新型乾式クリンカ処理システム(KACE®)の販売開始について

2023年12月22日

川崎重工は、火力発電所向け灰処理設備であるクリンカ※1処理設備に関する研究開発を行ってきましたが、このほど新型乾式クリンカ処理システム「KACE®」(ケイエース、Kawasaki Ash Cooling/Conveying Extractor)の販売を開始しました。

これまでも当社は火力発電所向けに乾式クリンカ処理設備を納入してきましたが、従来、当社が導入している乾式システムは、ボイラ下部より排出されるすべてのサイズのクリンカをボイラ下部に設置したコンベヤで搬送しますが、発生頻度の低い大塊クリンカにも対応するため、コンベヤが大型となる傾向がありました。

そこで当社は、画期的な方法として大塊クリンカをボイラ下部に設置した分別装置(グリズリー)で分離できる新システム「KACE®」を開発しました。当システムは、大型クリンカを専用ゲートを介して専用箱に回収し、グリズリーを通過した小型クリンカだけをコンベヤで下流側に搬送することで、コンベヤの小型化を実現しました。

KACE® 概要
KACE® 概要

本システムでは、設備面や運用面で以下のメリットがあります。

  • コンベヤの小型化によりトータル設備コストの低減を図ることができる
  • コンベヤの小型化により配置レイアウト上の制約が少なくなる

一方、従来乾式でのメリットであった、

  • ボイラ下部での熱回収(クリンカ顕熱※2・燃焼熱、輻射熱※3等の回収)
  • 乾灰排出による灰処分費用の削減・有効利用性の拡大

などは変わらず享受できるなど、メリットの多いシステムとなります。

当社では、当社納入の湿式クリンカ処理設備をKACE®に転換した設備にて、2021年~2023年にかけて延べ1年間の実証運転を行い、計画通りの機能・利点や耐久性を有していることを確認しました。なお、実証運転後も本設備は継続使用される予定です。

KACE<sup>®</sup> 全体モデル(大塊ゲート側)
KACE® 全体モデル(大塊ゲート側)
KACE® 全体モデル(グリズリー・コンベヤ側)
KACE® 全体モデル(グリズリー・コンベヤ側)

今後火力発電では、CN対策としてバイオマス燃料の割合が増加し、クリンカの割合も増加すると予想されます。KACE®などの乾式システムは、バイオマスの燃焼促進やクリンカの再利用にも有利であり、今後、既存設備の湿式から乾式への転換需要も高まるものと予想されます。

当社では今後、従来乾式に続き、KACE®の利点を生かせる設備導入や、湿式設備からの乾式設備への改造提案を行っていきます。

  • ※1 クリンカ:火力発電所の燃料である石炭等が燃焼した後に発生する焼却灰。「ボトムアッシュ」または「炉底燃焼灰」などとも呼ぶ。
  • ※2 顕熱:物質の状態を変えずに、温度を変化させるために費やされる熱量。
  • ※3 輻射熱:電磁波の形で物体から物体へ直接伝えられる熱。