液化水素貯蔵タンクの優れた断熱性能を証明
2023年12月11日
川崎重工は、新エネルギー・産業技術総合開発機構（以下、NEDO）の大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業（以下、パイロット実証）において、当社が世界で初めて建造した液化水素運搬船（以下、すいそ ふろんてぃあ）と世界初の液化水素荷役実証ターミナルである「Hy touch神戸」の液化水素貯蔵タンクなどを「技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構（HySTRA）」向けに納入し、実証試験を継続してきました。
2021年12月に「すいそ ふろんてぃあ」が豪州に向けて出港した後、2年にわたって液化水素を輸送する実証試験を実施した結果、外部からの自然入熱により１日当たりで蒸発する液の比率BOR（Boil off Rate）において、「すいそ ふろんてぃあ」の液化水素貯蔵タンクが0.3%/日 、「Hy touch神戸」の液化水素貯蔵タンクが0.06%/日 とそれぞれ計画値を上回る性能を発揮し、高い断熱性能を証明することができました。いずれのBORも同クラスのLNG内航船、LNG貯蔵タンクと同等の性能結果です。
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すいそ ふろんてぃあ |
Hy touch神戸 |
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水素は、発電や燃料電池車（FCV）などで使用した際に温室効果ガスが発生しないクリーンなエネルギーとして、2030年には我が国の目標として年間最大300万トンの導入が見込まれる中、その貯蔵設備の技術確立およびインフラ整備が重要な課題となっています。
当社は、NEDOのパイロット実証において体積を1/800にした極低温の液化水素を、豪州から日本に輸送し貯蔵する技術の実証試験を行っています。「すいそ ふろんてぃあ」および「Hy touch神戸」の主要設備の一つである液化水素貯蔵タンクは、冷却するためにエネルギーを使うことなく、-253℃の極低温の液化水素を長期間、かつ、安定的に貯蔵することが求められます。そのために、タンクを二重殻構造とし、その二重殻の間を真空として外気温からの入熱を遮る「真空断熱構造」を採用しています。そして、実証試験における日豪間の航海試験において、高い断熱性能を証明しました。この構造は、当社が1980年代に宇宙開発事業団NASDA（現JAXA）の種子島宇宙センターに納入した液化水素貯蔵タンクを40年にわたって運用してきたノウハウを活かしたものです。
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| 「すいそ ふろんてぃあ」搭載のタンク | 「Hy touch神戸」設置のタンク | |
| 真空二重殻断熱構造（CG） | ||
また、2019年度より取り組んできたNEDOの助成事業（※1）では、大型液化水素運搬船向けの大型液化水素貯蔵タンクを実物に近い規模で製作し、計画通りの断熱性能が得られることを確認しており、今後、これらの技術はNEDOのグリーンイノベーション基金事業（※2）で採択された「液化水素サプライチェーンの商用化実証」（以下、商用化実証）に採用する大型液化水素運搬船向けの40,000m3/基の液化水素タンクに適用されます。大型液化水素陸上タンクについても、NEDOの助成事業（※3）において開発を実施しており、当該技術は商用化実証の50,000m3クラス/基のタンクへの適用を目指しています。
今後は、2020年代後半の商用化実証の実証運転に向けて、溶接・検査の自動化を含む製作の効率化や、工場で一体組して現地へ納入・据え付けを行うモジュール化工法などの採用による工期短縮化へのチャレンジとあわせ、大型液化水素運搬船においては蒸発した水素を航行用燃料とするゼロエミッション燃料船を開発する計画です。
当社は、水素社会の実現に向けて、液化水素サプライチェーンのインフラ整備の加速を見据えて技術確立を行います。国内および海外市場において液化水素サプライチェーンの一端を担う製品のラインナップを揃え、各国のエネルギー事情に応じたエネルギーの安定供給と、石油や天然ガスのように、水素が当たり前に使われる未来を実現すべく、液化水素サプライチェーンの構築に取り組んでいきます。
| ※1 | 「水素社会構築技術開発事業：大規模水素エネルギー利用技術開発／未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」(2015-2023) |
| ※2 | 日本の「2050 年カーボンニュートラル」に向けた経営課題に取り組む企業等に対して、10年間研究開発・実証から社会実装までを支援する事業。 |
| ※3 | 「水素社会構築技術開発事業：大規模水素エネルギー利用技術開発／液化水素の輸送貯蔵機器大型化および受入基地機器に関する開発」（2019-2022） |
■過去のプレスリリース
世界初の液化水素荷役実証ターミナル「Hy touch 神戸」を納入（2020年12月3日付）
https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20201203_1.html
水素を液化水素運搬船で海上輸送・荷役する実証試験の完遂式典を開催（2022年4月9日）
