コージェネレーションシステム用ガスタービン全機種で 水素混焼DLE燃焼器の市場投入を完了

2023年03月31日

川崎重工は、20MW級ガスタービン「L20A」および5MW級「M5A」向け水素混焼DLE※1燃焼器の販売を開始し、当社が販売するすべてのコージェネレーションシステム用ガスタービンで、水素を体積比30%までの割合で天然ガスと混焼し、安定した低NOx※2運用を実現する水素混焼DLE燃焼器の市場投入を完了しました。※3

当社のDLE燃焼器は、希薄予混合燃焼と追焚き燃焼を組み合わせた独自の方式を採用しています。希薄予混合燃焼は、燃料を空気と混合してから燃焼させることで局所的な高温部分をなくしNOxの発生を大幅に削減します。追焚き燃焼は、燃料を希薄予混合燃焼後の領域に投入することにより、メインバーナの燃焼を安定させたままNOxをほとんど生成させることなくガスタービンの出力変更ができます。この燃焼方式を水素の混焼にも適用し、天然ガスと同様に低NOxかつ安定した燃焼を実現しました。

また、当社のDLE燃焼器を搭載した天然ガス焚きガスタービンは、全ての機種でガスタービン本体を改造することなく水素混焼に対応することが可能です。既存システムの機器を流用しながら、水素圧縮機と燃料混合システムなどを追加するだけで水素と天然ガスと混焼できるため、実績あるガスタービンの信頼性を継承したまま水素エネルギーを活用することができます。なお、当社がこれまでに納入した全ての天然ガス専焼のDLE燃焼器を、水素混焼タイプに改造した場合、年間約60万トンのCO2排出量削減となります。

コージェネレーションシステム用ガスタービン全機種で水素混焼DLE燃焼器の市場投入を完了

当社では、お客様の多様な水素利用ニーズに応えるため、水素混焼から専焼(水素100%)による発電までに幅広く対応するガスタービン燃焼器を市場投入しており、さらなるラインナップの拡充に向けた開発に取り組んでいます。これらの水素発電技術は、CO2フリー水素や複製水素の利用拡大の実現において重要な役割を担います。

当社は、脱炭素社会に向けた水素エネルギーの普及を見据え、水素を「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」といったサプライチェーンの技術開発をすすめています。中でも、水素ガスタービンは、日本のCO2発生量の約4割を占める発電分野における脱炭素化に貢献する、「つかう」分野の重要な製品の一つです。今後もさらなる水素燃料対応のガスタービン燃焼技術の開発を進め、世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献していきます。

ガスタービンモデル M1A-17D M5A-01D M7A-03D L20A-01D L30A-01D
水素混焼率(体積%) 0~30※3
発電出力(kW) 1,777 4,710 7,650 17,610 32,260
燃料消費量(m3N/h) 13Aガス 509 1,157 1,835 4,172 6,494
水素 219 497 787 1,789 2,783
蒸気量(t/h) 5.1 10.9 17.2 38.7 53.5
NOx値(ppm)
(O2=15%換算)
15 20 15 25 25
CO2発生量(t/h) 1.2 2.7 4.2 9.6 14.9
発電効率(%) 27.7 32.4 33.2 33.6 39.5
総合効率(%) 83.7 84.8 85.5 85.3 85.4
  • 【条件】
    ガスタービン:吸気温度15℃ 大気圧力=101.3kPa(高度0m相当) 吸排気圧損:標準 燃料LHV:都市ガス40.629MJ/Nm3 水素10.789MJ/Nm3
    ボイラ:蒸気圧0.78MPaG 給水温度60℃ CO2排出係数:都市ガス2.29t-CO2/千Nm3 水素 0t-CO2/千Nm3
  1. ※1Dry Low Emissionの略。水や蒸気の噴射に拠らず燃焼温度を低く制御することで、NOx排出量を削減する方式。
  2. ※2窒素酸化物のこと。物が高温で燃えたときに空気中の窒素と酸素が結びついて発生する酸化物であり、光化学スモッグや酸性雨の原因物質のひとつ。大気汚染防止法や地方自治体の条例により排出量が制限されている。
  3. ※3M5Aは2023年度中に水素30%混焼への対応完了を予定。
  4. ※4水素ガスタービン開発ロードマップ
    https://www.khi.co.jp/energy/pdf/20220915_hydrogen-introduction.pdf