ガスタービンDLE燃焼器に搭載する水素40%混焼技術を開発完了
2021年12月07日
川崎重工は、ガスタービンのDLE (Dry Low Emission※1)燃焼器において、水素を体積比40%までの割合で天然ガスと混焼して、安定した低NOx※2運用を実現できる燃焼技術を国内ガスタービンメーカーとして初めて開発しました。現在稼働中の当社製ガスタービンのDLE燃焼器にこの技術を適用し、既存設備を有効活用しながら、水素エネルギー利用によるカーボンニュートラルの実現に大きく貢献します。
水素は、天然ガスに比べ燃焼速度が速く、燃焼温度が高い特性から、特にメインバーナでの希薄予混合燃焼※3において、NOx排出量の上昇やバーナ部品の過熱などの技術課題がありました。今回、当社がこれまで培ってきた水素燃焼に関するノウハウを活かし、希薄予混合燃焼と追焚きバーナでの追焚き燃焼※4の燃料割合を適正に制御するシステムを開発したことで、NOxの発生を抑えた安定的な水素混焼技術を実現しました。
当社のDLE燃焼器は、希薄予混合燃焼と追焚き燃焼を組み合わせた独自の方式を採用しています。希薄予混合燃焼は、燃料を空気と混合してから燃焼させることで局所的な高温部分をなくし、NOxの発生を大幅に削減します。追焚き燃焼は、燃料を希薄予混合燃焼後に投入することで、メインバーナの燃焼を安定させたままNOxをほとんど生成させることなく出力変更を可能にします。
この2つのバーナを組み合わせることで、天然ガス焚きではNOx排出量 15ppm(O2=15%)以下を幅広い発電出力で実現しています。本開発ではこの燃焼方式を水素の混焼にも適用し、天然ガスと同等レベルの低NOxかつ安定した燃焼を可能にしました。また、ガスタービンエンジン本体の改造が不要で、システムの組み換えで水素を混焼できることから、実績あるエンジンの信頼性を継承したまま水素エネルギーを活用することができます。
なお、当社は下表のとおり3タイプの水素燃料対応のガスタービン燃焼器の開発、製品化を進めています※5。今回の開発は、下表②DLEの燃焼器に該当し、CO2フリー水素や複製水素の利用拡大に貢献する重要な役割を担います。
当社は、脱炭素社会に向けた水素エネルギーの普及を見据え、水素を「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」といったサプライチェーンの技術開発をすすめています。中でも、水素ガスタービンは、日本のCO2発生量の約4割を占める発電分野における脱炭素化に貢献する、「つかう」分野の重要な製品のひとつです。今後もさらなる水素燃料対応のガスタービン燃焼技術の開発を進め、世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献していきます。
※1 | 水や蒸気の噴射に拠らず燃焼温度を低く制御することで、NOx排出量を削減する方式。 | |
※2 | 窒素酸化物のこと。物が高温で燃えたときに空気中の窒素と酸素が結びついて発生する酸化物であり、光化学スモッグや酸性雨の原因物質のひとつ。大気汚染防止法や地方自治体の条例により排出量が制限されている。なお、大気汚染防止法の規制値は84ppm(O2=15%換算値)。 | |
※3 | あらかじめ燃料と空気を均一に混合した希薄予混合気を燃焼器に噴射・燃焼させる方法。この燃焼方式を採用することで、局所的な高温部分のない均一な温度分布が得られ、大幅にNOxを低減することが可能となる。 | |
※4 | 希薄予混合燃焼下流に燃料を投入し燃焼させる方法。追焚き燃料の調整で、希薄予混合燃焼を安定させたまま出力を変更でき、NOx排出量を安定して低く保つことが可能となる。 | |
※5 | 水素ガスタービン開発ロードマップ https://www.khi.co.jp/energy/hydrogen-introduction.html |