お取引先との協働
マネジメント・アプローチ
基本的な考え方
川崎重工グループが事業を行っていく上で、コンプライアンスや人権・労働・安全衛生、地球環境への配慮など、サステナビリティの考えに沿った調達活動を行うことは必要不可欠です。そのためには、当社グループだけではなく重要なパートナーであるお取引先とともに、サプライチェーン全体でのサステナビリティの取り組みを積極的に推進していかなければなりません。当社グループはサプライチェーン全体でサステナビリティに関連するリスクを認識し、お取引先と共にサステナビリティ活動を推進することで顧客や社会からの要請に応えていきます。
川崎重工グループ資材調達方針・サステナブル調達ガイドライン
川崎重工グループは、サステナブル調達に対する考え方とお取引先への要望事項を記載した「川崎重工グループ資材調達方針」およびお取引先への要望事項について細則を定めて内容を具体化した「川崎重工グループサステナブル調達ガイドライン」を制定しています。このうち、ガイドラインについては、2022年度にサプライチェーンにおけるサステナビリティの取り組みへの社会的要請の高まりを踏まえ、制定当初の「川崎重工グループCSR調達ガイドライン」から名称を変更した上で、改定を行いました。改定に際してはRBA※行動規範を参照し、コンプライアンス、人権・労働・安全衛生や地球環境への配慮などの各項目を網羅した上で川崎重工グループ行動規範を織り込み、サプライチェーン全体で持続可能性を高めていく方針を明確にしました。
- ※RBA (Responsible Business Alliance):グローバルなサプライチェーンにおける企業の社会的責任を推進する国際的なイニシアチブ。
方針の適用範囲
川崎重工グループ、および資材調達のお取引先
体制
日常業務における調達活動は、各事業部門の責任・権限において行っています。事業部門を横断する会議体として、調達担当役員も出席する調達部門長会議を年1回開催し、サステナブル調達をはじめとした全社に共通する調達方針や施策の決定を行っているほか、各事業部門が定める調達に関するKPIのフォローや当年度の活動予定を共有しています。
調達担当役員:代表取締役副社長執行役員 中谷 浩
川崎重工グループのサプライチェーンマネジメント
Webサイトで「川崎重工グループ資材調達方針」および「川崎重工グループサステナブル調達ガイドライン」を開示し、両方針をグループ会社も含めて関係部門に周知しています。さらに、サステナブル調達アンケートを通じてお取引先における両方針の遵守状況を評価し、当社グループによるお取引先への購買活動との整合性を継続的に確認することにより、サステナビリティに関するお客様や社会からの要請との矛盾の回避に努めています。
また、当社では、お取引先と取り交わす基本契約書において、双方が企業の社会的責任の重要性を認識し、環境、社会の持続的発展を踏まえた事業活動を行うとともに、社会貢献活動に自主的かつ積極的に取り組むことを明記しています。基本契約書においてお取引先が「川崎重工サステナブル調達ガイドライン」を遵守するよう要請するとともに、ガイドラインをお取引先へ直接配布しています。
なお、資機材の調達活動を行っている国内外の当社グループ各社においても、各社の事業形態に適合した形で各社のWebサイトを通じてサステナブル調達方針やガイドラインを開示するなど、グローバルかつ当社グループ全体でのサステナブル調達を志向しています。今後も当社グループは、パートナーであるお取引先と共に、サプライチェーン全体でサステナビリティの取り組みを推進していきます。
サプライチェーンの概況
当社は、グローバル規模で約5,400社の多様なお取引先と取引があり、事業部門ごとに調達品目別の調達金額を分析しています。これらのお取引先と連携しながら、サプライチェーン全体でサステナビリティの取り組みを推進しています。
調達品目別発注割合(川崎重工・川崎車両・カワサキモータース)
(年度)
単位 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|---|---|
素材・素形材 | % | 16.2 | 11.1 | 13.9 | 15.0 | 15.2 |
要素部品 | % | 22.6 | 19.3 | 21.2 | 20.7 | 26.8 |
