米国機械学会より、鉄道車両技術論文で日本企業初の最優秀論文賞を受賞

2002年04月25日

 

川崎重工は、4月24日に米国・ワシントンD.C..で開催された米国機械学会(ASME)、米国電気電子学会(IEEE)共催の鉄道会議において、米国機械学会鉄道輸送部門の最優秀論文賞(The best paper for the 2000/2001 year)を受賞しました。なお、この鉄道会議は年1回北米で開催され、日本企業の受賞は初めてのことです。

今回受賞内定した論文は、2001年4月17日~19日にカナダ・トロントで開催された同会議で発表した技術論文で、テーマは『鉄道車両の耐衝突性能に関する研究』です。この論文は、1997年に受注したニューヨーク市交通局向け地下鉄電車R142A(ベース車両:400両、追加車両:120両)において、衝突時に運転室、客室スペースの安全性を確保しつつ、いかに衝突エネルギーを車体構造で吸収するかについて研究した解析内容および試験結果をまとめたものです。

近年、鉄道車両、自動車、船舶などの輸送用機器では、人命保護や環境保護の観点から、衝突性能評価の必要性が高まっています。当社が受注した地下鉄電車R142Aでは、(1)衝突エネルギーを吸収できる車体構造、(2)衝突荷重に耐える強固な乗客居住区などの実現が必要でした。そのため非常に高度な解析、一両分の衝突試験の実施、さらにその解析内容と試験結果との整合性を必要としました。

そこで当社は、まず衝突エネルギー吸収部分の解析、試験を実施し、そこから得られた結果をもとに、1999年1月に米国コロラド州において、米国初の鉄道車両一両分の衝突試験を実施しました。その結果、非常に高い精度で解析と試験結果が合致することを確認しました。またこの研究で得られた成果を用いることで、耐衝突性能を持つ鉄道車両の開発・設計が可能になりました。そして、こうした当社の高い解析技術が客先にも認められ、地下鉄電車R142Aの後に契約した地下鉄電車R143では、衝突試験が免除になりました。

当社は、ニューヨーク市交通局向け地下鉄電車を1982年に受注して以来、約1,000両を納入しており、地下鉄電車R142Aは1999年から現在までに約400両を納入しています。また当社はニューヨーク市交通局向け地下鉄電車以外にも、ボストン、ニューヨーク、ワシントン近郊向け客車をはじめ、シンガポール、台北の地下鉄電車など、すでに3,000両以上の海外向け鉄道車両を納入しています。

今後当社は、今回の受賞で実証された開発・技術力を、国内外の鉄道会社にアピールするとともに、現在設計中である台湾新幹線、受注活動中である北米案件をはじめとした、数多くの国内外の案件において、より安全な鉄道車両の開発・製造に注力していきます。