シールドとTBM両方の機能を備えた新型掘削機「シールドTBM」を開発 -止水区間と非止水区間のあるトンネルを1台で掘削-

2003年11月20日

清水建設(株)<社長 野村哲也>と川崎重工業(株)<社長 田﨑雅元>は、シールド推進機構とTBM(トンネル ボーリング マシン)推進機構の両機能を備えた新型掘削機「シールドTBM」を共同で開発しました。この「シールドTBM」は、地下水と地質の状況から止水区間と非止水区間が連続で設定されている長大トンネルを、1台の掘削機で、効率良く掘削することが可能です。

従来、トンネル掘削の施工中に地下水がトンネル内に流入することで地下水位が低下するのを防ぐ等、地下水環境を保全するためには、切羽前方地山を止水注入して掘削する止水注入工法が一般的でした。しかし、同工法はコストが高く工期も長いという問題がありました。工期については、セグメントによる確実な止水効果を利用したシールド工法の実用化により、短縮できましたが、シールド工法は止水の必要がない区間でもセグメントを使用するためコスト高になります。近年、地下水環境保全トンネルの計画が増える中、施工費用も低減できる新しい工法の開発が求められていました。

今回開発した「シールドTBM」は、止水区間では止水効果のあるシールド工法によるセグメントを使用する一方、止水の必要がない区間では、TBM工法による安価なNATM支保を用いることができます。そのため止水条件の異なる区間が設定されている掘進距離の長いトンネルでも、1台の掘削機で全区間施工可能となり、施工コスト低減が可能となります。

今回両社で開発した「シールドTBM 」は、掘削径5mから2車線道路に対応した掘削径12m級までの大口径トンネルの掘削に対応でき、硬岩地山から未固結地山まで全地質に対応可能です。この「シールドTBM」を非止水区間が連続で1,500m以上ある3,000m級トンネルの工事に使用した場合、全区間にシールド工法を適用した場合と比較して、NATM支保はセグメント覆工の1/5のコストで施工できることから、約10%のコストダウンが可能です。また、さらにTBMモードは、非止水区間ではシールド工法と比較して2倍の速さで施工できるので、同様の条件では、25%の掘削時間の短縮が可能です。

「シールドTBM」の主な特長は以下の通りです。

  1.シールド工法(セグメント覆工)とTBM工法(NATM支保)の両方の機能を備えています。
 2.高圧湧水区間に対しては、80mの深さでも耐えられるような最高耐圧性能を備えていますので、都市部の大深度掘削にも対応できます。
 3.カッターは、ローラーカッターを使用し、カッターヘッドは面板構造で電動機駆動です。
 4.カッターヘッド低速回転および高速回転が可能な電動駆動となっているため、軟弱層での高トルク低速回転、硬岩部での低トルク高速回転が両立でき、広範な地質に対応できます。
5.ずり取り込みおよび排土は、シールドモード時には泥水加圧式、TBMモード時にはベルトコンベア方式の2系統を併用します。ベルトコンベアはシールドモード時には、機内へ格納できる構造となっています。

今回の開発では、清水建設が構想と施工法および仕様の提案、川崎重工業が開発設計を担当しました。今後、両社は地下水などの環境保全の必要性が高まる中で、水分環境保全トンネル工事向けに、「シールドTBM」の採用を積極的に提案していきます。