重要課題の特定(マテリアリティ)


川崎重工グループの重要課題(マテリアリティ)の特定プロセス

川崎重工グループでは、多様化するステークホルダーからの期待・要望と事業環境の変化を踏まえ、当社グループの企業活動が社会に与える影響を認識・整理し、2018年に重要課題(マテリアリティ)を特定しました。
さらに、2020年11月に「グループビジョン2030」に発表したことを受け、重要課題の見直しを行いました。2018年と同様、重要課題は「事業を通じて創出する社会・環境価値」と「事業活動を支える基盤」に2大別し、本業を通じた取組みを「当社グループが長期で達成すべき最重要課題」と定義し、それ以外の課題を、最重要課題の達成に向けた「基盤項目」と位置づけています。今後も、事業環境や社会からの期待の変化に即し、定期的にマテリアリティの見直しを行っていきます。

重要課題(マテリアリティ)の特定プロセス

STEP 1

ステップ1:「グループビジョン2030」策定に伴う見直し さまざまな社会課題と当社グループの強み、2030年のあるべき姿を勘案し、2020年11月、「グループビジョン2030」を策定。「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」を3つの注力フィールドと定めました。2021年6月、社長を委員長とするサステナビリティ委員会で審議し、3つの注力フィールドを「事業を通じて創出する社会・環境価値」と定めました。

STEP 2

ステップ2:事業を支える基盤項目の見直し 「グループビジョン2030」における事業戦略および昨今のサステナビリティをめぐる世界的な変化を踏まえ、「事業を支える基盤項目」について見直しを行いました。見直しに際しては、ESG評価機関(DJSI、FTSE、MSCI、Sustainalytics)からの調査項目、SASB、投資家のスチュワードシップ方針、GRI、Future-Fit、顧客企業からの要請事項(Self-Assessment Questionnaire)に基づいて外部アドバイザーの意見も参考に課題を抽出・整理し、重要課題のマッピング(「社会・ステークホルダーにとっての重要度」と「当社グループにとっての重要度」)を仮設定しました。

STEP 3

ステップ3:外部有識者ヒアリングと重要課題の決定 社外の有識者にご意見をいただき、マッピングを見直しました。いただいたご意見と修正したマッピングに基づいてサステナビリティ委員会で審議した上で、取締役会で審議し、最終的な重要課題を決定しました。

STEP 4

ステップ4:計画立案とレビュー 特定した重要課題について、GRIスタンダードのマネジメントアプローチへの準拠を目指し、責任部門と具体的な数値目標を定め、着実な実行とフォローアップを通じて目標達成に向けて活動を推進していきます。進捗状況についてはサステナビリティ委員会に報告し、改善を図っていきます。

Step 3でご意見をいただいた有識者のコメント

  • (肩書きは当時のものです)

株式会社日本政策投資銀行 設備投資研究所
エグゼクティブフェロー/副所長
兼 金融経済研究センター長

竹ケ原啓介氏

・2018年から川崎重工グループのマテリアリティは画期的な印象であった。本業における貢献とそれを支える事業基盤という体系の先鞭をつけた。今回もその体系を踏襲しており素晴らしいと思う。特に「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」の3分野に川崎重工グループらしさが出ており、この分野で課題を解決し、価値を提供しながら成長していくというメッセージがかなりクリアに出せている。

・金融機関としては、事業を通じて創出する3つの価値を実現するために必要な川崎重工グループの非財務ファクターは何かという観点で考える。川崎重工グループらしさを考慮すると、社内にある技術を実現してマネタイズにつなげていくことが重要。技術力や知的財産の中にあるイノベーションを生み出す力をもっと前面に打ち出してもよいと感じた。

・2030年の「エネルギー・環境ソリューション」の目標・KPIには、川崎重工グループらしく水素が打ち出されているが、お客様も含めて水素が社会実装できる時間軸はもっと先になる。2030年時点だと、水素はまだイノベーションの世界に分類される。2030年までの環境貢献度という観点で言うと、「Kawasakiグリーン製品制度」があり、ISOに紐づけて定量開示もしているので、これをKPIに加えてもよいのではないか。

・一般企業は、今、トランジション・フェーズで、水素エネルギーが実現するまではがんばろうという感じだが、川崎重工グループは、多くの企業が2030年以降ジャンプするための事業基盤を今からハンズオンで作っている。川崎重工グループのトランジションは他の会社にとってのイノベーションを作り出すことだと考えるので、そのシナリオが価値創造の中で語られると投資家の理解が得やすくなると思う。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
プリンシパル・サステナビリティ・ストラテジスト

