世界初「安全離着岸支援システム」の実用化に向けた共同研究・開発に合意

~安全運航の向上と将来の自動運航船の実現への取り組み~

2023年01月05日

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川崎重工業株式会社、川崎汽船株式会社、川崎近海汽船株式会社の3社は、港湾内での船舶の操船、離着岸、係船作業のさらなる安全性と効率化を向上させるための自動操船・自動係船を目指す「安全離着岸支援システム」(以下「本システム」)の実用化に向けた研究・開発を共同で行うことに合意しました。

本システムの実用化に向けた研究では、川崎汽船と川崎近海汽船の2社が持つ豊富な操船ノウハウと当社がこれまでの舶用機械事業で培ってきた推進機システムインテグレーション技術および係船支援技術を融合し、さまざまな離着岸操船および係船作業の課題解決とさらなる安全性の確立を目指すものです。

現在、港湾内での離着岸作業は、操船技術に精通し、船固有の操縦性能と係船設備の特性を熟知した乗組員によって行われていますが、船舶の大型化による操船の高度化や船員人材不足の社会課題から、船舶操船・係船におけるさらなる安全管理の向上が求められています。本システムは、操船者の安全離着岸操船をAIなど最新技術でアシストし、省スキル化することによって、離着岸作業の課題解決に繋がることが期待されています。港内操船、離着岸操船、係船作業、係船管理の4つの対応を一気通貫で支援する世界初のシステムで、最大の特徴は推進機と係船機の連携制御により実現する係船作業の支援になります。川崎近海汽船が運航する内航船を活用し、実用環境下での研究・開発を行うことにより、2025年春までに本システムの確立を目指します。

■本システムの特長

①港内操船 : 高度な船体運動予測モデルと精密な船位測定や距離計測など最新のセンシング技術を活用し、操船者への支援を目的とした将来の進路・速力や停船位置といった高精度な船体運動予測情報を提供します。
②離着岸操船: 当社が開発・製造し、特に内航船では多数の搭載実績を有する自動定点保持システム(DPS※1)である KICS®2に①の船体運動予測情報を付加し、刻々と変化する気象・海象などのさまざまな外力に影響される船速や船体姿勢を最適に自動制御します。
③係船作業 : ②のKICS®による推進機制御と係船機を連携制御させ、着岸係船作業時の安全操船と乗組員の安全係船作業の双方を支援。カメラや各種センサーによる監視と作業の見える化により、係船時の人身事故の危険を大幅に減らします。
④係船管理 : 停泊中の係船索に加わる張力を船上にて検出し、リアルタイムで船内任意の場所から索張力を監視できるシステムを新たに構築します。特に潮汐差の大きい港や本船の喫水変化が早い場合、高頻度での状態確認と張力調整操作を余儀なくされますが、本システムにより係船索に関するトラブル防止と乗組員の作業負荷軽減を目指します。

当社は、推進機・DPS・係船機を製造し、船の推進から係船まで一括でエンジニアリングできる国内唯一のメーカです。DPSであるKICS®は、主推進機や舵、サイドスラスタ等を統括制御する性能を持つ他、設定航路上を自動的に航行するルートトラッキング機能を有し、これまでに国内外で豊富な自動操船技術の実績を積んできました。このKICS®による制御技術をベースとして、推進機と係船機の統合制御技術を実用化に向けて今後さらにDPS技術と先進ICTを駆使して研究開発を進めることで、離着岸操船から係船作業および係船管理までの一貫した安全性の向上ならびに将来の自動運航船の実現に向けた取り組みを行い、安全安心な海のモビリティの実現を目指します。

1 DPS(Dynamic Positioning System)は、GPS等の船体位置計測装置を使用して船体位置をリアルタイムに計測しながら、船体位置が所定の位置からずれないように推進装置や舵を自動的に制御するシステム。
2 KICS® とはKawasaki Integrated Control Systemの略で、可変ピッチプロペラ、旋回式スラスタ、サイドスラスタ、舵など、複数の操船要素を総括して操縦することができるシステム。
(参考:https://www.khi.co.jp/mobility/marine/machinery/kics.html

【安全離着岸支援システムのコンセプト図】

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