世界最大容積の大型液化水素運搬船用貨物格納設備を開発~日本海事協会より設計基本承認を取得~

2021年05月06日

川崎重工は、大型液化水素運搬船に搭載する世界最大容積(40,000m3クラス/1基)の貨物格納設備(CCS : カーゴ・コンテインメント・システム)を開発し、設計基本承認(AiP : Approval in Principle)を一般財団法人日本海事協会より取得しました。

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AiP証書

今回、AiPを取得した貨物格納設備は、マイナス253℃に冷却することで体積を1/800にした極低温の液化水素を大量に海上輸送するためのもので、舶用の液化水素貨物格納設備として世界最大の容積です。本設備は、当社が世界に先駆けて建造した1,250m3型液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」1における設計・建造技術および安全性に関する技術を活かして開発した、新しい方式の断熱構造を有する貨物格納設備です。

AiPは、IGCコード2 、国際海事機関の液化水素ばら積み運送のための暫定勧告3、船級規則およびHAZID(Hazard Identification Study)解析法4を用いたリスク評価結果に基づき、日本海事協会より付与されたものです。

本貨物格納設備の主な特長は次の通りです。

1)
極低温の液化水素の大量輸送を実現するために、大型LNG船と同等のタンク容積としています。
2)
船体から独立した自己支持方式を採用し、極低温の液化水素積載時の熱収縮に柔軟に対応する構造を実現しています。
3)
外部からの侵入熱により発生するボイルオフガス(BOG)を低減するために、新開発の高性能の断熱システムを採用しています。
4)
貨物格納設備から自然発生したボイルオフガスを船舶の推進燃料として有効利用し、液化水素輸送に係る二酸化炭素排出削減にも寄与します。

当社は、この貨物格納設備の開発をNEDO助成事業5の一環として実施しており、現在、この貨物格納設備を4基装備した160,000m3型大型液化水素運搬船を2020年代半ばの実用化に向けて開発しています。カーボンニュートラルの早期実現が世界中で求められる中、当社はこの大型液化水素運搬船で、クリーンエネルギーとして需要増加が予想される液化水素の大量輸送を実現し、水素エネルギーの普及により脱炭素を推進し、世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献します。

【貨物格納設備概要】

タンク方式
独立タンク
直径
43m
容積
40,000m3

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大型液化水素運搬船(貨物格納容積:40,000m3×4基 搭載イメージ)

1
技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構(http://www.hystra.or.jp/)が国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO:New Energy and Industrial Technology Development Organization)の「未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」にて建造。
2
International Code for the Construction and Equipment of Ships Carrying Liquefied Gases in Bulkの略称で、液化ガスのばら積運送のための船舶構造および設備に関する国際規則。1986年以降に建造された全ての液化ガス運搬船に強制的に適用され、日本海事協会鋼船規則にも織り込まれている。
3
国際海事機関で採択された液化水素をばら積み運送する際の暫定的な要件。
4
システムの潜在的危険因子の発生頻度を専門家間の討議により決定し、その発生頻度を減少させるための対処方法を抽出するリスク評価手法の一つ。
5
NEDOの「水素社会構築技術開発事業大規模水素エネルギー利用技術開発液化水素の輸送貯蔵機器大型化および受入基地機器に関する開発」にて実施。

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