人財開発
マネジメント・アプローチ
基本的な考え方
川崎重工グループが21世紀において、世界的な企業として存続し発展していくためには、全従業員が、経営方針・全社施策に沿った具体的目標を、それぞれの立場で効率的かつ効果的に徹底して達成していくことが求められます。
目標達成に向け具体的に考え、行動していくのは"人"であり、企業が成長・発展していくには、人財の育成と活性化が最も重要になります。
当社グループの人的資本に関する基本方針「川崎重工グループ人財マネジメント方針」においても、変革に果敢に挑戦する意識を持ち、自ら実行する人財を継続的に育成すること、人財の能力や意欲を適切に把握し、仕事や能力開発を通じて従業員のキャリア実現を目指すことを宣言しています。以上を踏まえ、当社グループでは人財育成に対して、次のように考えています。
- 企業業績の伸長に貢献し、従業員の能力向上と生きがいに寄与するため、人財育成を行う。
- 人財育成の基本は、OJT(On the Job Training)、自己啓発、ローテーションにある。
- これらを側面からサポートするために、Off-JTを行い、Off-JTの結果を職場で活用、実践できるようにする。
- 人財育成の責任はライン長にある。
- 人財育成は、個別に、計画的に、継続的に行う。
- 能力開発の機会を従業員全員に、かつ入社から定年の全期間にわたって提供する。
目指す人財像
当社グループでは、経営者をはじめとするリーダーの計画的育成や、プロジェクトのリスクマネジメント強化、グローバル人財育成を通じて高度な知識と幅広い経験を有する人財を育成します。具体的には、カワサキグループ・ミッションステートメントに基づいて設定された以下6つの人財像の実現を目指し、あらゆる階層において、一貫した育成・強化を図っています。
- グローバルに活躍できる人財
- 社会や顧客の課題を解決できる人財
- 変革・革新を担うことのできる人財
- 技術を高度化できる人財
- 総合力を発揮できる人財
- 常に収益の視点を持つ人財
体制
人事本部内に人財開発部を設置しており、若手従業員や経営者層を含む各階層別の育成やグローバル人財育成など、当社グループ共通の教育・研修は、本社の人事部門で企画・実施しています。さらに、各事業部門において、その事業分野で求められる能力・スキルに応じた教育や研修を企画・実施しています。
会議体の体制については、「人財マネジメント」をご覧ください。
人財開発プログラム
マネジメント力・業務遂行力の強化(事務職・技術職の育成)
事務職・技術職は、入社から3年目までの新人期に、指導員制度に基づく体系的なOJTと各種研修を組み合わせて、若手担当者の早期育成を図っています。
また、経営者候補の育成を目的とした「Kawasaki経営幹部セミナー」や「Kawasaki経営塾」、ミドルマネジメントの強化を目的とした役職者向けの部長研修(Senior Management Course)、課長研修(Middle Management Course)などを幅広い層を対象に実施するとともに、幹部職員以上を対象に長所と改善点の気づきを促す「360度サーベイ」をそれぞれ実施しています。
さらに、研修以外における人財開発として、日常の業務遂行にあたっては、「チャレンジ&コミットメントシート」にて部門内で各個人の達成目標を共有し、年4回の上司・部下の面談を中心としたコミュニケーションにより、業務を通じた能力開発を行っています。
本社主催の主な階層別研修実績(川崎重工グループ(国内一部を除く))
(年度)
単位 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
新入社員研修 | 参加人数 | 名 | 338 | 344 | 232 | 230 | 278 |
延べ時間 | 時間 | 14,872 | 15,136 | 10,208 | 10,105 | 10,008 | |
新任課長研修 | 参加人数 | 名 | 125 | 103 | 140 | 139 | 138 |
延べ時間 | 時間 | 7,843 | 4,944 | 7,140 | 7,020 | 7,176 | |
新任部長研修 | 参加人数 | 名 | 48 | 36 | 39 | 38 | 45 |
延べ時間 | 時間 | 2,700 | 1,512 | 1,521 | 1,510 | 1,800 | |
Kawasaki経営塾※1 | 参加人数 | 名 | 9 | 9 | 30 | 29 | 30 |
延べ時間 | 時間 | 1,152 | 1,152 | 4,080 | 4,120 | 4,080 | |
経営幹部セミナー | 参加人数 | 名 | - ※2 | 121 | 103 | - ※2 | 50 |
延べ時間 | 時間 | - ※2 | 242 | 206 | - ※2 | 100 |
- ※12021年度より、早期育成を目的に、Kawasaki経営塾の受講対象を部長級から課長級に下げ、代わりに受講者数を9名から30名に拡充。