機器類 | % | 16.5 | 20.7 | 20.6 | 19.8 | 20.7 |
加工外注・請負工事 | % | 44.3 | 48.5 | 43.6 | 44.1 | 37.0 |
その他 | % | 0.5 | 0.4 | 0.6 | 0.4 | 0.3 |
合計 | % | 100 | 100 | 100 | 100 | 100 |
重要サプライヤーの特定
一定の取引金額以上の調達規模、主要製品に占める部品・機器の重要性や代替取引先の有無に加え、ESGなどに関する要請事項を定めた「川崎重工グループサステナブル調達ガイドライン」に沿ったサステナビリティの取り組み状況に関するアンケート確認結果などを基準に、事業部門ごとに製品に応じて重要なサプライヤーを選定しています。
重要サプライヤー数・比率(川崎重工・川崎車両・カワサキモータース)
サプライヤーの種類 | サプライヤーの数 | 全調達支出に占めるシェア |
---|---|---|
1次サプライヤーの合計 | 5,331社 | 100% |
1次サプライヤーに含まれる、 重要なサプライヤー |
531社 | 82% |
- ※2024年3月現在
サプライチェーンのリスク評価
当社は「川崎重工グループサステナブル調達ガイドライン」の遵守状況の把握およびサプライチェーンのリスク評価を行うべく、2016年度より国内外のお取引先を対象にアンケート調査を実施しています。2023年度の調査においては、2022年度のガイドラインの改定を踏まえアンケートの内容を見直した上で実施しました。
本アンケートは、「サステナビリティにかかわるコーポレートガバナンス」、「コンプライアンス」、「人権・労働・安全衛生への配慮」、「地球環境への配慮」、「社会との共生」などの9つの大項目ごとにお取引先の取り組みを問う形式で、RBA行動規範の各項目を網羅した上で全65問の設問を設けています。
2023年度は、コンプライアンスおよび人権を重点管理項目として、アンケート結果を基に当該項目に関する推進状況の評価を行いました。当社の要求レベルに到達していない一部のお取引先については是正措置の計画を両社合意の上で策定し、計画の実行をサポートするとともに、必要に応じてサステナビリティに関する取り組み状況の確認を目的とした現地監査を実施しました。
今後は、サプライチェーン全体でのサステナビリティの取り組みをより強化するべく、アンケート調査の実施および是正措置計画のサポートのご提供を継続していきます。
サステナブル調達アンケートによる評価結果(2023年度)
2023年度は国内主要お取引先を対象にアンケート調査を実施し、重要サプライヤー531社を含む533社から回答をいただきました。
社数 | |
---|---|
アンケート調査にご回答いただいたお取引先 | 533 |
アンケート調査に含まれる重要サプライヤー | 531 |
是正措置計画を策定したお取引先 | 6 |
是正措置計画の実行をサポートしているお取引先 | 6 |
現地監査を行ったお取引先 | 1 |
お取引先のキャパシティビルディング
当社では、陸・空輸送システム、モーションコントロール、モータービークル、エネルギー&マリンエンジニアリングの4つのグループ体制により幅広い分野の資材を調達しており、事業ごとに必要に応じてお取引先を対象に品質・デリバリー・サステナビリティにおけるパフォーマンス向上などを目的とした研修会や表彰制度を行っています。
また、当社のサステナビリティに対する考え方を直接ご説明する機会を設け、サプライチェーンマネジメント上の重要課題である人権問題や環境問題などをお伝えし、サステナビリティへの取り組みを強化していただけるよう要請しています。
- 2018年度・2019年度においてお取引先に対するサステナビリティ活動推進説明会を10回実施し、合計で約1,000名(約700社)の方にご参加いただきました。
- 2019年度には国内お取引先向けに「サプライチェーン全体でのさらなるサステナビリティ活動の推進に向けて」と題した文書を発信しました。
脱炭素社会の実現に向けた取り組み
当社では、「Kawasaki地球環境ビジョン2050」で掲げる「CO2 FREE」に沿って、2050年にはグループ全体でのCO2排出ゼロを目指しています。お取引先にも本方針をご理解いただくためにSDGsに関するセミナーにて当社の取り組み状況を報告するとともに、「川崎重工グループサステナブル調達ガイドライン」にてお取引先の企業活動において発生するCO2、メタン、フロンなどの温室効果ガス排出量の削減、エネルギー効率改善を推進し、地球環境保全に取り組むことをお願いしています。
