Apr. 2017

Techno Box 01

電油ハイブリッドシステムカワサキ エコサーボ

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産業機械を動かす「小さな力持ち」

さまざまな産業機械を動かす機構として活躍する油圧機器。小さな駆動力で大きな力を出せる「出力密度」の高さが特徴だが、モータの力だけで機械を動かす電動タイプに比べて細かく制御できない難があった。「電動タイプの制御のしやすさと油圧の大きな力」の両方を実現したのが、川崎重工の「電油ハイブリッドシステム カワサキ エコサーボ」だ。
 モータが回転し、一定量の油を吐出し続ける従来型の油圧ポンプと違い、エコサーボは、油圧ポンプの動力源となるモータの回転数を、機械の動作に応じて細かく制御することで、油圧ポンプからの油の吐出量を制御する。
 モータ制御とそれに伴う油圧回路の簡素化で、まず電力量を6~8割削減。回路上の各種制御弁が減って機構がシンプルになり、

油の発熱量が少ないので油タンクを小型化。さらにメンテナンスも容易になるなど多くの派生メリットも生み出した。設置面積を3分の1、作動油量を20分の1にも低減したケースもある。
 エコサーボの初号機が発売されたのは1999年。それまではモータを制御する発想はなく、エコサーボはまさに革新的なシステムだった。現在は定格圧力が32MPa、最大ポンプ容量500㎤という他社にはない高圧・大容量タイプを揃えるまでに進化している。
 エコサーボは大型プレス機や射出成形機などの産業機械の他に、高速道路トンネルの換気装置の可変翼調整やクリーニングでの脱水プレス機など、私たちの身近な所でも大切な働きを続けている。

01可変容量機構

押しのけ容積を大小2段に切り換える機構。高圧時に容積を小さくすることで、必要なトルクを低減し、組み合わせるモータの容量最小化を実現できる。

02弁板

両回転仕様に対応した高効率で優れた吸入特性の弁板。低回転圧力制御時の圧力脈動を大幅に改善。制御性能向上、低騒音化を実現した。

03吸入弁

クローズ回路用には戻り流量不足を補う、自吸能力に優れた吸入弁を内蔵。他社にない当社独自の機能。

カワサキ エコサーボは油圧と電動のいいとこ取り

油圧システムが持つ出力密度の高さと電動機器の制御のしやすさをハイブリッド化。従来システムではモータは常に回転しており、工作機械などが作業をしていないときでも電力を消費していた。しかしエコサーボでは、モータの回転数を制御して必要なときに必要なだけポンプを回すので消費電力は大幅ダウンする。最大80%の削減を実現した事例もある。

システムポンプ+モータ+制御装置独自機構で低騒音も実現

システムはポンプとモータ、制御装置で構成。制御装置は、各種のセンサーと共に、高精度で省エネ、高応答、そして低騒音を実現する。油圧ポンプと電動機の組み合わせに高剛性の構造体(ブラケット)と弾性支持体を採用し、ポンプからの振動伝搬を低減。電動機を必要最低限の回転数に制御することで運転騒音を低減している。

Kawasakiの技!

とにかくフレキシブル!既存システムへの応用も

エコサーボの大きな特徴の一つがシステム構築の柔軟さ。戻り油がタンクに戻る「オープン回路」、戻り油がポンプに戻る「クローズ回路」、また制御性能に優れた「サーボモータドライブ」、コストパフォーマンスのよい「インバータモータドライブ」など、さまざまな事情に対応した油圧システムを構築できる。最適な油圧回路、コンパクトなユニット構造、高度な制御技術の3つの“オーダーメイド提案”を通じて最高のパフォーマンスを提供する。

解説

川崎重工業株式会社
精密機械カンパニー 技術本部
システム技術部 産業装置課
小川 恭右
Kawasaki NewsKawasaki Heavy Industries Quarterly Newsletter
川崎重工グループの和文PR誌として、多彩な製品群が陸・海・空に亘る各分野で活躍する姿と、新製品・新技術の一端をご紹介しています。

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