二次電池(鉛蓄電池・ニッケル水素電池)と電気二重層キャパシタ併用運転による風力発電における電力安定化装置の実証試験開始について

2007年10月01日

 

 

 

  富士電機システムズ株式会社(代表取締役社長:矢内銀次郎)、川崎重工業株式会社(代表取締役社長:大橋忠晴)、新神戸電機株式会社(執行役社長:臼井正信)、日産ディーゼル工業株式会社(代表取締役社長:竹内覚)は共同で、株式会社ウインパワー殿 西目風力発電所に環境にやさしい発電として注目を浴びている風力発電の電力安定化装置(以下風力発電電力安定化装置)の実証試験設備を設置、使用前検査、現地試験を完了、8月より実証試験を開始しました。
風力発電電力安定化装置とは、風力発電の導入制約要因の1つである出力変動に起因する電力系統の電圧や周波数の変動を緩和させるための装置であり、風速や風向変動によって生じる発電出力変動のうち、電力系統に影響をおよぼす周期の変動分をキャンセルし、安定した合成出力を電力系統に送電させるための装置です。
本装置は、二次電池(鉛蓄電池またはニッケル水素電池)と電気二重層キャパシタを利用した世界初のハイブリッドシステムです。
二次電池(鉛蓄電池・ニッケル水素電池)と電気二重層キャパシタのハイブリッドにより、数秒から数10分までの幅広い周期の電力変動の補償を最適な装置容量で実現することができ、また装置の長寿命化が図れるという特長があります。
本装置の実証試験を実際の風力発電所において行うことで、装置の性能向上や、二次電池(鉛蓄電池・ニッケル水素電池)と電気二重層キャパシタの最適な利用のための各種技術の確立、実フィールドにおける運用ノウハウの蓄積を図ることを狙いとしています。

2001年6月に取りまとめられた、「総合資源エネルギー調査会報告」にて、2010年度の新エネルギー導入目標(風力発電300万kW、太陽光発電420万kWなど)が設定されました。また、2003年4月には電気事業者に一定量以上の新エネルギー利用を義務付ける「RPS法」(「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」)が完全施行されています。
一方で自然エネルギーを利用した分散型電源は自然条件に応じて時々刻々出力が変動するため、連系する電力系統の電力品質への影響が懸念されています。特に風力発電は出力変動が激しく、すでに一部の電力会社では電力系統に連系可能な風力発電の量が制限される状況となっており、国レベルでも対策が検討されています。
このような課題・背景のもと、4社はそれぞれ先導的な商品・技術開発に取組んでまいりました。

富士電機システムズでは新エネルギーや省エネルギー事業展開を推進するうえで、電力安定化を重要な戦略技術として位置付け、他社に先駆けて風力発電設備向け超高速フライホイール装置を用いた電力安定化装置を開発し、第8回新エネルギー大賞を受賞した実績があります。

川崎重工業が開発を進めている大容量新型ニッケル水素蓄電池「ギガセル」は、高速充放電が可能、高い充放電効率、常温作動で使い勝手に優れるというニッケル水素電池固有の利点はそのままに、大容量化が可能でサイクル寿命にも優れるという特長を有しています。急激な出力変動に追従して大電流の充放電が求められる風力発電電力安定化においては、これらの特長を生かすことで他種の蓄電池よりも設置容量を大幅に小さくできる可能性があるため、「ギガセル」の有効な適用先のひとつと位置付けています。2006年に足利工業大学殿の協力を得て実験用風車出力の安定化実証試験を実施し、その性能を確認しました。引き続き、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の系統連系円滑化蓄電システム技術開発プロジェクトの委託を受けて、風力発電など新エネルギー利用拡大に向けた蓄電池の改良研究を進めるとともに、独自技術として鉄道車両等の大型移動体の動力源や回生電力回収等様々な利用技術の開発を進めています。

