中速船(LPG船等)の推進性能を高める新船型を開発

2002年05月29日


 

「新型LPG船(SEA-ARROW)」
 
「従来型LPG船」

 川崎重工は、このたび、船型開発技術力と豊富な建造実績をもとに、LPG船に代表される中速船に最適な船首形状を開発しました。本船首は、LPG船等中速船が航走する際に造る船首波を減少させ推進性能を大幅に向上させるもので、従来の船首バルブの突出をなくした特徴的な形状から、SEA-ARROW("Sharp Entrance Angle bow as an ARROW")船型と名付けています。

 LPG船は、LPG(液化石油ガス)の輸送能力を高めるため、箱型のLPGタンクを船体前方まで配置する必要があります。しかし一方では、港湾内の入港制限により船の全長は制限されています。 このような制約から、従来型のLPG船では船首の形状が比較的太く、さらに船速もタンカーやバルクキャリアと比較して速いため、航走中に大きな波が船首端より発生し、この船首波が船の前進に大きな抵抗となり、推進性能の低下を招いています。

 そのため当社では、LPG船特有の制約条件の中で船首波を極限まで減少させ、推進性能をさらに向上させる研究開発を行い、船首バルブの効果を残したままバルブの突出をなくしたSEA-ARROW船型を開発しました(特許出願中)。
 このSEA-ARROW船型は船首波による抵抗を半減できるため、従来型と同一船速では主機馬力を6―10%減少、従来型と同一馬力では船速を0。3―0。5ノット増加させることに成功しました。その結果、運航時における大幅な燃料費の削減や運航スケジュールの短縮が可能となります。

 SEA-ARROW船型の優れた推進性能はすでに船主の高い評価を得ており、本船型は現在建造中であるKumiai Navigation社向けの80、000m3型LPG船およびSolvang社とBergesen社向けの59、200m3型LPG/NH船への採用が決定しています。また、今後も当社受注の大型LPG船に採用される予定です。

 当社は、LPG船建造の分野において、35、000m3多目的LPG船から世界最大級の84、000 m3LPG船までの幅広い船型を開発し、これまで28隻の建造実績を有しています。 LNG(液化天然ガス)船の分野でも、2、500m3の内航LNG船から145、000m3LNG船まで建造を手掛けており、今回の新船型の開発は、液化ガス船の分野における当社の卓越した船型開発技術力と建造技術力に基づくものです。 今後とも、当社は、クリーンエネルギーとして需要増加が予想される各種ガスキャリアの建造に、積極的に取り組んでいきます。

中速船:VLCCに代表される低速肥大船とコンテナ船などの高速痩せ型船との中間に位置する、船速と輸送能力を併せ持った船。ガスキャリアや冷凍貨物船、小型多目的船など。