- ※2新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2019、2022年度は開催を中止。
事務職・技術職の研修体系
現場力の強化(生産職の育成)
生産職は、若手に向けた「技能資格早期取得奨励金制度」や、高度な専門技能を持つ熟練生産職を「範師」と認定し、その技能を計画的に後進に伝えていく「範師制度」を設け、生産現場における技能の伝承と向上に取り組んでいます。2023年度は、2名を新たに認定し、前年度からの継続者と合わせて5名が「範師」として技能伝承活動を実施しています。
また、「技能グランプリ」「ものづくり兵庫」といった社外の技能競技会にも積極的に参加して優秀な成績を収めています。2023年度は「ものづくり兵庫」技能競技大会の旋盤職種において2位を獲得、「技能グランプリ」においても銀賞1名、銅賞1名、敢闘賞1名の入賞者を輩出しました。
2023年度受賞実績
競技大会 | 競技種目 | 結果 |
---|---|---|
令和5年度「ものづくり兵庫」技能競技大会 | 旋盤 | 第2位 |
第32回 技能グランプリ | 機械組立て | 銀賞 |
旋盤 | 銅賞 敢闘賞 |
生産現場の管理監督者には、リーダーシップの強化を目的に、職場長研修、班長研修を、また若手には、当社のものづくりの仕組みを学ぶ「KPS※基礎研修」や「品質管理基礎研修」を実施しています。
- ※KPS:Kawasaki Production Systemの略で、当社が独自に開発した生産システムです。
生産職の研修体系
- (注)全社を対象とした本社主催分のみ記載しています。
そのほかの現場力強化の取り組み
- 技能交流会
近年、当社の生産現場では、技能を次世代へ確実に伝承することが喫緊の課題であり、若手の育成、技能向上に力を注いでいます。毎年、明石工場で、国内外の生産拠点で働く若手が、職場で鍛えた技能を競い合う技能交流会を開催しています。例年、国内および海外数か国から若手技能者たちが参加し、自身の磨き上げた技能を思う存分に披露し、お互いに競い刺激し合って、多くの学びを得ています。2020年度以降は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から実施見送りとしていましたが、2024年度の復活に向けての検討を進めており、今後もこうした取り組みを通じて、当社グループ全体の技能向上・維持に努めていきます。 - 技能伝承の場
事業基盤である「ものづくり力強化」に向けた技能伝承を積極的に推進していく必要があります。そのため、2012年に播磨工場に技能教育センター「匠塾」を、また2014年には明石工場に「明石ものづくり技能創育センター(MANABIYA)」を開設しました。これまでに実施してきた技能教育システムと、これら技能伝承の場の創設の相乗効果により、技能伝承に加え、新たな技能の習得、短期間での技能育成・指導者の養成、そしてお互いの技能を高め合う場として大きな成果を挙げています。 - 技能資格早期取得奨励金制度
生産現場力の向上施策の一環として、技能資格の早期取得を促し、早期取得者には奨励金を支給する制度であり、例年、7月と12月の年度内2回の調査結果に基づき支給されます。2023年度は上期に72名、下期に56名の生産職が本制度を利用しました。
グローバル人財の育成
グローバルな事業展開を支える人財のさらなる育成を目的として、2008年以降、グローバル人財育成施策に取り組んでいます。具体的には、「グローバルビジネスタレント養成研修(旧海外ビジネス担当者研修)」を実施しています。さらに、国内人財のグローバル化を目的とする「グローバル人財育成インターンシップ制度」や「アジアビジネス研修」の導入、また海外拠点の現地技術者の育成支援などを行い、グローバル人財育成施策の拡充を図っていきます。
2018年度には、自己啓発支援としてKawasaki Bilingual Programという英語学習プログラムを新たに策定し、多様な英語研修を用意し、意欲的な従業員がグローバル人財として成長できる環境を整えています。
グローバルビジネスタレント養成研修
グローバル事業が全体の約6割を占める当社グループのビジネス環境を考慮し、グローバルな視野に立って働く心構えや海外ビジネスに関するスキルを学ぶ「グローバルビジネスタレント養成研修」を実施しています。本研修の受講者であるグローバルビジネスに関連する部門の若手および中堅社員が、グローバルな視野や判断基準などのマインドセットに加え、輸出管理や財務知識などグローバル経営に有用な業務知識を習得し、多様なチームメンバーと協働して事業を推進することにより、当社グループの事業展開において「グループビジョン2030」の1つの柱である、「多様性を強みとして、社内外の組織の枠・製品の枠を超えて動く、オープンで自由闊達・創造的なチーム」の実現の鍵となることを期待しています。
2023年度の受講者18名のうち13名は2024年3月現在、海外事業に従事しています。
グローバル人財の育成マップ
本社主催の主なグローバル人財育成関係研修実績(川崎重工グループ(国内一部を除く))
(年度)