吉高まり氏

・「グループビジョン2030」の3つの注力フィールドは、投資家が成長に資する分野として関心の高い「気候変動」「ヘルスケア」「モビリティ」が含まれており、成長戦略のコンテンツとしてワクワクする。「グループビジョン2030」のKPIについて数値化して開示することは画期的である。

・「事業を支える基盤」の項目が「事業を通じて創出する社会・環境価値」にどのようにつながるのか時間軸もあわせてもっと見えるようにして欲しい。「製品責任・安全」や「コンプライアンス」はやって当たり前。それよりも、これから来るリスクや危機に対してどれくらい感度が高いかを示して欲しい。

・投資家はコロナ禍を受けて「サステナブル・サプライチェーン」と「人権」を注視しているので、この2つはもう少し「社会・ステークホルダーからの期待」を高めにしても良いのではないか。

・川崎重工グループはグローバルに事業を展開しているので、取締役のダイバーシティ、ジェンダーギャップの解消、従業員のグローバル化についても、マテリアリティとして示す方がよい。これらの課題を経営がどう認識しているかは重要である。

・TCFDへの対応についてもマテリアリティではっきりと示すべき。CO2排出ゼロやビジネスチャンスだけでなく、サプライチェーンや物流リスクなどのリスク面をどのように考えているのかを明らかにしてほしい。

・世界的に異常気象や地政学リスクによる資源枯渇の問題の重要性が高まっているので、「資源の有効利用」という項目もマテリアリティに入れておく必要があるのではないか。川崎重工グループの場合、素材や部品を調達する際に資源枯渇が事業リスクになる。環境の変化に関しては、過去のデータだけではなく、バックキャスティングの考え方でデータ収集を行い、KPIを設定されると良いと思う。

SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO

田瀬和夫氏

・全般的に一貫した論理の下にまとまっている印象であり、マテリアリティに経営資源を注力していくことが実質的に可能であるならば良い内容である。「事業活動を支える基盤」に脱炭素とTCFDへの対応について記載がないので加える必要があるが、2030年までをターゲットとするのであればそれ以外は問題がないと考える。

・「事業を通して創出される社会・環境価値」について、それを生み出す3つの事業が川崎重工グループの財務戦略にどのような意味を持つか、どの程度の売上・利益・事業ポートフォリオのウェイトを占めるのか、この問いに答えられるかどうかが、マテリアリティにとって最も重要なポイントになりつつある。

・ESGの課題については、サプライチェーン全体で考えることが重要だ。マテリアリティを決める際には、脱炭素・生物多様性・ビジネスと人権などが、サプライチェーン上でどの程度管理・マネジメントできているか、さらに、サプライチェーン上でマイナスのインパクトを生み出さないことがしっかりとコミット・実践できているかを確認する必要がある。

・マテリアリティを決める際のビジョンの時間軸については、2030年ターゲットであれば現状のマテリアリティで良いが、ネット・ゼロやカーボンニュートラルの達成が目指されている2050年を見据えた場合は、より戦略を考慮すべきだ。

・2030年代前半に起きる技術革新により、再生可能エネルギー由来の水素のコストが化石燃料由来のコストを逆転すると言われており、この技術革新が起きた際には化石燃料は全く意味がなくなるとされる。超長期戦略からバックキャストしてマテリアリティを考えるのであれば、水素についてはもう少し長い期間で考えても良い。


有識者のご指摘を受けて

各重要課題の位置づけは「抽出した重要課題のマッピング」のとおりです。ご指摘を踏まえ、「サステナブル・サプライチェーン・マネジメント」と「ビジネスと人権」について「社会・ステークホルダーにとっての重要度」を上方に修正しました。

「事業を支える基盤」の重要課題については、ご指摘を踏まえ、以下の3つのカテゴリーに分類し、必要に応じて各課題の重点事項を明記することとしました。

(1)今後に向けて特に重要な事項(将来財務への影響が益々増大している事項)

(2)これまでも重視してきたが今後も着実に強化していく事項

(3)全ての基盤として整備していく仕組み

さらに、企画・設計から製品の使用までの流れと、それに関わるサプライヤーからお客様まで、バリューチェーン全体を俯瞰した上で、上記(1)(2)のカテゴリーにおける各課題の取組み範囲を明確にし、「川崎重工グループの重要課題と重点事項」を表にまとめました。当社グループの重要課題(マテリアリティ)は、「マッピング」および「重点事項の表」により示します。

「サステナブル・サプライチェーン・マネジメント」については、取組むべき事項が多岐にわたるため、下表では「サプライヤー」の欄において重点事項を示しています。


抽出した重要課題のマッピング


川崎重工グループの重要課題と重点事項


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