アルミ合金厚板の摩擦攪拌接合(FSW)技術を日本で初めて確立

2002年08月28日


 

川崎重工は、アルミ合金5083材厚板の摩擦撹拌接合(以下、FSW:Friction Stir Welding)技術を確立しました。

FSWは英国ケンブリッジにある溶接研究機関TWI(The Welding Institute)が1990年代初めに発明した画期的な接合方法で、従来の溶接と違い溶接材料を使わず、アルミ合金やマグネシウム合金などの母材同士を高品質に接合することができます。日本には1990年代の中頃に技術が導入され始め、自動車部品などの各種アルミ合金構造物を中心に、適用が広まりつつあります。

当社は、1990年代の後半、このFSW技術をTWIより導入し、自社製品への適用検討を進める中で、種々のアルミ合金材の接合に対して、接合装置や接合用ツール、施工パラメータ選定などに関する技術の研究開発を行ってきました。その結果、アルミ合金製高速船や船積LNGタンクに用いられる5083合金について、両面施工で最大板厚50mmまでのFSWの施工技術を国内で初めて確立しました。5083合金は鉄道車両等に用いられる熱処理型の6000系合金に比べてFSW施工が難しいと言われており、この厚板施工技術の確立は特に船舶へのFSWの適用拡大を進めるうえで画期的な成果です。

この開発成果を踏まえ、当社は、九州地方や伊豆諸島航路などで活躍している超高速旅客船「ジェットフォイル」や、超高速カーフェリー「ジェットピアサー」などのアルミ合金製船舶の新規建造にFSWを適用する予定です。また、当社のLNG運搬船に搭載し、高度な安全性が必要とされるLNGアルミタンクの製造などにも幅広く適用していきます。

また本年6月、当社はFSW技術の一部を三井造船に供与する契約を締結しました。当社と三井造船は、一般商船分野において業務提携を締結しており、設計・生産・調達などの各分野での協力関係を深めています。今回の技術供与契約は、当社が技術導入当初からの研究開発によって既に保有するアルミ合金薄板の施工技術に加えて、今回の開発成果の一部である中厚板のFSW装置製造技術ならびに施工技術を供与するもので、これにより三井造船では、超高速貨客船「テクノスーパーライナー」に、FSWを本格的に適用する技術検討を開始しました。この適用計画が実現すると、わが国初の船舶へのFSW本格適用になります。

当社は今後とも、各種船舶に関する設計・製造技術の研究開発に注力するとともに、クリーンエネルギーとして需要増加が予想されるLNGをはじめとする各種ガスキャリアーの建造に積極的に取り組んでいきます。