単位 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
グローバルビジネスタレント養成研修 (旧・海外ビジネス担当者研修) |
参加人数 | 名 | 16 | - | 15 | 15 | 18 |
延べ時間 | 時間 | 872 | - | 765 | 750 | 972 | |
グローバル基礎力強化研修 (旧・異文化対応力研修) |
参加人数 | 名 | 38 | - | 23 | 23 | 0 |
延べ時間 | 時間 | 304 | - | 172.5 | 180 | 0 | |
英語スキルシリーズ※1 | 参加人数 | 名 | 17 | 19 | 12 | 15 | 13 |
延べ時間 | 時間 | 368 | 161 | 242 | 250 | 227 | |
英文ライティングシリーズ※2 | 参加人数 | 名 | 37 | - | 23 | 20 | 34 |
延べ時間 | 時間 | 956 | - | 345 | 320 | 449 |
- (注)語学研修は、各事業所でも実施しています。
- ※1英語スキルシリーズ:ミーティング研修(音読・実践)、プレゼンテーション研修、ネゴシエーション研修
- ※2英文ライティングシリーズ:テクニカル・ライティングコース(~2019年度)、ビジネスライティング研修、基礎から学ぶEメールライティング
ミドルマネジメントの強化
「グループビジョン2030」の達成に向けては、経営戦略の全体方針を理解するミドルマネジメントが各部門において行動変容を促すキーになると考えています。プレイングマネージャーの域を脱し、自部門のミッションを理解しつつ、部下を育成しながら自組織のビジョンをいかに達成するか、という課題にしっかりと向き合えるマネジメント力の強化を目指し、部課長を対象とした研修を実施するなどマネジメント層の育成に取り組んでいます。
ミドルマネジメントコース(課長研修)
ミドルマネジメント(課長レベル)の役割である「自部門の目標達成」と「部下育成」を遂行する上での現状把握、課題認識を行うとともに、その解決のためのリーダーシップ行動とマネジメントスキルの習得を目的として、2019年度より実施しています。具体的には、受講者自身のリーダーシップ行動を振り返ることで自己認識を深め、自組織の現状を把握し、部下の自発的行動を促すコミュニケーションスキルを学ぶとともに、自組織のビジョン達成に向けて、自組織の課題を正しく設定し、解決のためのアクションプランを策定するプログラムを実施しています。
プロジェクトマネージャーの育成
近年、製品単体で販売するだけでなく、システム周辺設備を含めて請け負うプロジェクト型ビジネスが増えています。そこで、こうしたプロジェクトを遂行できるプロジェクトマネージャーの育成を目的として、2016年度より新たな育成施策に取り組んでいます。具体的には、社内外の大型プロジェクトの経験者を講師に迎え、プロジェクトを成功へ導くためのノウハウを伝承する「プロジェクトマネジメントセミナー」、プロジェクトマネジメントの知識体系を学ぶ「プロジェクトマネジメント研修」などにより、プロジェクトマネジメント力の向上にグループ全体で取り組んでいます。
次世代経営者の育成(Kawasaki経営塾)
厳しさを増す経営環境において、中長期にわたる企業価値の向上を達成することのできる経営人財の育成を行っています。主事から執行役員に至るすべての過程で経営者育成のパイプラインを構築しており、各階層の課題に応じた育成プログラムを組んでいます。
具体的な取り組みとして、選抜された課長級の経営幹部候補を対象に、「Kawasaki経営塾」(9か月間/期)を実施しています。参加者に経営知識の付与のみならず、外部講師や他社経営者との議論、数多くのグループ討議を通じて、川崎重工グループ経営の実像への理解を深めてもらうことで、経営課題解決に向けたグループ全体最適の視点、グローバルな経営的視点の獲得を図り、企業理念を体現できる経営人財に育成することを目指しています。
人財開発の投入費用
人財資本の投下資本利益率(ROI)(川崎重工グループ(国内・海外))
(年度)
単位 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|---|---|
売上高(a) | 百万円 | 1,641,335 | 1,488,486 | 1,500,879 | 1,725,609 | 1,849,287 |
営業費用(b) | 百万円 | 1,579,272 | 1,493,792 | 1,455,074 | 1,644,098 | 1,813,094 |
従業員関連費用(c)※ | 百万円 | 161,460 | 156,707 | 147,460 | 143,971 | 140,457 |
人的資本の投下資本利益率 (a-(b-c))/c |
1.38 | 0.97 | 1.31 | 1.57 | 1.26 |
- ※給与・賞与および福利厚生費
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