人間型ロボットによる「産業車両代行運転」を実現
2003年02月26日
■ポイント■
■概 要■ 川崎重工業株式会社【代表取締役社長 田﨑 雅元】(以下「川崎重工」という)、東急建設株式会社【代表取締役社長 落合 和雄】(以下「東急建設」という)、独立行政法人 産業技術総合研究所【理事長 吉川 弘之】(以下「産総研」という)は共同で、人間型ロボットによる産業車両(バックホウ)の代行運転(乗り込み、着座、運転操作)を実現した。 本田技研製ハードウェアに産総研が開発した「全身動作制御技術」を搭載した人間型ロボットHRP-1Sに、川崎重工が開発した状況に応じて3つの操作モードを切り替えられる「遠隔操作手法」を搭載した可搬型の「遠隔操作システム」を接続することで、滑らかな全身遠隔操作を可能とした。また、東急建設が開発した雨や埃、機械振動等からロボットを守る「保護技術」を組み合わせることで、雨天時での屋外作業も実現可能となった。 ■研究の背景■ 災害復旧現場などの危険な作業空間や土木建設現場などの悪環境下で、人間型ロボットを汎用の産業車両に乗り込ませて、安全な環境にある場所から代行運転させることができれば、悪環境下での災害復旧作業や土木建設作業などを安全かつ円滑に行うことが可能となる。これまで、産業車両本体をロボット化する試みが数多く行われてきた。これに対し、人間型ロボットを用いて産業車両を代行運転させるということは、1.運転のみでなく、それに付随した作業(下車しての現場確認、簡単な修理等)を実施可能とすることや、2.車両自体を改造することなく全ての産業車両のロボット化が可能となるなどの利点がある。 ■研究の経緯■ 産業車両等代行運転分野では、市販されている産業車両を、人間型ロボットに遠隔操作することで運転させ、各種作業を行わせることを目標に掲げ、研究開発を遂行してきた。まず、「立ち姿勢運転型フォークリフト」を運転対象とし、平成12年度末にHRP前期開発プラットフォームを用いた代行運転に成功した。平成13年度からは、「着座姿勢運転型バックホウ」を運転対象とし4つの周辺技術の研究開発を進め、今回の成果発表にいたった。なお、平成14年3月末に行われたROBODEX2002では前記フォークリフトを、今回と同等のシステムで代行運転をデモしている。本研究成果は、人間型ロボットを用いた運転代行システムの汎用性を示すとともに、ロボットが機械を操作することで、「人間型ロボットが人と同様に働ける可能性」を示す大きな成果である。 ■研究開発技術の内容■
■用語の説明■ ◆代行運転 人が乗って操作する機械にロボットが代わりに乗り、人は離れた場所から遠隔操作することで、ロボットが機械の運転を代行する。特殊な自動機械を必要としないため、災害復旧や工事中の危険発生時等の緊急時に対応できる。高齢者が操作すれば少子高齢化対策にも有効。 ◆遠隔操作 人が離れた場所からロボットを操作する技術。人がロボットと同じ形の腕(マスタ)を動かし、ロボット (スレーブ)がその通りに動くマスタスレーブが基本技術だが、位置や姿勢だけを指示する、ロボットが動きにくい指示を避ける、バランス制御を同時に行う等の操作しやすい工夫を行っている。
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