新形状のLNG運搬船用モス型LNGタンクを開発、3つの承認機関から基本承認を取得

2017年06月05日

20170605_1_im01.png

新形状のモス型LNGタンクを搭載した船体断面図

川崎重工は、新形状のLNG(液化天然ガス)運搬船用モス型LNGタンク※1を開発し、基本承認(AiP : Approval in Principle)を日本海事協会(NK)、アメリカ船級協会(ABS)およびDNV GL※2の3機関より取得しました。世界の主要な船級協会の中でも優れた技術と実績を誇る3社より基本承認を取得したことで、新形状のモス型LNGタンクの信頼性と実現性の高さが証明されました。

近年LNGは、発電用燃料としての需要増加に伴い海上輸送量が増大しており、新パナマ運河を通峡できる船幅制限を保持した上で、大容量化による輸送効率向上のニーズに応えたLNG運搬船の登場が期待されています。

今回基本承認を取得した新形状のモス型LNGタンクは、従来の真球形状のモス型LNGタンクの円形の垂直断面を正方形に近づけるように変形させ、船体とタンクとの隙間を減らすことで、モス型LNGタンクの特長である優れた耐スロッシング(液揺れ)性や建造中・就航後の検査の容易性はそのままに、容積効率の向上を実現しています。

新形状のモス型LNGタンクの主な特長は次のとおりです。

1)
従来の155,000m3型LNG運搬船に搭載されている真球タンクと比較し、タンク幅および長さを変更せず、積載容量を約15%増加させています。これにより総容量180,000m3のLNGを貯蔵し、新パナマ運河も通峡可能なLNG運搬船を実現します。
2)
従来のストレッチ球形タンク※3と比較し、タンクの高さを低く抑えることで、船橋からの視界や船体の復原性(船が傾いた際、元の姿勢に戻ろうとする性質)が向上しています。
3)
従来のモス型LNGタンクと同じIMO 独立タンクtypeB※4に分類され、従来の構造解析をベースに新たに確立した強度評価手法※5を用いた精密な構造解析の実施により、高い信頼性を確保しています。
4)
タンクを構成しているアルミ合金製パネルが球面殻であることから、船体動揺により生じるスロッシングの影響をほとんど受けず、積み付け制限を必要としません。
5)
建造中・就航後の検査が容易であり、高い安全性を有しています。
6)
当社独自技術で世界最高レベルの性能を有する「カワサキパネルシステム」を防熱システムに採用可能であり、ボイルオフガスを低減し、積荷運搬時の損失を抑制します。

当社は今後もより一層、LNGをはじめとする各種液化ガス運搬船の研究・開発に注力し、高い信頼性・安全性や輸送効率を誇る製品を生み出すことで、国内外のエネルギー輸送事業に貢献していきます。

モス型LNGタンク : 船体から独立した球形タンクをスカートと呼ばれる円筒型の構造で支持する方式。
DNV GL : ノルウェーのオスロに本部を置く第三者認証機関で、船級サービスやオイル&ガス分野の技術コンサルティングサービスなどを行う世界有数のサービス・プロバイダー。
ストレッチ球形タンク : 球形タンクの赤道部に円筒部を追加することによりカーゴタンク容積を増やしたタンク。
IMO独立タンクtypeB : IMO(国際海事機関)が定める液化ガス運搬船における貨物タンク種別の一つで、タンク内液の漏洩を防ぐ二次防壁が部分型であるタイプ。
国土交通省からの請負調査「シェールガスの海上輸送体制確立に向けた新形式LNG運搬船の設計強度に係る評価手法の調査」にて、有識者のアドバイスを受けながら強度評価手法を確立しました。

20170605_1_im02.png

設計基本承認(NK) 設計基本承認(ABS) 設計基本承認(DNV GL)