佐賀県シンクロトロン光応用研究施設向け電磁石を受注

2003年06月11日

 

 

川崎重工は、佐賀県が建設を進めているシンクロトロン光応用研究施設向けに、電子蓄積リングの主要機器である電磁石を受注しました。

シンクロトロン光とは、真空中で光速に近い速度で直進する電子が、電磁石の磁力により進行方向を変えられた際に発生する光で、赤外線からX線までの連続した波長の光を利用することができます。また、シンクロトロン光源は医療用レントゲンやCT装置などの従来のX線発生装置と比べ、10,000倍以上明るいX線を発生することができます。

今回受注した電子蓄積リングの主要機器である電磁石は、同研究施設に設置される第3世代シンクロトロン光源装置(電子蓄積リング)に使用されます。これらの電磁石は、周長約75.6mの電子蓄積リングで最大1.4GeV(ギガ電子ボルト:ギガ=10億)まで電子を加速し安定して周回するように、電子の方向や広がりを調整するものです。

九州で初めてのシンクロトロン光施設となる佐賀県シンクロトロン光応用研究施設は、20本のビームラインが設置可能な研究・実験施設で、九州地域をはじめ、国内、アジア地域の大学、研究機関、民間企業が広く利用できる施設を目指し、現在佐賀県鳥栖市内で建設が進められています。また、同施設は国内初の地方自治体によるシンクロトロン光応用研究施設で、特に産業利用を目指した応用研究を中心とすることで、新産業創出や地域産業の高度化を目指します。

当社は加速器分野において、1990年より自由電子レーザ装置の開発を行い、1992年に電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)と共同で可視域自由電子レーザの発振に成功、1995年には紫外域において自由電子レーザの発振に成功しています。2000年には東京理科大学と共同で世界で初めて光利用を目的とした赤外自由電子レーザ装置を開発しました。また世界最大の放射光施設「SPring-8」では、1996年に蓄積リング用補正電磁石を納入し、1997年にはビームライン2本を納入しました。

また当社は、加速器を利用した素粒子実験機器分野においても、高エネルギー物理学研究所(現高エネルギー加速器研究機構)のトリスタン実験検出器用機器を納入するとともに、海外では、SLAC(スタンフォード線形加速器センター)向けに素粒子検出用防磁構造体などを、またCERN(欧州合同原子核研究機構)向けに特殊磁場シールドとアルミ製高精密真空低温容器を納入した実績があります。

今後も当社は物理学、化学をはじめバイオ、医療、環境、材料など、さまざまな分野に活用できる加速器技術をもって社会的貢献を行うとともに、加速器分野でのこれまでの数多くの納入実績、経験を活かして、国内外で積極的な営業活動を展開します。