ボーイング737型機用の革新的な複合材製主翼翼端部(ブレンディッドウイングレット)の設計・開発・製造に参画

2002年02月07日


川崎重工は、ボーイング737型機用の複合材製主翼翼端部(Blended Winglet以下、ブレンディッドウイングレット)の設計、開発および製造に関し、アビエーション・パートナーズ・ボーイング社(APB社)*1との間で正式契約を締結しました。当社は、本ウイングレットの設計開発を進め、本年6月に初号機用コンポーネントを出荷するとともに、年内にはAPB社と協力して米国航空当局より型式証明を取得する予定です。

ウイングレットとは航空機の性能向上を目的として主翼の翼端部に追加装着される小翼のことで、今回当社が開発に参画するウイングレットは、その形状が主翼本体から滑らかに変化するためブレンディッドウイングレットと呼ばれています。ブレンディッドウイングレットは、空力特性を考慮した独特な曲面形状をしており、これにより機体の燃費向上、航続距離の延長および低騒音化といった運用上の効率を高めることができます。その結果、地球環境への負荷も低減できることになります。すでにブレンディッドウイングレットはボーイング・ビジネス・ジェットにおいて標準仕様であり、737-700/800型機およびガルフストリーム製ビジネス・ジェットにおいても運用が開始されています。また、今後747、757、767等、ボーイング社製他機種へも適用が拡大していくものと期待されています。

今回当社が設計・開発・製造を担当する革新的なブレンディッドウイングレットは、現在全世界で約1,900機が運用されている737-300/400/500型機(=737クラシックシリーズ)を改修する際に追加装着されます。参画分野は、ブレンディッドウイングレットの設計・試験用供試体の製造・各種試験など一連の開発からはじまり、ウイングレット本体の量産品製造までを含んでいます。
このブレンディッドウイングレットの構造には、当社が航空機用として独自に開発した、先進的な低コスト複合材(KMS-6115)*2をボーイング機では初めて適用します。この複合材は低コストと高強度の両立を達成した画期的なもので、すでに当社製の川崎式BK117C-2型ヘリコプターのオプション部品に適用したほか、エンブラエル社と共同開発中であるエンブラエル170型(70席)の主翼部品への採用が決まっています。

今回の契約は、当社の先進複合材技術力、航空機開発技術力および製造技術水準が高く評価されたものであり、今後とも当社は民間航空機事業の拡大を図るために積極的な営業展開を行っていきます。

※1 アビエーション・パートナーズ・ボーイング社(APB社)
  先進ウイングレットの開発・製造を目的として、原型モデルの開発者であるアビエーション・パートナーズ社とボーイング社との間で設立された合弁会社。
社名(英文表記) : Aviation Partners Boeing, LLC(Limited Liability Company).
所在地 : 米国ワシントン州シアトル
代表者 : Joe Clark (CEO)
   
※2 炭素繊維強化複合材料「KMS-6115」
  当社が開発した、従来の特殊なグレードの炭素繊維を用いるのではなく、最新の高性能な一般産業用炭素繊維と高靭性エポキシ樹脂を原料としコストの低減を図った航空機用材料。エポキシ樹脂に接着能力を併せ持たせることで、性能面では引張強度で60%、圧縮強度で30%の向上を実現した。