卓越した技能者表彰(現代の名工)受賞

2006年12月06日

2006年11月20日東京都港区の明治記念館にて平成18年度「現代の名工(卓越した技能者)」表彰式が行われ、神戸工場工作部船殻課の石田順一さん(57歳)が受賞しました。


【石田さんの技能功績の概要】

1. 罫書工としての技能

罫書(けがき)とは、ブロック据付位置や部材取付の基準線を現場で、製品や建造船台床面に直接書込む作業であり、その出来映えが船体の最終精度を決定します。罫書作業は、十数メートルの直交線を寸分の狂いもなく罫書く基本技能に始まり、複雑な曲面を有する船体の外板に投影直線を書き写すといった高度な技能に加え、現場で発生した累積誤差を先に予想して修正する高度な判断能力を必要とします。通常は、10年程度の修練が必要ですが、石田さんは配属数年で頭角を表し、10年目には、正確さ、速さ、判断の的確さにおいて工場一の技能を誇るに至りました。

2. 船体精度ならびに施工法の体系的管理に関する技能

石田さんは、罫書作業に従事する傍らで、船体の収縮や変形量をこまめに計測し、膨大なデータを蓄積しました。そこで、蓄積したデータを統計的に分析する専門的手法を独学で習得し、その成果をフィードバックすることにより、精度管理データの生産現場における精度を飛躍的に向上させることに成功しました。
一方、計画された精度レベルが現場で再現されない原因が施工法のバラツキに起因することに着目し「施工法の手順書化」に着手し、現場で直接作業する者のみが知る「匠の技」を暗黙知の世界から引き出すことに成功しました。
以上に示す高度な技能は、「鋼の挙動を肌で知る」の境地に至った者のみが有するもので、統計的分析手法による裏付けにより、他の追随を許さないレベルに到達しています。


【卓越した技能者(現代の名工)表彰とは?】

同表彰は、厚生労働省の主催により、「我が国の最高水準にある現役の優れた技能者を表彰することにより、広く社会一般に技能尊重の気風を浸透させ、もって技能者の地位及び技能水準の向上を図るとともに、青少年に夢と誇りをもって技能労働者となり、その職業に精進する気運を高める」との主旨で設立されました。昭和42年度に第1回の表彰が行われて以来、今年度は発足40周年に当り、記念行事が執り行われる中での石田さんの受賞となりました。

川崎造船での近年における受賞実績は以下のとおりです。(所属はいずれも受賞時)

平成16年度 鈴木 諭さん (坂出工場艤装工作部船装課)
平成14年度 葛原 幸一さん (川重坂出サービス(株)出向)
平成11年度 上林 實さん (神戸工場工作部船殻課)
平成9年度 長野 百合夫さん (神戸工場工作部艦艇課)
平成8年度 井下 勝さん (坂出工場工作部船殻課)
平成7年度 杉本 昌喜さん (神戸工場工作部艦艇課)
平成5年度 坂本 憲正さん (坂出工場工作部外業課)