安全で高効率な対人地雷除去車「MINEBULL」をアフガニスタンへ初出荷

2007年06月28日


川崎重工は、高い安全性と効率性を兼ね備えた対人地雷除去車「MINEBULL」をアフガニスタンへ初出荷しました。これは、政府の人道的援助を目的とした「草の根・人間の安全保障」無償資金援助のもと、同国のNGOであるMCPA(Mine Clearance Planning Agency)の要請に応えたものです。

今回出荷した「MINEBULL」は、2004年から2005年にかけて実施したアフガニスタンでの実証実験の結果を受け、安全性および操作性、整備性に更なる改良を加えた対人地雷除去車です。また、標準のスペアパーツに加え想定外の対戦車地雷および不発弾による損傷に備えた大型交換部品、市街地から離れた野外での整備・修理作業を可能にする移動式修理工場の役割を担う車両「モバイルワークショップ」、さらに過酷な自然環境下で行う地雷除去作業を正確かつ快適に行うことのできる「遠隔操作用車両」を合わせて出荷しました。

当社は、「MINEBULL」の出荷に先立って、MCPAの運用・整備を担当する要員3名と現地で機材のアフターケアを担当するパキスタン技術者2名を招き、当社播磨工場内で、運用を踏まえた機材の操作法や現物を対象にした整備・修理法を中心とした教育訓練を実施しました。今後、「MINEBULL」は、パキスタンを経てアフガニスタンに到着し、9月からパーワン州実地雷原において、MCPAによる認証試験を兼ねた対人地雷除去活動が開始される予定です。

「MINEBULL」は、当社が開発した高効率な地雷探知・対人地雷処理システムである「BULLDOGシステム」の中心となる対人地雷除去車です。同システムは、「MINEBULL」および地雷探知車「MINEDOG」、それらの遠隔操縦・操作装置で構成され、地雷探知から対人地雷処理までを機械的に行えることから、安全で高効率な対人地雷除去を可能にしています。
「MINEBULL」は、車体前方に装備した高速掘削ドラムにより、地雷原を掘削(最大で毎分55平方メートル)しながら対人地雷を爆破します。対戦車地雷触雷等、万一の場合の安全を図るため、遠距離(300メートル以上)からの遠隔操作を基本とし、さらに安定した掘削のための掘削深度制御装置や高精度な作業区域地図作成のためのGPSマップシステム、経路監視カメラなどを装備しています。また、対人地雷爆破後の確認探査作業の妨げとなる地中の鉄片を回収するため、掘削ドラムカバーおよび永久磁石プーリー付コンベア、鉄片回収バケットなどを備えています。また、「MINEDOG」は、地雷探知センサー(地中レーダー)や各種探知カメラ、各種信号処理システムを搭載し、自動的に地雷を探知・識別し、地図上に位置および種類を記録する地雷探知車です。

当社は、1993年から地雷探知・除去についての研究開発を行っており、遠隔操作についても、人間型ロボットの遠隔操作技術やロボットなど各種産業用機器の電子制御に関する高度な技術を保有しており、1992年には当社が開発した遠隔操縦型ロードローラがカンボジアにおける国連平和維持活動(PKO)で活躍しました。「BULLDOGシステム」は、これらの蓄積してきた技術と経験を結集し、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成を受けて開発したものです。

難民の数が世界で最も多いアフガニスタンは、現在も爆弾テロや銃撃戦が続き、対人地雷による被害も世界で群を抜いて多く、国民の安全が長い間脅かされ続けています。
当社は、より安全かつ高効率に対人地雷を処理できる「BULLDOGシステム」の提供を通じて、政府の国際貢献活動の重点施策である人道的地雷除去支援活動に協力し、アフガニスタンにおける地雷除去活動を通じて国際的な安全・平和維持活動に貢献していきます。