ヘリコプターの心臓部を支える。
安全を極める試験設備刷新プロジェクト
ヘリコプターの飛行を支えているのは、エンジンの動力を正確に回転翼へ伝達するトランスミッション(変速機)です。本プロジェクトは、そのトランスミッションを機体搭載前に実負荷で試験する「テストスタンド」を刷新する取り組みでした。2016年に構想が始まり、2019年に工事着手。10年以上続く長期プロジェクトとして進行しました。
老朽化した30年以上前の設備を、最新の安全基準へ適合させる。それは単なる更新ではなく、設計思想そのものを再構築する挑戦でした。
0130年を超える設備を再構築する「リバースエンジニアリング」
旧設備の図面は紙媒体のみ。しかも、それが最終図面かどうかも判別できない状態でした。そこで現地調査を重ね、現物と図面を照合。さらに実機を測定し、図面との整合性を一つひとつ確認する作業を積み重ねました。
過去の技術を正確に読み解き、未来の基準へ昇華させる。そのために、機械・電気・制御の各分野が連携し、設計をゼロから再構築しました。
02安全性を飛躍的に向上させる設備刷新
最新基準への適合にあたり、安全対策を全面的に強化しました。
- 試験中の試験室扉施錠機能の追加
- 誤操作防止のためのインターロック機構の導入
さらに、建屋設計が先行していたことで有効面積が縮小するという制約の中、機器配置を再設計。不安定姿勢での作業が発生しない構造へ見直し、安全と作業効率を両立させました。
その結果、「不安全作業がなくなり、安心して作業ができる」と高い評価をいただいています。
03信頼性と操作性を高める設備改良
空調設備を水冷式から空冷式へ、駆動モータを直流(DC)モータ(サイリスタ制御)から交流(AC)モータ(高圧インバータ制御)へ更新する等、設備全体の信頼性とメンテナンス性を向上させました。また、トランスミッションのセッティング時にその場で確認できるタッチパネルを導入。既設設備との共通性を保ちながら、操作性と視認性を両立した新しい操作環境を構築しました。
04高精度を実現する芯出しと動力循環システム
本設備は、多数の回転機器で構成される動力循環方式の試験装置です。
各機器は相互に影響し合うため、芯出し作業は極めて困難でした。大型機器同士の位置を何度も調整し、干渉を避けながら目標値へ追い込む。精度確保には多大な時間と労力を要しました。
試験運転時には潤滑油温度が安定しない事象が発生。さらには、振動、排気温度上昇といった課題も生じましたが、現地機材を活用した配管ルートの見直し、解析技術を用いた振動対策位置の選定、関係部門との連携による原因特定等、仮説と検証を繰り返しながら一つずつ解決へ導き、最終的に安定運転を無事実現しました。
05状態監視と操作性の高度化
旧設備では限定的だった振動計測を、設備側で常時計測できる状態監視システムへ刷新。異常の早期検知と予防保全を可能にしました。
また、既設システムとの共通性を保ちながら、計測モニター付き操作盤の設計を見直しました。操作性と視認性を両立させるレイアウトとし、機能の統合・整理を行うことで、運転員が直感的に操作できる構成を実現しています。
当社は、プログラム設計から監視操作盤の構築まで一貫して対応できる技術基盤を有しており、ご要望の反映から製作までをスムーズに実現。これまで培ってきた経験と提案力を活かし、制御と計測を統合した高い操作性を実現しました。
06未来の安全を支える、総合エンジニアリング力
本プロジェクトには、社内約20名、現地工事でも約20名が参画。川崎重工業の関係部門、関連会社も複数社が関わり、社外協業メーカー複数社とも密に連携しました。
更新後も、機体運用が続く限り保守点検を担う、継続性のある重要設備です。設計から施工管理、検定・検査までを一貫して担う体制のもと、長期にわたり安全と信頼性を支える責任ある仕事として、私たちはこの設備を完成させました。
ヘリコプターの飛行を、地上から支える。その確かな技術が、空の安全へとつながっています。