大型ニッケル水素蓄電池「ギガセル」による風力発電出力の平滑化実証に成功

2007年06月20日

 

  川崎重工は、2006年8月から12月にかけて、実際の風車にギガセルを設置して実証実験を行い、ギガセルによる風力発電出力の平滑化(変動を小さくする)効果を確認しました。

風力発電は、自然エネルギー活用の観点から世界的に導入が進められている一方、風の強弱に伴う出力変動が大きいことから、そのまま電力会社の送電系統に流入させた場合、系統電力の電圧や周波数に変動を引き起こすという問題点が指摘されています。今後風力発電の一層の普及を促進するためには、出力変動の安定化が課題であり、その解決策として、風力発電の出力の変動を蓄電池に吸収させることにより、安定した出力を得るシステムが期待されています。

実証実験は、足利工業大学の定格出力40kWの風車にギガセルを組み合わせ、同大学と当社との共同研究として実施しました。
風車からの出力をすべて蓄電池に吸収させ、一定量を系統電力に流すようにすれば、質のよい安定した出力が得られ、制御も容易ですが、一方で大容量の蓄電池が必要になります。そのため実証実験では風車出力の大部分をそのまま系統電力に流し、ギガセルは出力変動に応じて電力を吸収または放出することにより、経済的に電力供給の安定化を図りました。当社は今回の実証試験において、当社が開発したギガセルが大容量・高速の充放電に対応し、複雑な入出力変動に追随できる当社独自の制御装置と合わせることにより、風車出力が急激に変動する場合においても合成出力に乱れが生じないことを確認しました。

ギガセルは、当社が独自技術で開発した電池であり、大容量型を容易に製作でき、高速な充放電が可能などの特長を持っています。さまざまな分野への適用が可能であり、2006年7月に、ギガセルによるピークカット機能を備えた太陽光発電システムを学校法人八千代松陰学園(千葉県八千代市)に納入しています。また、マイクログリッド等分散型発電システムの負荷平準化のほか、電池駆動路面電車や鉄道蓄電設備等への適用拡大を目指しています。

当社は、今回の実証成果を受けて、今後商用運用中の風力発電所での本格的な実証試験を開始します。また、実用化に向けて新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の次世代蓄電システム実用化戦略技術開発「系統連系円滑化蓄電システム技術開発」プロジェクトの助成を受け、さらに開発を加速していきます。
なお、風力発電向けギガセルの開発については、第7回・風力エネルギー利用総合セミナー(2007年6月22日~23日、足利工業大学)において、「新型ニッケル水素電池による電力平準化の開発と実証」として発表する予定です。