ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
マネジメント・アプローチ
基本的な考え方
企業活動のグローバル化の進展と国際競争力の強化、日本を含めた先進国における人口減少に伴う労働力人口不足への対応などを背景に、人々の就労観や働き方が一層多様化しています。このような環境の中で川崎重工グループが持続的な企業価値の向上を図っていくには、国籍、性別、年齢、宗教の違いや障がいの有無などに関わらず、多様なバックグラウンドを持つ人財が集まり、従業員一人ひとりがお互いを受け入れ、相手を認める意識を持ちながら多様な能力を存分に発揮すること、そしてそれを最大化する組織づくり、すなわちD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が重要であると考えています。2024年度からは、公平性を意味するE(エクイティ)を加えることで誰もが公平に挑戦できる機会を得られるように支援しています。このような認識のもと、当社グループはDE&I推進のための各施策に積極的に取り組んでいます。
目指す組織の姿
当社グループでは、障がい者や外国人、高齢者など、さまざまな属性を持つ人が働いています。そうしたさまざまな属性の社員の能力を結集し、「つぎの社会へ、信頼のこたえを」というビジョンを実現していくために、「女性活躍推進」「仕事と育児・介護の両立支援」「外国籍社員の活躍支援」「LGBTへの理解促進」「ワークライフバランスや成果・効率を意識した働き方の実現」などの活動に取り組んでいます。
また、「川崎重工グループ行動規範」においても、従業員の多様性を尊重し、すべての人がいきいきと働ける職場を目指すことを宣言しています。
体制
当社は本社人事本部にDE&I推進課を設置しており、DE&I推進のための諸活動を行っています。
会議体の体制につきましては「人財マネジメント」をご覧ください。
ダイバーシティの推進
女性の活躍推進
当社では女性の活躍推進に注力しており、2025年の女性幹部職員数を2020年度比2倍の116名超に、新卒採用における女性比率を事務系総合職は40%以上、技術系総合職は15%以上に引き上げる目標を設定しています。
女性従業員の定着やキャリアアップの意識の醸成を目的として、女性管理職を対象とした「D&Iフォーラム」を開催し、社長メッセージや女性役員によるパネルディスカッションにて、当社における女性活躍について意見交換を行っています。また、社外のロールモデルからも成長のヒントを学ぶとともに、社外の人的ネットワークの構築を図るために神戸を拠点とする企業と連携し、「女性リーダー育成勉強会」「技術系女性交流会」を開催しています。さらに、2023年度には、大学と連携した「女性エンジニア養成プログラム」でのワークショップを実施するなど女性技術者の積極的な採用活動にも取り組んでいます。
事務職・技術職新卒採用者数(女性)※と事務職・技術職の新卒採用者に占める割合(川崎重工・川崎車両・カワサキモータース)
- ※各年度4月1日時点
外国籍従業員の雇用と活躍推進
2012年度より外国籍従業員の新卒定期採用を開始し、韓国、中国、スウェーデン、インドなど、グローバルに採用を進めています。このような状況の中、上司・職場と外国籍従業員のコミュニケーションの向上を図り、教育・文化などが異なる外国籍従業員への理解を促進するため、受け入れ職場向けのガイドブックを作成・配布しているほか、上司向けの異文化理解研修、外国籍従業員向けの日本のビジネス環境を理解する研修を実施しています。
障がい者雇用と活躍推進
障がい者の雇用拡大にも努めており、さまざまな職場で障がいのある従業員が活躍しています。2013年9月に特例子会社である株式会社川重ハートフルサービスを設立し、グループとしても雇用率の維持・向上に向けて積極的な採用を進めています。2024年度の障がい者雇用率は法定雇用率を上回る2.60%でした。また、社屋のバリアフリー化にも積極的に取り組み、障がい者が持てる能力を十分に発揮できる環境を整えていきます。
障がい者雇用者数※1 ※2と障がい者雇用率(川崎重工・川崎車両・カワサキモータース)
- ※1各年度6月1日時点。各実績には特例子会社の株式会社川重ハートフルサービスを含みます。
- ※2短時間労働者は1名を0.5名として、重度障碍者は1名を2名としてカウントしています。
シニア人財の活用/活躍支援
当社は改正高齢者雇用安定法の義務化を踏まえ、定年延長に取り組んでおり、多くのベテラン従業員が、これまで蓄積した経験を活かして技能の伝承を進めるとともに実務従事者として活躍しています。さらに、50歳代を対象に「キャリアセミナー」を開催し、自身の強みを認識することで、その後の働き方について改めて考えるきっかけにしています。
LGBTに関する取り組み
LGBT当事者が働きやすい職場づくりを目指し、社長メッセージの発信、社内セミナーの開催、従業員への教育のための「LGBTハンドブック」の発行、自身がLGBTの支援者であることを周囲に示す「Kawasaki LGBT ALLYマーク」の配布、関連イベントへの参加を通じて従業員への啓発を進めています。2023年度末までに、約1,100名の従業員がALLYへの賛同を表明しています。また、LGBTに関する当社従業員の行動指針として「Kawasaki-LGBT行動宣言」を策定し、基本的な姿勢と遵守すべき行動を定めています。
