安全で高効率な地雷探知・除去を実現する「BULLDOGシステム」カンボジアで実証試験へ

2006年06月21日

 



  川崎重工は、高い安全性と効率性を兼ね備えた人道的地雷除去システム(BULLDOGブルドッグシステム)について、今年7月から、カンボジアで実証試験を実施します。

当社は、昨年、アフガニスタンの地雷原で実際に地雷除去を行うなどの実証試験を完了し、「BULLDOGシステム」による地雷除去作業の安全性および有効性を確認しました。今回のカンボジアでの実証試験はこれに続くもので、アフガニスタンと同様、日本政府による無償資金協力事業の一環として実施されます。本実証試験は、アフガニスタンでの実証試験を経てさらに改良した「BULLDOGシステム」を、カンボジアの実地雷原に持ち込み、実際に地雷除去等を行うことにより、現地の植生や土壌、地形などに適合したシステムを開発することを目的としています。

当社が開発した「BULLDOGシステム」は、地雷探知センサーや各種カメラを搭載した地雷探知車「MINE DOGマインドッグ」、地雷を掘出し爆破する掘削ドラムや爆片などの廃棄物回収機構を搭載した対人地雷除去車「MINE BULLマインブル」およびそれらの遠隔操縦・操作装置で構成されます。
地雷探知車「MINEDOG」は、車体前方に搭載した地表面の凸凹に対応して自動的に上下動する8チャンネルの地雷探知センサーで地中に埋設されている対人地雷および不発弾を探知するとともに、車体上部に搭載した可視カメラで地表面の散布地雷やわな線を探知します。また、探知センサーからの情報を独自開発した識別ソフトで解析することにより、対人地雷や不発弾と地中の空洞、岩石などを正確に区別することが可能です。なお、今回のカンボジアでの実証試験用として、草木対応可能な機能や軟弱地盤での走行機能などを付加しています。
対人地雷除去車「MINEBULL」は、車体前方に搭載した高速掘削ドラムにより地面を掘削しながら対人地雷を爆破します。安定した掘削や走行を確保するために、掘削深度モニター装置や遠隔制御装置、GPSアンテナ、経路監視カメラなどを装備しています。また、永久磁石プーリィ、鉄片回収バケットなどにより、対人地雷爆破後の確認探査作業の妨げとなる地中の鉄片を回収する機構を備えています。なお、カンボジアの粘着土壌に対応するため、付着土除去ブラシや「MINEDOG」と同様の走行機能などを付加しています。

当社は、6月に対人地雷除去車「MINEBULL」をカンボジアに向けて出荷し、7月から同国シェムリアップの地雷原で地雷除去試験を開始します。また、8月には対人地雷探知車「MINEDOG」を出荷し、10月から性能試験を実施する予定です。

当社は、1993年から、地雷探知・除去について独自の研究開発を行うとともに、防衛庁における当分野の研究開発に積極的な技術支援を行い、評価用に多くの試作品を提供してきました。また、遠隔操作については、人間型ロボットの遠隔操作技術やロボットなど各種産業用機器の電子制御に関する高度な技術を保有しており、1992年には、当社開発の遠隔操縦型ロードローラがカンボジアにおける国連平和維持活動(PKO)で活躍しました。
「BULLDOGシステム」は、これまでに蓄積してきたこれらの技術と経験を結集して開発したものであり、2004年から2005年にかけて、アフガニスタンで実証実験を行い、良好な結果を得ました。当社は、これらの成果とともに、今回の実証試験により貴重な試験データ等を得てさらに開発を推進し、カンボジアに適合した「BULLDOGシステム」の早期の実用化を目指します。
当社は、本システムの開発を通じて、政府の国際貢献活動の一環である人道的地雷除去支援活動および地雷除去を推進している国際NGO活動に貢献していきます。