小規模では世界初となる木質バイオマスのガス化・ガスタービン発電に成功

2004年12月01日

 

川崎重工は、木質バイオマスをエネルギー源とした小規模分散型熱電併給システムの開発を推進しており、このたび加圧流動層ガス化炉とガスタービン発電機を組み合わせた木質バイオマスのガス化・発電に成功しました。今回の成功は、日量数トン程度と少量の木質バイオマスを対象としたシステムとしては世界初の成果であり、木質バイオマスの小規模分散型熱電併給システム実用化に道を拓くものです。

木質バイオマスは、再生可能な地球温暖化防止へ寄与するクリーンなエネルギー資源の一つとして、その利用拡大が求められている一方で、大量に収集輸送することが困難なため、小規模で高効率なエネルギー転換技術の開発、普及が必要とされています。

今回当社が木質バイオマスのガス化・発電に成功したシステムは、当社が開発した流動層ガス化炉とガスタービンによる低カロリーガス燃焼技術を適用した独自のシステムであり、日量数トン程度の比較的小規模な木質バイオマスが発生する製材所などへの導入を目指したものです。本システムでは、流動層ガス化炉にて約650℃で木質バイオマスを熱分解によりガス化し、多量のタール成分を含む生成ガス(COとH2)をそのままガスタービン燃焼器に導入してガスタービンによる発電を行います。従来、処理が困難なことから除去または分解されていたタール成分を高温のままガスタービンに導入し、燃料として有効利用しているため、同規模の直接燃焼・蒸気タービン発電方式に比べ約3倍(約20%)の高効率発電が可能であり、小規模なバイオマスを利用できます。さらに、ガスタービンからの排熱は、熱交換器を介して流動層ガス化炉で用いるガス化用空気の熱源に再生利用するほか、必要に応じて排熱回収ボイラなどを設置することにより蒸気や温水として利用できます。

当社は、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託を受け、(財)エネルギー総合工学研究所、高知県、東京大学、東京農工大学、島根大学と共同で、木質バイオマスによる小規模分散型高効率ガス化発電システムの開発に取り組んでおり、2003年6月に技術研究所(兵庫県明石市)内に24kW規模の試験設備として流動層ガス化炉設備とガスタービン発電設備を設置し試験研究を進めてきました。

当社は、今回の成功によりシステムとしての実用化への目処をつけ、本システム開発を2004年度末に完了する予定です。また、2005年度からは(株)ソニア 佐川工場(旧 仁淀川流域木材センター、高知県佐川町)において150kW規模の実用化試験設備を建設し、製材所で発生する木屑を利用したガス化・ガスタービン発電と、排熱回収ボイラにより蒸気を発生させる熱電併給システムの実用化試験を行う計画です。

当社のバイオマスエネルギー利用設備としては、従来からの直接燃焼・蒸気タービン発電システムを主体とし、大規模設備では製紙プラント用のソーダ回収ボイラなどのパイオニアメーカーとして豊富な納入実績を有するとともに、小規模設備についても日量20トン程度の木質バイオマスを利用したシステムの納入実績があります。
今後、今回の小規模分散型熱電併給システムの早期実用化を図ることにより、当社は多種多様な木質バイオマス資源量とエネルギー需要形態を最適化する高効率なバイオマス発電システムのラインアップの拡充を進めていきます。

当社は、バイオマスや風力などの未利用で再生可能なエネルギーの有効利用を促進する最新技術の開発や製品の拡販を通じて、温室効果ガス排出量削減や資源の有効利用による循環型社会構築に貢献していきます。