世界最高の23kWレーザーで、ステンレス鋼(30mm厚)を毎分1m以上の高速で溶接に成功

2002年03月27日

 

川崎重工は、光ファイバー導光可能な波長1ミクロン帯のレーザービーム合成出力で、世界最高の23kWレーザーを用いて、板厚30mmのステンレス鋼を1m/分以上の高速溶接に成功しました。

本研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が産業科学技術研究開発制度において、1997年より実施している「フォトン計測・加工技術」プロジェクトのテーマの一つである「マクロ加工技術」で、当社が(財)製造科学技術センターの委託を受けて、独立行政法人産業技術総合研究所四国センター、大阪大学接合科学研究所、(株)レーザー応用工学研究所と共同で行っているものです。

当社は、1999年度に連続出力10kWのよう素レーザーとパルス出力6kWのYAGレーザーを、ビームスプリッターで同軸に合わせ、当時では世界最高のビーム合成出力16kWレーザーにて、板厚15mmのステンレス鋼を1m/分以上の高速で溶接することに成功しています。

今回は、連続出力のよう素レーザーを13kWまで高出力化し、パルス出力のYAGレーザー6kWをビームスプリッターで同軸に合わせるとともに、さらに連続出力のYAGレーザー4kWを斜入射で同じ位置に合わせる、あるいは板の裏側から同時に合わせることで、23kWの世界最高ビーム合成出力を確保しました。本システムを使用して1m/分の高速溶接を実現するとともに、本プロジェクトで開発した溶接部監視装置と金属の状態をリアルタイムで監視できるモニタリング装置を組み込むことで、高品位な溶接を実現しました。

今回使用したレーザーの特長は、以下のとおりです。

(1) 波長が炭酸ガスレーザーの10.6ミクロンと比較して1ミクロンと短く、溶接時に発生するプラズマにレーザーエネルギーがあまり吸収されず、同じレーザー出力でも炭酸ガスレーザーに比べ、溶接の溶け込み深さを深くできる。
(2) 光ファイバー導光ができることにより、炭酸ガスレーザーに比べ加工先端部の光学装置の小型化が図れる。
(3) 長距離にわたってエネルギーを伝送・分岐させて、遠隔操作ロボットなどを用いる加工技術の高度化への対応が可能になる。

今回のプロジェクト「フォトン計測・加工技術」の最終目標である、板厚30mmの鋼および高反射材であるアルミ合金の20mm板厚を速度毎分1m以上で高品位に溶接することを達成するとともに、高速溶接のために各テーマにおいて、溶接部の現象解明、現象の監視や安定した溶接を実現するための溶接条件の開発を行いました。それらの研究成果をもとに、当社が開発した光学装置やモニタリング装置などを統合した加工システムの商品化を図り、厚板の新しい溶接方法を提案していきます。