木質バイオマスの小規模分散型熱電併給システムを事業化

2004年04月21日

 

川崎重工は、木質バイオマスをエネルギー源とした小規模分散型熱電併給システム技術を確立し、地方自治体や製材・木材加工業者向けに本システムの販売事業を開始します。

今回当社が事業化する木質バイオマスの小規模分散型熱電併給システムは、日量1~5t程度の比較的小規模な木質バイオマスを対象としたものです。本システムでは、タール発生量の少ない独自方式の固定床ガス化炉で製材残材などの木質バイオマスを熱分解によりガス化し、精製した合成ガス(COとH2)を用いてガスエンジンによる発電を行います。また、ガスエンジンから発生する排熱は、排熱回収ボイラや吸収式冷温水機などにより回収し、蒸気や温水、空調として利用できます。

この小規模分散型熱電併給システムでは、日量2.4tの木質バイオマスを用いて80kWの発電をする標準システムの場合、木質バイオマスをエネルギー源とする発電としては極めて高効率な発電効率約20%を実現しています。また、熱供給もあわせた総合熱効率は約40%です。

今回事業化する小規模分散型熱電併給システムの特長は、以下のとおりです。
タール発生量が少ない独自方式の固定床ガス化炉の採用で、ガス精製装置を小型化しシンプルな機器構成を実現するとともにメンテナンスコストも低減
固定床ガス化炉本体を含めたプロセス全体が大気圧より負圧であり、高い安全性を実現
高効率ガスエンジンの採用で低カロリーガスの高効率燃焼を実現
起動時間が30分以内で、導入先の電力需要に応じた柔軟な運転が可能

近年、循環型社会の構築や温室効果ガス排出量削減、さらに地域振興、森林環境保全などを目的に、製材残材や未利用間伐材、建築廃材などを主とする木質バイオマスを、発電などのエネルギー源として有効利用する動きが広がっています。また、政府が提唱する「バイオマス・ニッポン総合戦略」の中でも木質バイオマスのエネルギー利用が重要な項目に位置付けられており、バイオマスの有効利用が今後一層進む見通しです。

当社は、木質バイオマスでは、今回の小規模分散型システムに先立ち、日量20t以上の木質バイオマスに適した直接燃焼・蒸気タービン発電システムを事業化し、すでに2件の受注実績を持ちます。また現在、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「バイオマスエネルギー高効率転換技術開発」の一環として、日量5~20t程度の木質バイオマスに適した加圧流動層ガス化炉とガスタービン発電を組合せた独自システムの開発も進めており、木質バイオマス発電システムに関するラインアップの拡充を進めています。

一方、畜産系バイオマスでは、デンマークのフォルケセンターから技術導入した「フォルケ方式メタン発酵・熱電併給プラント」を中心とした事業を展開しており、実証設備を含む2件の実績を持つなど、積極的に取組んでいます。

今後も当社は、バイオマスや風力などの未利用で再生可能なエネルギーの有効利用を促進する最新技術の開発や製品の拡販を通じて、温室効果ガス排出量削減や廃棄物の有効利用・適正処理に貢献していきます。



(川崎重工の木質バイオマスガス化発電・熱供給システム PDFファイル、789KB)