新神戸電機は、非常用電源用途で実用化されているメンテナンス・フリーの鉛蓄電池の技術を元に、2000年に2000サイクル・7年の電力貯蔵用鉛蓄電池を発売しました。翌2001年には3000サイクル・10年に寿命を向上し、更に2004年にはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の開発助成を受けて4500サイクル・15年の長寿命化製品を発売しました。(蓄電池の性能条件:25℃、放電深度70%、弊社指定充電)
鉛蓄電池の特長は、常温作動でヒータ等の補機が不要な為に運転、保守、取り扱いが容易であることや、充放電変動に対する追随性能に優れていることです。また、非常用電源用途での多数の生産・使用実績がある為に製品の安定性、信頼性及び経済性に優れていることも特長として挙げられます。
風力発電の変動抑制システムは、沖縄地区を中心とした離島などで実用化されていますが、新神戸電機製の鉛蓄電池は、1999年より宮古島での実証試験に始まり、日本最西端の与那国島や多良間島等の高温環境化で実用化設備として使用されています。
また、2001年の、NEDOの実証研究である「蓄電池併設風力発電設備の調査研究」では、竜飛ウインドパークに於いて新神戸電機の鉛蓄電池を用いて調査研究が実施されました。

日産ディーゼル工業は、自動車としては初となる、電気二重層キャパシタを蓄電装置として使用したハイブリット中型トラックを、2002年に商品化しました。従来のディーゼル車に比べ大幅な低燃費化と低公害化が評価され、その年の省エネ大賞「経済産業大臣賞」を受賞しました。
電気二重層キャパシタは、高出力充放電時に高効率で、かつ長寿命という特長を持っており、各種蓄電用途への応用が可能です。
現在、風力発電安定化を初めとする各種用途に適用する開発を進めています。

こうした各社の実績、技術を活かし、4社共同での二次電池(鉛蓄電池またはニッケル水素電池)と電気二重層キャパシタのハイブリッド型安定化装置の開発に取り組み、実フィールドでの実証試験を開始しました。本実証試験設備は、二次電池である鉛蓄電池(新神戸電機製)、ニッケル水素蓄電池(川崎重工業製)および電気二重層キャパシタ(日産ディーゼル工業製)の単独およびハイブリッド運転による電力安定化を行うもので、ニッケル水素蓄電池用システムコントローラ付双方向インバータ(川崎重工業製)、鉛蓄電池および電気二重層キャパシタ用システムコントローラおよび双方向インバータ(富士電機システムズ製)等により構成されています。
実証試験では、最適な運転制御方法の検討・評価を行い、電力安定化装置の容量削減および電池類の長寿命化の実現を目指して各種試験、データの蓄積を行います。

1.本実証試験設備の概要
《特長》

1) 短期から長周期の出力変動に対応できる二次電池と、高出力充放電条件での寿命が長いので、ごく短周期の出力変動(微小変動分)に対応できる電気二重層キャパシタとを組合せることで、より安定した合成出力を系統に送電可能なこと。

2) 実際の風力発電設備に連系して各種試験(出力変動抑制試験等)が可能であり、机上やシミュレーションでは解析不可能な風力発電特有の出力変動波形での各種検証ができること。

《実証設備概要》

1) 鉛蓄電池 電力安定化装置
鉛蓄電池: 新神戸電機株式会社製
セル単位容量1500AH、総セル直列数 96セル、適用最大電力 73kW
双方向インバータ+システムコントローラ: 富士電機システムズ 製
交流出力 120kVA、交流電圧 100V

2) ニッケル水素蓄電池 電力安定化装置
ニッケル水素蓄電池: 川崎重工業株式会社 製
セル単位容量130AH、総セル直列数 180セル、適用最大電力 154kW
双方向インバータ+システムコントローラ: 川崎重工業株式会社 製
交流出力 200kVA、交流電圧 440V

3) 電気二重層キャパシタ 電力安定化装置
電気二重層キャパシタ: 日産ディーゼル工業株式会社製
セル単位容量3100F、総セル直列数 120セル、適用最大電力 61kW
双方向インバータ+システムコントローラ: 富士電機システムズ 製
交流出力 80kVA、交流電圧 78V

2.実証試験開始時期
2007年 8月 1日

※「ギガセル」: 川崎重工の登録商標です。