車載用廃リチウムイオンバッテリーリサイクルシステム共同開発
2024年12月03日
川崎重工は、開発パートナーである中国海螺創業グループ※1および両社の合弁会社である安徽海螺川崎節能設備製造有限公司 (以下、CKM)とともに、車載用廃リチウムイオンバッテリー(以下、LIB)から純度99.5%以上の高純度炭酸リチウムを継続的かつ安定的に回収する運転に成功しました。
共同開発を進めてきたリサイクルシステムは、当社がセメントプラントで培った焼成技術と、化学プラントで培った溶出技術を応用したもので、NCM系※2・LFP系※3廃電池をともに処理でき、かつ環境負荷の低い処理方法を採用しています。
廃LIBリサイクル商用規模設備(中国安徽省蕪湖市)の廃電池処理量は最大20t/日で、4カ月間で廃電池1,300t以上を処理し、ブラックマス※4を回収しました。さらに、熱的安定性が高く分解しづらいために従来回収が困難とされていたLFP系廃電池から純度99.5%以上の炭酸リチウムを継続的かつ安定的に回収することに成功しました。
廃LIBリサイクル商用規模設備 | 回収された炭酸リチウム |
■川崎重工のLIBリサイクルプロセスの特長
・ | 硝酸、硫酸等の強酸、有機溶媒を使用しない低環境負荷処理 | |
・ | 電解液による発火を抑制した安全性の高い処理 | |
・ | 高い回収率、純度を達成する処理 |
電気自動車普及に伴うLIBに対する需要の高まりを受けて、その主要材料であるリチウム、コバルト、ニッケルなどのレアメタルは将来の供給不足が懸念されています。日本国内でも、政府より、電池からのレアメタル回収と再利用の方向性が示されるなど、レアメタルリサイクルの確立が重要視されています。また、LIBのうちLFP系電池は、中国では電気自動車向けとして現在主流となっている電池であり、2026年以降、急激に廃棄量が増加することが予想されています。当社は、循環型社会の実現を目指し、リサイクル炭酸リチウムの商用生産と事業化に向けて取組みを進めてまいります。
※1 | 中国海螺創業グループ:中国最大手セメントメーカ海螺セメント、大手ごみ処理事業会社海螺緑能へ出資し、多角事業展開を行う企業集団 | |
※2 | NCM系:リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンが主成分の正極材を用いたLIB | |
※3 | LFP系 :リン酸鉄リチウムの正極材を用いたLIB | |
※4 | ブラックマス:廃LIBを無害化処理後破砕し、銅・アルミそれぞれ1%以下まで除去した、正極・負極の材料の混合物 |
【参考リンク】
中国で車載用廃LIBリサイクルシステムの実証試験に成功(2024年1月12日)