シンガポール海事港湾庁の舶用部品向け3Dプリンタ活用プログラムに採択

2020年12月16日

川崎重工を含むコンソーシアム(以下、本コンソーシアム)は、シンガポール海事港湾庁が進める3Dプリンタ活用プログラムに採択されました。

当社は、船舶の安全運航や稼働時間の最大化を実現する取り組みの一つとして、社内公募制度「ビジネスアイディアチャレンジ※」の中で、緊急対応時に必要となる舶用機器のスペアパーツをデジタル化し停泊地にある3Dプリンタで製造することで、入手容易性を向上させる技術の開発に取り組んでいます。

本コンソーシアムは、世界有数の海運企業であるWilhelmsenをリーダーに据え、舶用機器メーカーの川崎重工・WärtsilaHamworthy Pump、船級協会のDNVGL、技術パートナーのthyssenkruppIvaldi GroupTytus3D、そして先進的なエンドユーザーであるOSMGearbulkThome GroupBerge Bulk、Wilhelmsen Ship Management、BW GroupExecutive GroupCarnival MaritimeYinsonで構成されます。

シンガポール海事港湾庁は、3Dプリンタ活用プログラムとして、船舶および船舶部品のデジタル化ならびに積層造形活用を推進しています。このプログラムは、本コンソーシアムを含む計11のコンソーシアムが3Dプリンタで製造した26種類の舶用部品をシンガポール船籍船に搭載してその適応可能性を検証するもので、2022年の第一四半期までに実施される予定です。本コンソーシアムはそのうち10種類の部品を担当します。
なお、このプログラムには、合計1625,000シンガポールドル(約12,500万円)の補助金交付が決定しています。

コンソーシアム主要会社のコメント:

川崎重工は、高品質の舶用機器スペアパーツを3Dプリンタで製造する技術を確立し、スペアパーツの入手容易性を高めることで船舶の安全運航や稼働時間の最大化に貢献したいと考えています。当社は 本コンソーシアムへの参加を通じて積層造形技術の適応可能性の検証を加速していきます。

川崎重工 プロジェクトリーダー 小倉淳史

私たちは、海事産業における積層造形技術の導入の障壁を取り除くために、強力でエンドツーエンドなパートナーのエコシステムを構築できたことを大変嬉しく、誇りに思っています。今回の共同研究とシンガポール海事港湾庁の支援により、コンソーシアムのパートナーと一緒に積層造形の価値を高めていきたいと考えています。

Wilhelmsen Head of Venture 3D Printing ハーコン・エレケア

適切な部品を選べば、積層造形技術が性能やリードタイムの面で明確なメリットをもたらし、より強力な分散型サプライチェーンの構築を可能にします。私たちは、本コンソーシアムに参加できることを 非常に嬉しく思っています。また今回の共同研究は、海事産業の主要な積層造形技術を持つ会社と協力して3Dプリンタ部品の出力・保証・試験・船舶への搭載を行う絶好の機会であると考えています。

Wärtsila Strategic Innovation Manager フセイン・クレシ

Wilhelmsenや他のパートナー企業と協力して、理論から実践へと移し、品質と安全性が確保された方法を用いて3Dプリンタで部品が製造できることを示します。

DNVGL Country Chair Singapore ブリス・ル・ガロ

今の市場は、企業が自社の枠を超えて、考え方やオペレーションに大きなパラダイムシフトを起こすことを求めています。⾦属積層造形を利用したオンデマンド製造に成功した企業は、そういったパラダイムシフトを可能にするでしょう。オンデマンド製造は海事用スペアパーツ市場特有のニーズを満たす完璧なソリューションです。世界有数の海運企業であるWilhelmsenが主導するこのコンソーシアムは、参加企業がアイデアを共有し、海運業界全体の作業を活用できるユニークなプラットフォームを提供します。Tytus3Dは、この素晴らしいコンソーシアムの一員であることを誇りに思い、このチームに付加価値を提供していきたいと考えています。

Tytus3D System Inc CEO ジェラルド・ユン

本取り組みはデジタル転送を海事産業に持ち込んだ重要なマイルストーンになります。これまで、3Dプリンタで重要部品の船級承認を行う際、部品毎に課題が出てきてしまい、非常にコストと時間が かかっていました。重要部品の3Dプリンタでの出力化を各社協力して行うことで、本技術が広く採用されるための障壁を取り除くことを目指しています。

Ivaldi CEO エスペン・シベルツェン

この一年は国境が閉鎖されて、部品のサプライチェーンが分断し、グローバルな製造業にとって激動の年でした。サプライチェーンにレジリエンスを持たせることは、今後何年にもわたって注目されるテーマとなっていくと思います。⾦属積層造形は、このパズルを解決するための重要なピースとなり、このコンソーシアムが解決に向けた第一歩となるでしょう。

thyssenkrupp Innovations Head of Additive Manufacturing ケンリップ・オン

当社は、今回のプログラムへの参加を通じて3Dプリンタを舶用機器スペアパーツの製造に適応することの可能性を検証し、船舶の安全運航や稼働時間の最大化を実現する新たなビジネスモデルの創出に向けた取り組みを進めていきます。

社内公募制度「ビジネスアイディアチャレンジ」
オープンイノベーション活動のさらなる加速や、社内に眠っている事業アイデアの発掘・活用を目的として2020年4月に開始しました。市場環境・顧客ニーズの急速な変化に対応するため、既存の製品・事業にとらわれないアイデアを広く募り、応募者自身や当社の強みを活用するとともに、必要に応じてスタートアップや大手企業など他社との連携も図ることで多様な製品・事業を生み出します。企画と検証を短期間で繰り返す機動的な手法(アジャイル型)により、効率的かつスピーディーに新たな価値を創出します。また、人材育成を目的としてビジネスモデルの創出に必要な財務会計や経営戦略などの教育をビジネスアイデア応募者に対して実施し、企業としての持続的な成長を目指します。

【参考URL

11 Joint Industry Projects Awarded S$1.625 million to Drive Maritime Innovation:
https://www.mpa.gov.sg/web/portal/home/media-centre/news-releases/detail/5ebfc211-3696-4a28-b39e-7749485f6747

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