LNG運搬船「グレースダリア」の引き渡し

2013年09月30日

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川崎重工は、本日、日本郵船株式会社向け177,000m型LNG運搬船「グレースダリア」(当社第1665番船)を引き渡しました。

本船は、モス型としては世界最大船型となる177,000m型LNG運搬船の第2番船となります。本船は、世界の主要なLNGターミナルへ入港できる汎用性と優れた推進性能という従来の当社LNG運搬船の特長を保持したまま、カーゴタンクを大型化することによりLNG積載量を大幅に増加させています。

本船の推進プラントは、LNG運搬船用として当社が開発した再熱サイクルプラント「川崎アドバンストリヒートタービンプラント(川崎URAプラント)」が採用されています。当プラントでは、ボイラで作られた蒸気は高圧タービンを回転させた後に一旦ボイラに戻され、再加熱後に中圧タービンを回転させます。このような再熱サイクルを採用することと、ボイラで作る蒸気を高圧・高温化することで、熱効率を大幅に向上させています。これにより、燃料消費量は従来の蒸気タービン推進プラントと比べて約15%改善します。

本船の引き渡し、主要目ならびに特長は次のとおりです。

 

<引き渡し>

   
2013年9月30日

 

<主要目>


全長
約300 m
 
長さ(垂線間長)
286.50 m

幅(型)
52.00 m

深さ(型)
28.00 m

満載喫水(型)
11.65 m

総トン数
141,671 トン

載貨重量
86,512 トン

貨物タンク容積
177,427 m (-163℃、100%において)

主機関
川崎URA-450型再熱式蒸気タービン機関×1基
連続最大出力29,890キロワット×76回転/分

航海速力
約19.5ノット

定員
63名

船級
日本海事協会(NK)

船籍
日本(東京)

 

<特 長>

 
1)
本船は、4個のモス型球形独立型LNGタンクを持ち、合計で177,427mの貨物タンク容積を有する大型LNG運搬船です。
 
2)
LNGタンクには、当社が独自に開発した川崎パネル方式による防熱システムを採用し、高い防熱効果によりLNGの蒸発率を一日あたり0.1%以下としています。
 
3)
貨物タンク区画は、二重船殻、二重底構造とし、LNGタンクはその内側に配置されているため、万一の船体損傷時でも直接タンクに損傷が及ばないよう安全に保護されています。
 
4)
操舵室は、ネットワーク接続された最新型の航海機器と衛星通信システムを装備し、操船に必要なすべての情報を統合表示することで安全で効率的な操船環境を実現しています。また、操舵室内からの360度の視界を確保するために、全周に窓を配置しています。
 
5)
荷役関係の監視・制御は、船橋下の居住区前面、貨物積込/揚荷区域の見通しが良い位置に設けた荷役制御室で行います。荷役制御室には、統合制御監視装置(IAS)を配置し、荷役関係の監視・制御のほか、機関状態の監視を行えるようになっています。本IASは、開発時にオペレータの経験、意見を数多く取入れて、特にオペレータの操作性に配慮したシステムとしています。
 
6)
本船の主ボイラは、環境対策としてMarine Gas Oil (M.G.O.:低硫黄燃料油)を燃焼させることができます。通常はHeavyFuel Oil (H.F.O.)を燃料油として使用しますが、H.F.O.の配管とM.G.O.の配管を分け、主ボイラ燃焼装置の直前で燃料油を切り替える方式を採用していることにより、短時間かつシンプルな作動で切り替えを可能としています。また、従来通り燃料ガスの使用も可能です。
 
7)
気温-25℃の寒冷地でも貨物輸送を行えるようにするため、Enclosed NavigationBridge Wingの採用、日本海事協会(NK)規則に対応した耐氷仕様の採用、バラストタンク凍結防止用のエアーバブリング装置の設置等、寒冷地環境下での機器類の作動等に支障がないような対策を講じています。
 
8)
バラスト水処理装置を搭載することで海洋の環境保全に寄与し、また、冗長性を持たせた機器構成により信頼性を高めています。
 
9) 
LNG運搬船の乗組員の育成を目的に、教育設備を有する講義室、講師や訓練生20名用の居室を配置しています。