国内初の鉄道トンネル工事向け全断面トンネル掘削用TBMが完成

2003年02月13日

 

川崎重工は、東日本旅客鉄道株式会社が建設を進めている新吾妻線のうち、岩島駅と新川原湯温泉駅(仮称)間のトンネル工事(総延長4,582m)向けに清水・西松・間共同企業体より受注した、直径6.82mのトンネル掘削機(トンネル・ボーリング・マシーン:TBM)を当社播磨工場にて完成させました。本機は、工場にて一旦解体し、現地に搬送して再組立の後、平成15年の夏を目途に掘削を開始する予定です。

このTBMは、鉄道トンネル工事向けでは国内初の全断面トンネル掘削用TBMで、新吾妻線工事のうち、最も距離の長い「八ッ場トンネル」向けに使用されます。この区間は、山間部で地質が硬く、約4kmを超えるトンネル部分であるとともに、観光地の沿線にあたることから、TBMによる掘削方法が採用され、施工期間の短縮や安全性向上、さらには騒音・振動などの環境への影響の軽減が図られます。
なお、新吾妻線は、八ッ場ダム建設に伴ない現在の吾妻線の一部が水没するため、その付替ルートとして新設されるものです。

また、吾妻線は、観光地である群馬県吾妻地域への交通機関として重要な役割を担っており、大部分が曲線部の少ないトンネル区間となる新ルートの完成により、乗り心地の改善や運転時分の短縮が図られ、利便性の一層の向上に寄与することになります。

今回完成したTBMは、全断面トンネル掘削用オープン型TBMと呼ばれる掘削機で、以下の特長を有する最新型機です。
(1)硬岩層と破砕帯の両方に対応可能な、高出力・高推進力を備えたTBMです。
(2)TBM掘削精度を確保するため、掘進管理・方向制御システムを完備しています。
(3)掘削機上部に広い作業スペースを設け、支保作業、補助工法を施工するシステムを装備しています。

当社は、国内初の国産技術によるTBMを開発したトンネル掘削機のパイオニアメーカーとして、中小水力開発や下水道工事向けをはじめ、英仏海峡鉄道トンネルや第二東名・名神トンネル、さらには世界最大規模の東海北陸自動車道飛騨トンネル向けなど、多くのTBMの受注・製作実績を有します。また、シールド掘進機の分野においても、東京湾アクアラインや神田川地下調節池用シールド掘進機をはじめとする大口径機を中心に数々の実績を持っています。

今後も当社はトンネル掘削機の分野において、社会・市場ニーズに加え環境に充分配慮した製品の開発・販売に努め、積極的な事業展開を進めていきます。