成に向けた取り組み、従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みなどの非財務指標を含むものとします。短期的課題・中期的課題に対する目標は以下の通りで、それぞれ、その実現に向けて各取締役が実行するアクションおよび達成水準を設定します。

  • 短期的課題に対する目標:当事業年度において実現すべき目標
  • 中長期的課題に対する目標:グループビジョン2030で定めた2030年に目指す将来像を踏まえて実現すべき目標

目標達成度と評価方法

取締役が設定した目標は、毎期末に評価を行った上でその達成度を報酬へ反映します。各取締役の評価は次の方法で決定します。

  • 社長:報酬諮問委員会の委員である社外取締役全員が共同で、社長との個別面談を実施した上で、当該社外取締役の協議により決定
  • 副社長:報酬諮問委員会の委員である社外取締役全員が共同で、副社長との個別面談を実施した上で、当該社外取締役および社長の協議により決定
  • 上記以外の取締役:社長が副社長と共同で個別面談を実施した上で、副社長との協議により策定し、報酬諮問委員会の審議を経て決定

役員報酬制度の改正内容

2024年5月9日の取締役会において、当社の取締役(監査等委員である取締役および社外取締役を除く)および執行役員の報酬制度を以下の通り改定することを決議しました。

改正内容(2025年7月以降適用)
業績連動性の強化 金銭報酬・株式報酬ともに固定報酬の比率を下げ、業績連動性を強化します。
評価指標の新設 これまでは対象取締役が個別に設定していた活躍社員比率、ESG、株価向上に関する目標について、共通の基準を設定し独立した評価指標として、以下の通り業績連動報酬に反映します。
短期インセンティブ型報酬に反映
  • 従業員エンゲージメント指標
    当社で働く人財の一層の活躍を引き出すことを目的に、従業員エンゲージメントサーベイの「働きやすい環境」と「社員エンゲージメント」が共に高い従業員の比率に応じて支給率を決定します。前年度の日本企業平均スコアを超える水準を100%、世界企業平均スコアを200%の支給率に設定します。
長期インセンティブ型報酬に反映
  • ESG指標(CO2削減と第三者機関評価)
    CO2削減を含む ESG 全般の取り組みを促進するため、当社の事業活動およびカーボンニュートラルを実現するソリューション提供によるCO2削減の目標達成度により評価し、併せて第三者機関評価(Dow Jones Sustainability Index※1)を踏まえて支給率を決定します。
  • 株価
    企業価値向上に対する意識づけを強化するため、目指すべき株価を可視化し、株価上昇のインセンティブを高めます。企業価値向上への取り組みをより強化することを目的に、毎年達成度合いに応じた支給率を設定します。
報酬構成比 報酬の「基本報酬」「短期インセンティブ型報酬」「長期インセンティブ型報酬」の構成比率は、前事業年度のグループ連結業績及び各指標の目標とする水準を達成し、かつ各対象取締役が設定した前事業年度に係る目標の達成度が100%、かつ報酬制度改正を決議した2024年5月9日取締役会前後の株価水準で換算した場合に、概ね「33.3%:33.3%:33.3%」となるよう設定しています。
  • ※1  S&P Dow Jones Indices社とRobecoSAM社が共同開発した株式指標

監査等委員・社外取締役の報酬

職務の独立性という観点から業績連動を伴わない固定報酬としています。

報酬決定方法

取締役(監査等委員を除く)の報酬は、あらかじめ株主総会で決議された報酬等の範囲内で、過半数を社外取締役で構成し、かつ議長を社外取締役とする報酬諮問委員会の審議を踏まえ、取締役会決議により決定しています。
取締役会決議により、各取締役の個別報酬の決定を代表取締役社長執行役員に一任することがありますが、その場合も、取締役の報酬等の額またはその算定方法の決定に関する方針に従い、報酬諮問委員会での審議を踏まえて決定することとしています。監査等委員の報酬は、監査等委員である取締役の協議により決定しています。

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