ジェットフォイルは、なぜ、"海を飛ぶ"のか?

「川崎ジェットフォイル」は、1989年4月の国産第1号船引渡し以来、15隻を建造。
離島航路を中心に全国各地に導入され、2006年2月現在、ボーイング社製7隻を含め20隻が日本の海を駆け巡っています。

「川崎ジェットフォイル」は、川崎重工がアメリカのボーイング社から製造・販売権を得て、船舶・航空機・車両の技術を駆使して建造する、先端技術の粋を集めた超高速旅客船です。
ジェットフォイルは、よく、"海を飛ぶ"と形容されますが、それは、文字通り船体が海面から完全に離れ翼走するからです。では、なぜ、船が飛行機のように海面から離れて走れるのでしょうか。
今回は、ジェットフォイルの"飛ぶ秘密"をイラストで解明してみました。

一般の船はアルキメデスの原理(浮力)によって、船体を海面に浮かべて走ります。これに対して、ジェットフォイルは、全没型の水中翼に働く翼揚力を利用して、船体を完全に海面上に持ち上げて航走する画期的なタイプの超高速旅客船なのです。
その推力は、ガスタービンエンジン駆動のウォータージェット推進機によって、1分間におよそ180tもの海水を吸い込み、強力なウォータージェットとして船尾ノズルから後方に噴射することで得られます。
180tという水の量は、例えば、25mプール(長さ25m、幅10m、深さ1.5mと仮定)の水(375t)の約半分です。これを1分間でノズルから噴射します。
このウォータージェット推進機(カワサキパワージェット20)は、スペースシャトルの製造で有名なアメリカのロックウェル・インターナショナル社から、川崎重工が製造・販売権を得て製造しているもので、短時間に大量の液体燃料を燃焼させるロケットエンジンのハイテク技術が応用されています。

ジェットフォイルは、自動姿勢制御装置(ACS)により、常に船体のピッチング、ローリングなどの動揺を制御しているため、乗心地がよく、船酔いをしないという特徴があります。

進路を変更する時は、ACSの働きによって水中翼フラップが上下に作動し、船体を旋回方向に傾斜させると同時に、船首部ストラットを旋回方向に回転させてスムーズにターンします。これは、飛行機の旋回と同じで、旋回時の遠心力が打ち消されるため、乗客は横に押される感じを受けず、快適な航海が続けられます。

ジェットフォイルの原動力は、1基当たり3,800馬力の高出力を誇る2基のガスタービンエンジンです。このエンジンが、減速歯車装置を介してウォータージェット推進機を駆動します。

ジェット機は、高温ガスをジェット(噴流)と噴出させて推力を得ます。これに対してジェットフォイルは、海水をジェット流として高圧噴射し、翼走速度45ノット(時速約83km)の原動力としています。

1.艇走 通常の船と同じように、海面に浮いて艇走する。水中翼は必要に応じて引き上げることができ、水深が3~3.5mあれば艇走が可能です。
2.離水 ガスタービンエンジンの回転を上げていくと、ジェットフォイルは加速していき、滑走状態を経て時速35kmで船体が離水し始め、約45kmで完全に海面上に浮き上がって翼走に入ります。
3.翼走 翼走中、万一、海上の浮遊物と水中翼が接触しても、その衝突エネルギーを吸収する緩衝機構が組み込まれています。
4.着水 エンジンの回転を徐々に下げていくと、ACS(自動姿勢制御装置)の働きで、水中翼フラップを適切に作動させながらスムーズに着水するため、乗客は着水したことをまったく感じません。 非常時には、船体を急速に着水させ、逆噴射をかけることにより、翼走中でも自動車と同じくらいの制動距離で停止できます。