当社の水素への取組み
Kawasaki Hydrogen Road
現在、私たちの暮らしは、エネルギー資源の大部分を石油や天然ガスといった化石燃料に依存しています。しかしそのことは、地球温暖化という深刻な環境問題を引き起こすとともに、常に資源枯渇のリスクをはらんでいます。安定的にエネルギーを確保すること。同時に、地球環境へ配慮すること。このふたつの課題を解決する答えが、「水素エネルギー」です。水素エネルギーがもたらす新しい未来を、世界中の人々へ。川崎重工グループの総合力を結集した取り組みは、すでにはじまっています。
川崎重工が担う役割
さまざまな物質から取り出すことができ、燃焼時にCO2を出さないクリーンエネルギー、水素。この水素をエネルギーとして活用するためのインフラの整備が世界中で始まろうとしています。当社はこの中でも、特に液化・運搬・受入基地までの「貯蔵・輸送」のインフラ整備を主に担っており、今後拡大が予想される水素市場に向けたサプライチェーンの構築・拡大に貢献しています。当社の技術が、水素の生産地と消費地を結び、そこにHydrogen Roadという新しい道が生まれます。
水素輸送の2030年目標/KPI
- 水素輸送量:22万5千トン(年間)
- 水素エネルギー使用によるCO2排出削減量:160万トン
水素輸送・貯蔵(=水素をはこぶ・ためる)
水素は、マイナス253℃の極低温にすることで、気体から液体に変わり、体積が800分の1に減少します。体積を減らすことは、貯蔵・輸送の効率を飛躍的に向上させ、より多くの水素の流通を可能にします。液化水素による水素の輸送は、数ある方法の中で極めて効率が良く、既に実用化された技術です。そこには、長年、LNGの運搬船、貯蔵、受入基地や、極低温の液化水素の貯槽を世に送り出してきた当社の実績が活かされています。
はこぶ 海上輸送
水素を次世代エネルギーとして活用するためには、大量の水素を、効率よく、安全に輸送する技術が求められます。1981年に日本で初めてLNG運搬船を建造した当社は、海上輸送における極低温技術をリードして来ました。長年培ってきた造船技術と極低温技術の粋を結集し、世界初の液化水素運搬船の開発に取り組んでいます。
はこぶ 陸上輸送
(液化水素輸送コンテナ)
水素エネルギーの需要が高まるにつれ、消費地まで大量の液化水素を陸上輸送する手段が求められます。LNG貯蔵タンクの開発を通じて培った当社の断熱技術が、マイナス253℃という液化水素の陸上輸送を可能にします。
(複合容器搭載圧縮水素トレーラ)
燃料電池自動車の市場本格導入により、各地で水素ステーションの整備が進められています。当社は、国内の水素製造設備で製造した水素をオフサイト型水素ステーションに輸送・留置貯蔵・供給するための日本初となる複合容器を搭載した圧縮水素トレーラを開発しました。
ためる
(液化水素貯蔵タンク)
液化水素貯蔵タンクでは、太陽などの外部からの熱の影響で収められた液体が常時気化しています。「ボイルオフガス」と呼ばれるこのガスの発生を極力抑える技術が、液化水素の長期保存には欠かせないものとなります。マイナス253℃という極低温の液化水素に対し、当社はLNG貯蔵タンクよりもさらに高度な断熱技術を開発することで、ボイルオフガスを可能なかぎり抑制する高性能な液化水素貯蔵タンクを実現します。
水素社会の実現に向けたステップ
当社は、水素を液化して大量輸送を可能とする極低温技術を活用し、10年ほど前から他社に先駆けて水素社会の実現に向けた取組みを始めています。
現在は、技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(HySTRA)と水素サプライチェーンの実証試験を行う豪州のコンソーシアムに参画しており、両者によって日豪間で実施される世界初の液化水素国際サプライチェーン構築実証試験(=パイロットプロジェクト)に取り組んでいます。このうち当社は主に輸送・貯蔵設備を担っており、パイロットプロジェクトを成功させることで長距離海上水素輸送の技術・安全・運用上の成立性を実証し、水素をだれもが広く使うことができる社会の実現に向けた大きな一歩を踏み出します。
また、パイロットプロジェクトでは褐炭から水素を製造していますが、2030年頃の商用化時には、豪州連邦政府とビクトリア州政府が進めているCO2回収・貯留(CCS)プロジェクトと連携しCCSを実施することに加え、液化時に使用する電力を再生可能エネルギー由来にすることで、クリーンな水素を製造できるように協調していきます。さらに、世界でも先進的な商用規模のグリーン水素プロジェクトとして、再生可能エネルギーから製造・液化した水素を日本へ輸入することも検討しており、2020年半ばの実証に向けてフィージビリティスタディを始めています。
当社は世界各国より約50件程度の水素関連プロジェクトの検討依頼をうけており、事業規模は2030年に3,000億円、2040年には5,000億円に達する計画です。こうした中で、再生可能エネルギー由来のグリーン水素やCCS付きのブルー水素等のクリーンな水素のサプライチェーンを拡大する取組みを積極的に行っていく予定です。
当社は、2020年代半ばの商用化実証を通じて、液化水素の商用規模の国際サプライチェーンに供する液化水素運搬船及び各機器の早期開発を行い、水素源を「褐炭」に限定することなく日本政府の目標である2030年における水素導入量300万トンの実現に貢献していきます。
その他の取組み
水素社会の実現には上記のサプライチェーンインフラに加えて、水素を扱うための規格やルールを整備することが重要です。当社は、ルールが整備されることで世界的に水素が使いやすくなるとともに、当社が手掛ける製品・サービスが世の中に広まるきっかけや市場が生まれると考えており、国際規格化に向けた取組を推進しています。また、水素に関わる国内の民間イニシアチブにも複数参画しております。具体的には以下3つです。
中部圏水素利用協議会
大規模な水素利用の具体的な方策を検討し、2020年代半ばからの社会実装開始を目指す。中部圏での、水素サプライチェーン、水素利用量のポテンシャル、需要サイドで受入可能な水素コスト等を検討。目標実現に向けた技術面・金融面・制度面の課題を整理、必要な施策と社会実装につながる事業モデルを提案
神戸・関西圏水素利活用協議会
既存の実証実験で得た知見と地域の事業者が保有するリソースの融合により、水素活用の事業モデルを検討。関西圏における水素利活用モデルの社会実装に向けたロードマップを作成。社会実装における課題を明確にし、国・自治体へ政策提言
水素バリューチェーン推進協議会
水素バリューチェーンの構築を目指して、事業化、渉外、調査等の機能を準備。水素バリューチェーン構築の横断的な取組みを実施。水素社会の実現のため、社会実装に向けた取り組みを加速。金融機関と連携し、資金供給の仕組みづくりを推進
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