世界初、水エマルジョン燃料を用いた長期実船試験を完了

2015年05月14日

川崎重工は、2011年1月から4年間にわたって川崎汽船株式会社と共同で取り組んできた、水エマルジョン燃料を用いた世界初の長期実船試験を、このたび完了しました。

水エマルジョン燃料とは、燃料中に細かい水粒子が分散して含まれる燃料のことで、エンジンの燃焼室内に噴射されると内包された水粒子が蒸発し、周囲の熱を奪うことにより火炎温度を低下させ、窒素酸化物(NOx)の生成を抑制します。また、燃料噴霧の微細化、および空気導入の増加による燃焼改善により、燃料消費量とCO排出量を削減します。

国際航海に従事する船舶からのNOx排出量については、国際海事機関(IMO)により2016年から3次排出量規制が実施されることになり、舶用ディーゼル機関からのNOx排出量は特定規制海域において1次規制値から80%削減することが義務づけられます。
NOx排出量は、燃料消費量およびCO排出量とトレードオフの関係にあるため、舶用ディーゼル機関単体の設計変更や調整によりNOxを削減すると、燃料消費量とCO排出量は増加することになります。
水エマルジョン燃料は、燃料消費量とCO排出量を増加させずにNOx排出量を削減可能な技術として注目を集めています。当社は、水エマルジョン燃料技術と排気再循環技術などほかのNOx低減技術を組み合わせることで、効率的に3次規制値をクリアすることを目指しています。

当社は、今回の実船試験において、水エマルジョン燃料供給システム搭載の58,000トン型ばら積運搬船を建造し、燃料系統と主機関の一部設計変更に加え、新開発の機器類や各種システムを組み込みました。2011年1月から川崎汽船グループによる運航を行い、NOxを含む排ガス性状や機関性能、長期使用における機関・燃料系統機器の耐久性の確認、乗組員による実運用に取り組みました。2014年に実施した就航3年目のドック時検査では、主機関や水エマルジョン燃料供給システムについて、開放検査や損耗検査などを行い、いずれも正常であることを確認しました。
その後も試験完了まで順調に運航を継続し、4年間にわたる長期の実船試験において、3次排出量規制への対応に向けた性能評価および耐久性の確認を行いました。

今回培った技術は、排気再循環技術と組み合わせた当社独自の環境対応システム「K-ECOS」に適用され、川崎汽船が取り組む次世代環境対応「DRIVE GREEN PROJECT」の一環として建造される大型自動車運搬船(2015年度末引き渡し予定)に搭載されることが決定しています。

当社は、水エマルジョン燃料技術の他にも排出量規制に対応するさまざまな技術開発を進めており、今後も船舶分野における地球環境の保全と改善に貢献していきます。