川崎重工では、2020年度より定める条件を満たしていれば同性パートナーとの婚姻関係を認める「同性パートナー登録規程」、2022年度には従業員の性自認に応じた氏名で働ける「ビジネスネーム制度」を新設し、LGBT当事者の会社生活および私生活の向上に役立つ仕組みづくりに取り組んでいます。
アンコンシャスバイアスに関する取り組み
2020年度より、社内有志参加者向けに「多様性について考えるセミナー」をオンライン中心で開催しています。これまでに10回開催し、グループ会社を含む約4,000名が参加しており、アンコンシャスバイアス、LGBT、発達障がい仕事サポート、不妊治療と仕事の両立支援などをテーマに取り上げてきました。2023年度は10回目の開催を迎え、「男性育児参画と部下マネジメント」をテーマに、副社長から、当社の課題やあるべき姿などを含むメッセージを発信しました。当日の動画やセミナーのアンケート結果などは社内イントラネットにて配信しており、当日参加できなかった従業員も数多く視聴しています。セミナーへの参加者も年々増加しており、従業員の多様性に対する関心と理解が高まっています。2024年度以降も引き続きセミナーの開催を行うとともに、より多くの従業員が多様性について考えるきっかけになるよう、社内への情報発信を強化していきます。
ワークライフバランス
ワークライフバランスは多様な従業員が強みを発揮できるダイバーシティ推進のための土台です。持続的な企業価値の向上を図っていくためには、多様な従業員がワークライフバランスの取れた中で創造的に能力を発揮できる生産性の高い職場づくりが重要です。当社グループでは、従業員が会社や周囲から期待されている仕事や自分自身が納得できる仕事をしながら、健康で充実した生活を送り、さらに次元の高い仕事をする環境を整備することを重視しています。仕事と私生活を両立できるような多様な働き方を用意し、組織的に業務効率化を進めています。
育児・介護と仕事の両立支援
当社では、従業員が仕事と子育て・介護を両立させながら、いきいきと働き続けることができるように、さまざまな支援を行っています。特に、子どもが3歳に到達するまで取得できる「育児休業」、小学校卒業まで利用できる「短時間勤務制度」、最長3年間取得できる「介護休業」、育児・介護などで必要なときに時間単位で休暇を取れる制度など、国の基準を上回る取り組みをしており、2010年から子育てサポート企業の認定も受け、「くるみんマーク」を取得しています。
それに加えて、振替出勤日に社内で一時預かりを実施する「振替出勤日の託児」や、子どもが病時・病後時の看護や出張・残業に対応するために会社が定めたベビーシッターサービスを利用できる「子育てレスキュー制度」、保育園入園のための活動を支援する「保活コンシェルジュ」、育児休業者の職場復帰を支援する復帰者セミナーの開催、共働き夫婦のためのキャリアセミナーの開催など、育児世代向けの取り組みの充実を推進しています。
そして、出産・育児などによる離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児を両立できる企業風土を醸成するため、特に男性従業員の育児休業取得率を2025年までに50%以上に引き上げる目標を設定しています。また、多様な属性を持つ従業員が多様な働き方を選択できるよう、男性育児参画の促進・支援のためのセミナーや、育児休業からの復帰者とその上司を対象にした「育休復帰者セミナー」を実施し積極的に啓発を図っています。
各種支援制度の紹介(川崎重工・川崎車両・カワサキモータース)
育児・出産 | 育児休業 | 子が満3歳に達するまで取得可。取得回数に制限なし |
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保活コンシェルジュ | 育休者に対し、保育園入園を支援するサービスを提供 | |
看護休暇 | 小学校卒業までの子1人につき年10日、子が2人以上の場合は合計20日まで取得可(法定は、1年につき5日、子が2人以上の場合年10日まで) | |
積立休暇※ | つわりや育児(小学校卒業まで)または看護で必要な場合、取得可 | |
フレックスタイム制の適用 | フレックスタイム制の適用対象外の部門に勤務する従業員についても、つわりや育児(小学校卒業まで)で必要な場合、適用を受けることが可能 | |
時間外勤務および休日勤務の制限 | 子が小学校を卒業するまで、時間外・休日勤務を命じられない取り扱いが可能 | |
育児のための短時間勤務 | 子が小学校を卒業するまで、1日最大3時間短縮可 (障害児や医療的ケア児などを養育する従業員は、子が18歳に達する日の属する年度の3月31日まで適用を受けることが可能) |
|
慶弔休暇 | 配偶者の産前産後期間である産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)・産後8週間に5日を取得可(ただし、産前期間以前に出産した場合は出生日を起算として2日前から取得可) | |
川重子育てレスキュー制度 | 病児・病後児対応、出張・残業対応で、会社が定めた保育事業者のベビーシッターサービスを利用した場合の費用補助 | |
振替出勤日の託児 | 会社カレンダーによる振替出勤日に事業所内または事業所付近に託児室を設置し、会社が委託した保育事業者による託児を実施 | |
介護 | 介護休業 | 被介護者1人につき3回を限度として取得可(最長3年) |
