世界初、DC1500Vき電線に直結する鉄道システム用地上蓄電設備の実証試験に成功

2011年01月18日

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川崎重工は、東京急行電鉄株式会社の田園都市線において、自社開発の鉄道システム用地上蓄電設備(BPS:Battery Power System)の実証試験に成功しました。回生失効の抑制、省エネとCO2削減、架線電圧安定化の効果の確認を目的に、東京急行電鉄株式会社、東急テクノシステム株式会社、富士電機システムズ株式会社の協力のもと試験を実施し、一般的な鉄道用電圧であるDC1500Vき電線に直結する鉄道システムでは、世界で初めてこれらの効果が期待できることを実証しました。

当社が開発したBPSは自社開発の大型ニッケル水素電池「ギガセル®※1を用いて、架線に電池を直結することにより、高圧チョッパ制御装置などが不要であることが最大の特長です。制御装置を使用しないため低コスト化、小型化を実現し、制御遅れや制御損失がなく、信号設備などに対して誘導障害を及ぼさないことも大きな特長です。今回の実証試験では、東急電鉄田園都市線つきみ野変電所にBPSを設置し、昨年8月より運用しており、回生失効の抑制、省エネ、CO2削減、架線電圧の安定化などの効果を確認しています。

今回の計測データに基づく試算では、省エネ量は、約1,600MWh/年、CO2換算では約669t-CO2/年※2の削減効果が期待できます。また、今回の試験では中央林間駅での最大電圧を62V低減、最小電圧を23V上昇させることができ、電圧補償効果について確認するとともに、BPS運用時間中は回生ブレーキの失効を抑止できることを確認し、さらに変電所受電電力量削減や、変電所機能代替効果(変電所の整流器を停止させた状態での車両走行)、空気ブレーキ使用頻度削減によるブレーキメンテナンスの削減の効果についても期待できることが分かりました。

当社は本実証試験の成功を足がかりに、DC1500V路線へのBPSの販売・普及に取組んでいきます。また、当社は「ギガセル」をBPSはもとより、自然エネルギーの大量導入を可能とする系統安定化技術(スマートグリッド)及びスマートコミュニティへも適用拡大を図り、今後も一層、低炭素社会の実現に貢献していきます。

□今回の実証試験に使用した鉄道システム用地上蓄電設備の概要
蓄電池
ニッケル水素電池「ギガセル®
積層数:30セル積層
公称電圧:36V
定格容量:150Ah
(圧力安全弁、電池監視装置、強制冷却ファン付)
バンク仕様
空調装置付キュービクル
モジュール数:39モジュール
電圧:1500V
電力量:210kWh
外形寸法:4.5m(W)×2.2m(D)×3.5m(H)
重量:14.8トン
システム
接続:2バンク並列、架線蓄電池直結式
電圧:1500V
容量:300Ah
電力量:420kWh
安全保護装置
直流高速度遮断器(正負両極)など

※1 「ギガセル」は川崎重工の登録商標です。
※2 算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧(H22/3改定)東京電力㈱0.000418t-CO2/kWhで算出しました。