有害重金属による汚染土壌の無害化処理設備「エコレストア システム」を開発(アーステクニカ)

2003年08月19日

株式会社アーステクニカは、昨年重金属類に汚染された土壌の新しい無害化技術を開発し製品化を進めてきましたが、この程、本技術に基づく汚染土壌無害化設備「エコレストア システム」を開発し、販売を開始しました。

本年2月に土壌汚染対策法が施行され、特定有害物質で汚染された土地は無害化処理が義務付けられるとともに、最終処分場の残余年数逼迫による投棄処分の困難化、土地取引や再開発に対する汚染土地無害化の要求の増加などにより、低コストで確実な汚染土壌処理実現が求められています。

わが国の土壌汚染の多くは、VOC(揮発性有機化合物)と重金属によるものです。VOCやPCB、ダイオキシン類については近年多くの有効な浄化技術が開発されてきた一方、重金属については、セメント固化、キレート固定化、高温溶融、土壌洗浄、熱脱着などの無害化技術が開発されましたが、いずれも特定の重金属に効果が限定されたり、処理コストが高いなどの課題があります。

新開発した「エコレストア システム」は、当社が独自開発した水熱反応による重金属無害化技術に基づく処理設備であり、重金属の種類に関わらず有効なことから複合汚染土壌の処理が容易なうえ、処理コストも低減することが可能な画期的なシステムです(特許出願中)。
昨年この水熱反応による重金属無害化技術を開発以来、各種実汚染土壌、焼却灰などで浄化テストを積み重ね効果を確認するとともに、処理ノウハウを蓄積してきました。また、当社では、1999年に土壌や汚泥の再利用技術として水熱反応を利用した高強度固化設備「エコサンドリサイマー」を開発し、すでに多くの運転実績があります。「エコレストア システム」は、本設備で培った水熱処理設備技術と水熱反応による重金属無害化技術と融合させたものです。

「エコレストア システム」の標準的な設備は、原料土壌に含まれる大きな石、コンクリート塊などの異物を取り除く「ふるい分け設備」、セメントまたは生石灰を添加し混合、造粒する「安定化処理設備」、および安定化処理品を水熱処理する「水熱処理設備」で構成されます。

今回商品化した標準的設備は、処理能力50~200トン/日(100トン/日、2バッチ/日運転)で、価格は約4億円です。
また、設備を各機器に分けてトラックにより搬送し、再設置が可能な可搬式設備もメニュー化しており、標準サイズの処理能力は40トン/日(2バッチ/日運転)、価格は約2.5億円です。
なお、2004年度は、あわせて年間10基の受注を目標にしています。

「エコレストア システム」の特長は次の通りです。

(1)水熱反応により、あらゆる重金属類の溶出抑制が可能
この技術は、土壌中のシリカ(SiO2)とセメントなど添加剤中の石灰分(CaO)を比較的低温(120~200℃)で化学反応させることにより、ケイ酸カルシウムの一種であるトバモライトを合成し、化学的に安定で強度の高い結晶に成長させ、重金属類をその中に閉じ込めることにより溶出を抑えるものです。
このように、強固なトバモライト結晶に重金属類を閉じ込めるので、従来は処理困難であった鉛や六価クロムをはじめ、水銀、カドミウム、ヒ素、フッ素など、あらゆる重金属類の溶出抑制が可能です。したがって、複数種類の重金属による複合汚染土壌に対しても適用できます。

(2)処理コストの低減
水熱処理に対する添加剤はセメントまたは生石灰を使用し、比較的低温(120~200℃)で処理しますので、キレート処理など従来方式に比べ処理コストが1/2~1/5と大幅に低減できます。
また、処理製品は強度が高い粒状ですので、そのまま再利用が可能で、廃棄に要する費用が不要であると共に、廃棄物処分場の延命対策にも有効です。

(3)石などの異物含有土壌の処理が可能
付着性のある原料のふるいわけが可能な特殊スクリーン(エコスクリーン)を標準装備していますので、異物が混入している汚染土壌の処理も可能です。このため、工場跡地など、コンクリート塊、石、木材などが混入した土壌の処理にも適しています。

(4)高水分の汚泥も処理が可能
本技術のベースであるエコサンドリサイマーは汚泥の高強度固化を目的にした設備ですので、高水分の汚染土壌も容易に処理できます。
また、さらに水分の多い原料の場合も、特殊水熱容器を使用することで対応可能です。

(5)種々の形状の製品が作成可能
水熱処理の前段階で造粒のほか、ブロック、レンガなどの形状に成形することにより、各種形状、寸法の高強度固化製品を作ることができます。

(6)焼却灰、浚渫汚泥などの処理も可能
汚染土壌だけでなく、重金属が含まれている可能性がある各種焼却灰、フライアッシュ、浚渫汚泥なども無害化処理が可能です。

当社は、川崎重工業株式会社と株式会社神戸製鋼所の破砕機事業を統合して本年4月に設立されました。当社では、破砕・粉砕分野はもとより、環境分野を第二の大きな柱と位置付け、環境関連製品の拡充に取り組んでおり、今後も、破砕・分別・固化・浄化などの要素技術を駆使して効率的なリサイクルシステムの開発、製品化に努めていきます。