先端材料技術協会SAMPE Japan主催「2023年度先端材料技術協会賞」において「製品・技術賞」を受賞
2024年10月25日
川崎重工が開発した「H3ロケット衛星フェアリング CFRP面板/ハニカムコアサンドイッチ構造構体の成形技術」が、2024年9月に一般社団法人先端材料技術協会(SAMPE Japan)主催の「2023年度先端材料技術協会賞」において「製品・技術賞」を受賞しました。
SAMPE Japanは、米国にあるSAMPE本部(SAMPE Global)の日本支部で、材料とその加工・応用に関する技術を中心として、研究・開発、生産、利用ならびに教育に関する情報を収集、交換、討議、見学するなどの場を提供している組織です。
当社は、1993年に納入したH-Ⅱロケット用衛星フェアリングを皮切りに、最新のH3ロケットに至るまで各種衛星フェアリングの開発・製造に携ってきました。今回、独創的な発想に基づいて創出した新技術により、極めて優れた新製品の開発に成功したことが評価され、受賞に至りました。
受賞内容は次の通りです。
1.「製品・技術賞」受賞内容:
「H3ロケット衛星フェアリング CFRP面板/ハニカムコアサンドイッチ構造構体の成形技術」
2.製品・技術概要:
H3ロケット衛星フェアリングでは、先端がなだらかな曲面を描くことで空気抵抗を少なくするオジャイブ形状のフェアリング先端部を実現すべく、3次元曲面成形したアルミハニカムコアの上に、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の細幅スリットテープをAFP(Auto Fiber Placement、自動積層機)で高精度に積層する最先端の積層方法を採用しました。従来、作業員の手で行っていた作業に対して、当社が民間航空機の胴体製造で培ったAFPの積層技術を応用することで、素材同士の密着が難しい曲面形状の製造おいてもりより高い精度ならびに高強度を実現しました。その際、AFPにCFRPを適用するため、国内材料メーカーとの協力を得ることで積層性に優れた材料を開発することができました。
さらに、異なるフェアリングパネル同士を、CFRPで作った板と接着剤で結合する「OoA(Out of Autoclave、脱オートクレーブ)」成形・接着技術も開発しました。従来、ボルトやナットで結合していた部分にも当社がCFRPを用いた航空機部品の製造で培った技術を活用することで、軽量化を実現しました。
このように、構造体へのCFRPの適用の大幅な増加や、柔軟で信頼性が高く、かつコスト削減効果が大きい新技術を開発しました。
本技術により、フェアリング構造体における国内材料メーカーの協力を得て開発した新規国産CFRPの適用範囲を拡大することが可能となり、ロケットの重量軽減や自動化により製造時間の短縮によるコスト削減効果に貢献します。
今後も当社は、これまでの実績に基づく技術力の向上を推進し、国産ロケット開発ならびに宇宙空間を活用した社会発展に積極的に貢献していきます。
【ご参考】
H3ロケット 衛星フェアリング(JAXAデジタルアーカイブス)