介護のための時間外勤務および休日勤務の制限 | 1回1年を限度として、時間外・休日勤務を命じられない取り扱い | |
介護休暇 | 介護対象者1人につき年10日を、対象者が2人以上の場合は合計20日まで取得可(法定は、1年につき5日、対象者が2人以上の場合年10日まで) | |
積立休暇※ | 介護のため必要な場合、取得可 | |
フレックスタイム制の適用 | フレックスタイム制の適用対象外の部門に勤務する従業員についても、介護のため必要な場合、適用を受けることが可能 | |
介護のための短時間勤務 | 介護事由が喪失するまで、1日最大2時間短縮可 | |
そのほか | 再雇用希望申出制度 | 育児や介護により退職した従業員が、再度勤務できる状態になったときに、会社へ再雇用希望の申し出が可能 |
- ※積立休暇とは、翌年度に繰り越すことができなかった年次有給休暇の日数を積み立てたもの(最大60日まで)で、私傷病、育児、介護、看護などの事由で取得できます。
働き方改革
当社では働き方改革として始めたK-Win活動により、「組織風土改革」「制度改革」「業務改革」を推進してきました。「組織風土改革」では、トップメッセージの発信や、幹部職員への啓発やセミナー、1on1ミーティングを実施しています。「制度改革」では、2018年度より全従業員を対象に「リモートワーク制度(在宅勤務制度)」を導入し、従業員が自らのライフスタイルに合わせて柔軟に勤務できる環境の整備に取り組んでいます。「業務改革」では、「業務効率改善スタートブック」や各業務改善ツールなど、業務改革に向けたヒントを提供しています。
現在、働き方改革としてのK-Win活動はグループビジョン2030の実現に向けた「企業文化および従業員意識の変革活動」へとその活動の幅を広げていますが、ロボットやAIの活用、DXによる業務プロセスの見える化・効率化を図ることにより、事業の成長ステージにおいても従業員の増加を最小限に抑えるとともに、付加価値の高い仕事に注力することにより、「やりがい」「成長」を実感できる働き方を実現していきます。
年次有給休暇の取得促進
当社は、計画的に休暇を取得することで、従業員の心身のリフレッシュを図り、仕事とプライベートとのメリハリを付けることを目指し、年次有給休暇の取得を促進しています。
その方法の一つとして、「ゆうゆう連休」と「記念日休暇」という2つの制度を設けています。これらは、従業員が年度始めに休暇取得日を設定し、計画的に休暇を取得する制度です。「ゆうゆう連休」は2日間の連続休暇で、「記念日休暇」と併せ、年間3日の休暇を各人が計画的に取得することになります。
さらに、労使間の協定により毎年8月の3日間を一斉の年休取得日とし、会社所定休日などと併せて連続9日間の休みを設定するようにしています。また、2006年度より定時退場日を原則週1回設定することを労使間で協定しています。定時退場日を設定することによりメリハリのある働き方をすることができ、ワークライフバランスの推進に貢献しています。
そのほかの取り組み
ダイバーシティシンボルマークの制定
「川崎重工業」という木は、さまざまな個性を持つたくさんの人たちによって成り立っています。
「木がすくすくと成長し、葉や実がさらにいろどりを増し、豊かになるように、当社で働く私たちも、色んな色=個性や能力を川崎重工というフィールドで発揮し、自分と会社をさらに大きく成長させていこう」、シンボルマークには、そんな思いを込めました。
ダイバーシティ推進サイト「ひびきあうチカラ」
イントラネット内にダイバーシティ推進サイト「ひびきあうチカラ」を開設し、ダイバーシティの概要、職場事例の紹介、ワークライフバランス関連制度などを掲載しています。
社外ネットワーク
ダイバーシティやワークライフバランスについては、社会全体でこれらの動きを加速させていくため、社外の勉強会にも積極的に参加し、一企業の枠を超え他団体・企業と共に活動しています。その一つが、中央大学大学院戦略経営研究科と民間企業が共同で行う「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト」です。同プロジェクトは調査・研究を通じ広く社会にワークライフバランスの理念を伝えていくことを目的としています。また、各企業のDE&I推進担当者と情報交換を積極的に行い、課題やベストプラクティスを共有しています。
Topics
社内託児所の拡充
Kawasaki Motors Enterprise (Thailand) Co., Ltd.では、2010年4月より事業所内に託児所を設置しています。
託児所では1歳から4歳までの従業員の子どもを対象に一時預かりをしており、毎年約30名の従業員の子どもを常時預かっています。そのほかにも数名の子どもが登録されており、必要に応じて託児所を利用しています。託児時間は定時就業時間に対応して7時30分から17時15分を原則としていますが、希望者が一定数を超えた場合には残業時や休日にも利用が可能となっています。
託児所を開設したことにより、従業員は事業所内で子どもを預けることができ、安心して働き続けることができるようになりました。会社側にとっても従業員が出産や育児により退職してしまうことを防ぎ、人財の定着に役立つなど、双方にメリットのある取り組みとなっています。
また、日本においては振替出勤日において事業所内に託児所を設置し、一時預かりを行っています。
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