- 2022年7月に、主要なお取引先を対象にCO2排出量についてのアンケート調査を実施し、89社のお取引先におけるCO2排出量の管理状況の回答を確認しました。
- 2023年2月に、金融機関が主催する説明会において、22社のお取引先を含む93名の参加者に対し、脱炭素・低炭素社会の実現に向けた当社の取り組み状況を報告しました。
- 2023年6月に、ロボットディビジョンでは108社のお取引先向けに「カーボンニュートラル実現に向けた取り組み説明会」を実施し、CO2排出量の管理方法と排出量削減に向けた取り組みについて説明を行いました。
- 2024年4月に、主要なお取引先を対象に「カーボンニュートラル説明会」を実施し、102社のお取引先(計175名)に参加いただきました。当社グループのカーボンニュートラル社会実現に向けた取り組みや指針について社長自らが説明を行うとともに、CO2削減に向けての取り組みをお願いするなど、お取引先との協働を推進しています。
サステナブル調達に関する教育・研修
従業員に向けても、サステナブル調達に関する研修を行い、担当者の意識向上に努めています。具体的には、当社グループの調達部門向けに、当社のサステナブル調達への取り組み状況や調達部員が果たすべき役割など、サプライチェーンにおけるサステナビリティ活動に対する理解の向上を目的とした研修を毎年実施しています。
資材調達に関するコンプライアンスの徹底
当社では、当社グループの調達部門を対象に「下請代金支払遅延等防止法(下請法)」や「建設業法」など調達関連法規の遵守を目的とした研修を毎年実施しています。特に下請法については、次の通り調達部門に限らず積極的な周知・啓発を継続しています。
- 他社の違反事例などを参考にした「下請法違反事例集」を2009年10月に作成
- 各業務にて陥りがちな下請法違反行為を確認・是正するためのツールとして、「下請法自主監査チェックリスト」を2013年4月にイントラネットに掲載し、全従業員に幅広く啓発
- 2011年度より、主に設計・製造部門を対象とした集合研修を各工場および主要連結子会社で毎年実施し(合計受講者約7,000名)、より多くの従業員に下請法を周知するため2023年度はeラーニング方式による研修を実施(受講者約19,000名)
パートナーシップ構築宣言
当社は、経済界・労働界の代表および関係閣僚をメンバーとする「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同し、「パートナーシップ構築宣言」を公表しています。サプライチェーンのお取引先の皆様や価値創造を図る事業者の皆様との連携・共存共栄を進めることで、新たなパートナーシップを構築することを目指します。
紛争鉱物に関する取り組み
当社グループでは、2013年12月に「紛争鉱物調達方針」を当社Webサイトに開示し、コンゴ民主共和国およびその周辺国で産出される錫、タンタル、タングステン、金の調達・使用によって、当該国での紛争や非人道的行為へ加担する意思はないことを表明しています。
また、「川崎重工グループサステナブル調達ガイドライン」において、お取引先に対しても同様の取り組みを要請しています。
2022年度はお客様からの要請に基づき、航空エンジンおよび汎用エンジン事業において、錫、タンタル、タングステン、金などに関する調査を行いました。調査の結果、220カ所がRMAP(Responsible Minerals Assurance Process)で認証された製錬所であることを確認しました。
当社は、コンプライアンス、人権・労働・安全衛生や地球環境への配慮など、サステナビリティの考えに沿った調達活動を推進していくため、お取引に関係する当社グループの役員・従業員等による行為が、法令・規則、「川崎重工グループ行動規範」、「川崎重工グループ資材調達方針」、「川崎重工グループサステナブル調達ガイドライン」に違反している(またはそのおそれがある)と認識された場合に、お取引先よりご通報頂く窓口(「お取引先ホットライン」)を設置しています。
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