ベルギーの石油化学会社からガスタービンの水素混焼改造工事を受注

2022年12月05日

川崎重工は、Kawasaki Gas Turbine Europe GmbH(ドイツ、以下KGE※1)を通じて、Chevron Phillips Chemical International N.V.(ベルギー)から、現在稼働中のDLE2燃焼器を搭載した天然ガス焚き1.8MW級ガスタービンコージェネレーションシステム「GPB17D」を、体積比30%までの割合で水素を混焼可能な「GPB17D-H2」へ改造する工事を受注しました。天然ガス焚きガスタービンの水素混焼仕様への改造工事の受注は今回が初めてで、既存システムによる電力・蒸気の安定供給と高効率発電に加え、環境性能(NOx排出量15ppm以下(O2=15%))を維持したまま水素を有効活用できる燃焼技術が高く評価されました。

当社のDLE燃焼器3を搭載した天然ガス焚きガスタービンは、全ての機種でガスタービン本体を改造することなく水素混焼に対応することが可能です。既存システムの機器を流用しながら、水素圧縮機と燃料混合システムなどを追加するだけで水素を体積比30%までの割合で天然ガスと混焼できるため、実績あるエンジンの信頼性を継承したまま水素エネルギーを活用することができます。

Chevron Phillips International N.V.は、世界各地で石油化学製品の生産・販売事業を展開するChevron Phillips Chemical Company LLC.(米国)傘下の会社です。今回の改造工事は、ベルギー東部のテッセンデルロ工場で発生する副生水素を燃料として有効活用することで、化石燃料への依存度とエネルギーコストの低減、CO2排出量削減を図るものです。改造工事は20237月に実施する予定です。

当社は、脱炭素社会に向けた水素エネルギーの普及を見据え、水素サプライチェーン(つくる、はこぶ、ためる、つかう)の技術開発を進めています。中でも、水素ガスタービンは、日本のCO2発生量の約4割を占める発電分野において、脱炭素化に貢献する「つかう」分野の重要な製品の一つです。今後もさらなる水素燃料対応のガスタービン燃焼技術の開発を進め4、世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献します。

■水素混焼ガスタービンコージェネレーションシステム「GPB17D-H2」スペック

ガスタービンモデル M1A-17D
発電出力(kW 1,777
燃料消費量
Nm3/h(水素30%混焼時)
13Aガス 509
水素 219
蒸気量(kg/h 5,120
NOx低減方式 DLE
NOx値(ppm)(O2=0%換算) 52.5
総合効率(%) 83.7

【条件】ガスタービン:吸気温度15℃ 大気圧力=101.3kPa(高度0m相当)吸気圧損=0.98kPa 排気圧損=2.45kPa、燃料:都市ガス13A (LHV40.6MJ/Nm3)、水素(LHV10.8MJ/Nm3)

1 KGEは、欧州向けにガスタービン発電装置を中心としたエネルギー関連機器・システムの製造、販売、サービス事業を展開する当社100%子会社です。
https://www.kawasaki-gasturbine.de/en/
2 Dry Low Emissionの略。水や蒸気の噴射に拠らず燃焼温度を低く制御することで、NOx排出量を削減する方式です。
3 当社のDLE燃焼器は、希薄予混合燃焼と追焚き燃焼を組み合わせた独自の方式を採用しています。希薄予混合燃焼は、燃料を空気と混合してから燃焼させることで局所的な高温部分をなくしNOxの発生を大幅に削減します。追焚き燃焼は、燃料を希薄予混合燃焼後の領域に投入することにより、メインバーナの燃焼を安定させたままNOxをほとんど生成させることなく出力変更ができます。既存システムの機器を流用しながら水素を混焼できるため、実績あるエンジンの信頼性を継承したまま水素エネルギーを活用できることが特長です。
4 水素ガスタービン開発ロードマップ
https://www.khi.co.jp/energy/hydrogen-introduction.html

【過去のプレスリリース】

・ドライ方式水素ガスタービンで、窒素酸化物の大幅削減と水素・天然ガス混合燃料を用いた実証運転に成功―ドライ方式水素ガスタービンの社会実装促進に貢献―(2022929日)

https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_220929-2.pdf

・30MW級ガスタービンに搭載する水素30%混焼DLE燃焼器を販売開始(202282日)

https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20220802_1.html

30MW 級ガスタービンでは世界初となる、水素燃料 100%の発電実証の実現に向けた協議を開始(2021129日)

https://www.khi.co.jp/pressrelease/news_211209-2j.pdf

・ガスタービンDLE燃焼器に搭載する水素40%混焼技術を開発完了(2021127日)

https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20211207_1.html

【製品情報】

・コージェネレーションシステム

https://www.khi.co.jp/energy/gas_turbines/cogeneration.html

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