高効率排熱回収ボイラ「VEGA®ボイラ」累計受注50台を達成
2022年03月10日
淮北衆城水泥有限公司に設置されたVEGA®ボイラ初号機
川崎重工は、川崎重工グループの安徽海螺川崎工程有限公司(以下、ACK)および上海海螺川崎節能環保有限公司と共に、セメント排熱発電設備※1向け「VEGA®」ボイラ※2の累計受注50台を達成しました。
2017年に初号機を納入した「VEGA®」ボイラは、当社および当社の中国合弁企業であるACKと共同開発した先進的ボイラで、世界的な温暖化対策への関心の高まりを受け、省エネ製品の更新需要拡大を背景に、順調に受注実績を積み上げてきました。従来型とは異なる伝熱管構造を採用することでコンパクトかつ効率的な排熱回収を可能にし、高い発電出力を実現しています。
また、代替燃料・代替原料が大量に使用されるようになり、ダストの付着性が高まっていることから、除塵効果の高いハンマリング装置を新たに開発し、高い除塵能力を有しています。製品の先進性および高い信頼性などが総合的に高く評価され、日本をはじめ、中国・アジアなど各国の企業から受注しています。
世界でカーボンニュートラルに向けた動きが加速する中、セメント製造の焼成過程でも省エネ対策として、高効率排熱回収ボイラを利用した排熱発電出力の向上が求められています。
当社は、1980年に国内初のセメント排熱発電設備(排熱回収ボイラを含む)を納入して以来、世界のリーディングカンパニーとして国内のセメント排熱発電設備13件をはじめ、ドイツ、トルコ、韓国、中国、ベトナム、インド、パキスタンなど世界で269件の納入実績を有し、発電出力合計は約280万kW、CO2削減量は年間約1,600万トンに達しています。今後も引き続き、省エネルギー・環境保全に貢献する製品の開発・販売を積極的に展開し、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
※1 | セメント排熱発電設備 https://www.khi.co.jp/energy/boiler/cwhrpg.html | |
※2 | VEGA®ボイラ(Vertical Exhaust Gas Advanced)ボイラ: 画期的な伝熱管及びダスト除去装置を組み込み、従来型PHボイラとは全く構造の異なる縦型PHボイラ。開発完了日が七夕であったことから、おりひめ星を意味するVEGA(ベガ)と命名。 |
【VEGA®ボイラの特長】
1.高い利用率 | : | 伝熱性能向上に寄与する除塵効果の高いハンマリング装置の採用。代替燃料由来の付着性の高いダストが大量に含まれる排ガスからも効果的かつ長期間に渡り安定的に熱回収が可能。 |
2.高い発電出力 | : | 蒸気の高温高圧化に対応。従来型ボイラと比べて発電出力を10%改善。(既設セメント排熱発電設備主機の大幅な更新、新規セメント排熱発電設備設置の場合) |
3.誘引ファンの動力低減 | : | ボイラガス圧力損失が従来型ボイラから約75%低減となり、誘引ファンの動力低減により更なる省エネ効果。 |
4.コンパクト化による重量削減 | : | 従来型ボイラと比べ本体重量を約50%、設置面積を約40%削減。 |
5.据付工期短縮 | : | 伝熱管、管寄のモジュールブロック化により、据付工事期間を従来型ボイラと比べ約25%短縮。 |
6.高いメンテナンス性 | : | ハンマーロッドと伝熱管接合部をマンホール越しに点検、補修を行うことができるため、メンテナンス性に優れている。 |
【セメント排熱発電設備の特長】
セメント排熱発電設備は、セメント過程において生成する排気ガスから未利用熱を回収し、蒸気タービンで発電するものです。「VEGA®」ボイラは、プレヒータ(PH)※3とクリンカークーラー(AQC)※4の2か所の熱源のうち、ダストが大量に含まれているPH排気ガスから熱回収します。また、セメント排熱発電設備の設置により、工場からの大気放出熱を削減するだけでなく、燃料の追加なしにセメント工場内の必要電力の約30%を賄えることから、系統から購入する主に化石燃料由来の電力使用量を削減し、CO2排出削減にも大きく寄与します。当社製セメント排熱発電設備ではスチームランキンサイクル※5が採用され、安全かつ高い利用率を長期にわたり達成しています。2000年以降、代替燃料・代替原料が多量にキルンに投入されるようになり、PH排ガスに含まれるダストの付着性が高まっていることから、より強力な除塵性能が求められてきています。
※3 | プレヒータ(PH=Pre Heater): 焼成キルンの高温の排気ガスを利用して原料の温度をあらかじめ上げることにより、焼成キルンで原料を焼成しやすくするための設備。 |
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※4 | クリンカークーラー(AQC=Air Quenching Cooler): ロータリーキルンにより排出されたクリンカを空気で急冷する設備。 |
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※5 | スチームランキンサイクル: 水・蒸気を媒体とした長期に亘り信頼性が実証されているランキンサイクル。他の低沸点媒体を利用するバイナリーサイクルよりも安全かつ高効率で運用されている。 |