オフショア船や特殊船等の推進システムに用いる3メガワット超電導モータを開発 -世界最高性能を達成-

2013年05月29日

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3メガワット超電導モータの製品プロト機

超電導モータ推進船(イメージ図)

川崎重工は、オフショア船※1や特殊船、そして一般商船の推進システムとして、省エネルギー化や小型化が実現できる超電導モータの開発を進めています。
このほど、当社の神戸工場(兵庫県神戸市)において、数千トン級の中型の船舶に搭載するプロト機の性能試験を実施し、定格の3メガワットの出力を確認し、世界最高の出力密度※2を達成しました。この超電導モータの利用により船舶の推進に関して約20%の燃料低減が可能となります。

1.今回の成果について

オフショア船や砕氷船等の特殊船には、高い機動性と高出力性能が要求されており、電気推進システムの導入が進んでいます。また、これに加えてより経済性の高い運用のためにより省エネ化が実現できる超電導モータを用いた電気推進システムが注目されています。
超電導とは、物質の温度を超低温まで冷却したときに電気抵抗がゼロになる現象であり、様々な装置の高効率化に寄与します。また、細い超電導線材に大電流を流すことができるため、コイルの巻き線に用いればコンパクトで強力な磁石となります。
当社は、超電導コイルをモータの回転部へ配置し、その中に極低温ガスを流して冷却する方式を用いることで、従来のモータ比で半分の大きさに小型化した3メガワットの超電導モータのプロト機を製作しました。
今回、性能試験を行ったところ、当社が2010年度に1メガワット試作機で実現した国内最高出力を更新する3メガワットの定格出力が得られ、このクラスで世界最高の出力密度を達成しました。また、設計どおりの非常に高いモータ効率※398%も得ました。
一般のディーゼル船の推進機を今回開発した超電導モータを組み込んだ推進システムに置き換えた場合、消費電力の低減に加え、小型化により配置自由度が増加することから、より水の抵抗の少ない船型への改良が可能となるなど、超電導モータの利用により約20%の燃料低減が可能となります。
将来の液体水素の輸送船に適用した場合は、輸送中に気化したガスを超電導モータの冷却に有効活用でき、さらに効率の高い推進システムの実現が可能となります。

2.今後について

当社は超電導モータを陸上での耐久試験や実海域での実船搭載試験を経て、オフショア船や特殊船等の推進システムに用いるモータとして製品化していきます。
また、超電導モータの技術と当社製品の舶用機関等で培った技術を組み合せることで、液体水素の輸送船向け等の先進的かつ最適な舶用推進システムを提供していく予定です。
将来的には工場等で使用されている発電機や駆動装置へ適用することにより、高効率でCO削減が可能な製品群を創出していきます。

なお、本開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの助成事業として、2010年7月から住友電気工業株式会社、国立大学法人東京海洋大学、独立行政法人海上技術安全研究所と協力して実施してきたものです。

※1 オフショア船
陸から離れた沖合でOIL&GAS開発等に用いる作業船や輸送船
※2 出力密度
モータ単位体積あたりの出力
※3 モータ効率
入力された電気エネルギーに対する機械出力エネルギーの比率