京都大学医学部附属病院における新型コロナウイルス緊急感染対策プロジェクト「大規模全自動PCRロボットコンテナの社会実装に向けた有用性評価」を開始
2021年04月21日
川崎重工は、京都大学医学部附属病院およびシスメックス株式会社(以下、シスメックス)と共同で、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策を目的とした大規模全自動PCRロボットコンテナの社会実装に向けた有用性評価(以下、共同研究)」を開始します。
共同研究では、当社、シスメックスおよび株式会社メディカロイドが開発した、当社製ロボットによる自動PCR検査システム(以下、本システム)の性能評価、臨床的有効性評価を行うとともに、被検者もしくは被検者の検査を管理する検査機関による検査依頼から、検査結果の報告、フォローアップまでを含めた大規模PCR検査業務設計(以下、PCR検査社会実装)の評価を行い、京都の地域医療と感染対策の強化、国家の感染対策と経済・社会活動の両立に必要なPCR検査の社会実装有用性を評価します。今後、共同研究の検証結果をもとに、COVID-19の臨床検査、クラスター発生地、感染ハイリスク者のスクリーニング、疫学調査、空港検疫や大規模イベント等への迅速な大量検査体制の提供や、感染対策と社会活動の両立が期待されます。
1.背景
2019年に出現したCOVID-19の全世界的流行は、現在も継続しています。日本国内においても2020年1月に感染者が確認されて以降、新規感染者数は下げとどまらず、その間に発生した多くの変異種による感染拡大も始まっています。
COVID-19感染症の診断や治療のためのPCR検査体制は整いつつあるものの、感染対策への有効な取組みを推進する上で必要な、集団リスク・経済リスクの高い無症状陽性者の動向把握のためのPCR検査数は、未だに十分とは言えない状況です。今後、第4波の感染拡大対策や新たなパンデミック対応としても、エッセンシャルワーカー、地域コミュニティ、組織、イベント等、社会が必要とする場所へのPCR検査体制の提供が不可欠です。
2.共同研究の目的と概要
共同研究で使用する本システムは、コンテナを用いた移動式で、1日あたり最大2,500検体の検査をロボットにより完全自動化できるほか、随時検体投入後約80分で迅速に検査を行う能力を有します。
・目的
1) | 行政検査および自費検査目的のPCR検査を機動的かつ大規模に提供するシステムの検査精度、性能、大量処理パフォーマンス評価とともに、被検者もしくは被検者の検査を管理する検査機関による検査依頼から、検査結果の報告とフォローアップを含めた大規模PCR検査の有用性評価を行う。 特に、エッセンシャルワーカーを対象としたPCR検査と、スポーツ大会や芸術等の大規模イベント開催に必要なヘルスケア目的のPCR検査の実現を目指し、PCR検査社会実装の有用性評価を行う。 |
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2) | 京都市の地域医療としての感染対策強化、国家の感染対策と経済・社会活動の両立を果たす行政検査においてもPCR検査社会実装の有用性評価を行う。 |
・概要
1) | 「京大病院と京都市による包括連携協定の締結」※に基づき、行政検査としてこれまで感染研法等の試薬・機器を用いて実施・蓄積されて来たPCR検査保存検体を用いて、本システムと新規承認試薬によるPCR検査の実施を行い、主に臨床的感度・特異度等の臨床的評価を行う。 | |
2) | 行政検査として被検者、行政機関、協力医療機関に対する検査依頼から検査結果の報告とフォローアップを含めたPCR検査社会実装の有用性評価を行う。 | |
3) | 京都大学の学生・教職員を対象としたヘルスケア目的のPCR検査において、検査依頼から検査結果の報告とフォローアップを含めたPCR検査社会実装の有用性評価を行う。 |
3.自動PCR検査システムの特長と概要
1) | 特長 | ||
① | 既定のPCR検査、即ち世界で既に認知されている方法での時間短縮(約80分での検査実現) | ||
② | プール法での大量検査にも対応可能 | ||
③ | ロボットによる無人化/自動化により、大量の検査を高精度に安定して行えるとともに、医師/医療従事者の負担軽減が可能 | ||
④ | 遠隔監視により安全性を確保しつつ運用を簡易化/省人化 | ||
⑤ | 厚生労働省・医師会の推奨手法に沿った手順でのロボットによる大量検査 | ||
⑥ | 省スペース対応(検査システムは40フィートコンテナに収まる) | ||
⑦ | コンテナとして移動も可能なため、様々なイベント等でも活用が可能 |
2) | 概要 | |||
①外 寸 | : | 長さ12.2m 幅2.5m 高さ2.9m (システム本体) | ||
②検査能力 | : | 1日最大2,500検体(16時間稼働の場合) |
【自動PCR検査システムの概要】
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4.経過と今後のスケジュール
2021年4月 5日 | コンテナを京大病院敷地内へ設置・周辺設備調整 | ||
2021年4月 中旬 | コンテナ内ロボット装置始業点検と大量検体連続投入試験を実施中 | ||
2021年4月 下旬 | 本システムの基礎性能評価と保存検体を用いた臨床評価を開始予定 | ||
2021年5月 上旬 | 京都大学の学生、教職員を対象としたPCR自費検査を開始予定 検査結果の報告とフォローアップを含めたPCR検査社会実装の評価を実施予定 |
5.体制
研究代表者 | : | 京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部 教授 長尾美紀 | |
京都大学医学部附属病院クリニカルバイオリソースセンター 特任病院教授 田澤裕光 | |||
研究分担者 | : | 京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部 准教授 松村康史 | |
京都大学医学部附属病院検査部・感染制御部 講師 山本正樹 | |||
共同研究先 | : | 川崎重工業株式会社(東京都港区海岸1丁目14番5号) シスメックス株式会社(兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5番1号) |
※京大病院と京都市による包括連携協定の締結:
2020年11月1日締結 https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/press/20201106.html