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Apr. 2017

「ごみ=エネルギー」の最先端へ神戸市環境局 港島クリーンセンター
(第11次クリーンセンター)

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もはや、ごみ焼却施設は、ごみを焼却処理するだけの施設ではなく、
ごみを再生可能資源として活用するエネルギー拠点へと変貌している。
その進化を後押ししているのが、より効率的な焼却・発電と
環境負荷の低減を実現した川崎重工の「カワサキ・アドバンストストーカシステム」だ。

  • 廣石 晃久基幹職
    プラント・環境カンパニー
    環境プラント総括部 環境プラント部
    プロジェクト一課
  • 橋元 篤志基幹職
    プラント・環境カンパニー
    環境プラント総括部 環境プラント部
    装置技術課
  • 市江 和彦担当課長
    プラント・環境カンパニー
    環境プラント営業部
    西部営業課

エネルギー拠点のメリットを
1つでも多く市民に還元する

施設の全容が見えてきたとき、誰もが電子部品か精密機器の工場だと思っていた。白い建物の前面は外壁と躯体が格子模様をなし、おしゃれなデスクトップパソコンを横にしたようにも見える。「テクノディスプレイ」と名付けられた意匠だ。周囲は木々で囲まれ、2つの公園も併設されている。ごみ収集車の出入りを見て、初めてごみ焼却施設だと気づかされるのである。
神戸市のポートアイランド南東部で建設が進められていた「港島クリーンセンター」が、2017年4月1日から本格稼働を始めた。このプロジェクトで川崎重工は、ごみ処理プラント工事と稼働後20年間のメンテンナンス業務を受注した。
当施設は、毎日200tのごみを燃やす焼却炉3炉(計600t/日)や、5時間で20tの木質系ごみを破砕する施設、同じく5時間で40tのびん・缶・ペットボトルを積み替えるリサイクル施設などから成り立っている。
ごみを燃やした熱で蒸気をつくり、タービンを回して最大15,200kWの電力も生み出す。その発電効率は20・8%で、全国のごみ発電設備の平均値12・8%を大きく上回るトップクラスの能力だ。当施設が消費する電力は1,000kWほどで、余剰分は売電される。それは神戸市長田区の約50,000世帯の電力消費量に相当する。災害発生時のエネルギー供給源として機能させるためにガスタービンの発電施設も備えている。

川崎重工のプロジェクトマネージャーである廣石晃久基幹職は、「港島クリーンセンターの建設で川崎重工は3つのコンセプトを掲げました。1つ目は、地域に貢献して市民が自由に訪れたくなる施設です。2つ目は、環境に配慮した安全・安心な施設です。そして3つ目は、経済性が高く、安定・継続したごみ処理ができる施設です」と語る。
テクノディスプレイの意匠開発や公園の併設、さらに社会科見学の学習効果を高めるための事前の建物設計などは市民に開かれた施設をめざすものだ。最新の焼却炉や排ガス処理プロセスの導入は、安全と安心につながり、各種の構造部品の強化や長寿命化、効率性の高い発電、焼却の自動制御などで経済性を高める。20年間のメンテナンス費用は同規模の施設に比べ15億円も削減された。
「キーワードは『安定』です。ごみを安定して燃やし続け、安定した熱と蒸気を得て、安定した電力を生み出す。環境負荷も少ない。多くのメリットが市民に還元されます」(廣石基幹職)。エネルギー拠点としてのごみ焼却施設の高度化を支えているのが、「カワサキ・アドバンストストーカシステム」で、それは川崎重工の総合力そのものである。

ごみピットに集められたごみ。クレーンに吊り下げられた巨大な爪で撹拌や投入の作業を行う。奥に見える四角い穴が焼却炉への投入口。
焼却炉の内部。奥側からごみが燃えて手前側に進む。底にレンガのように見えるのが「火格子」で内部には冷却用の水管が走り長寿命化を図っている。火格子の一部は、前後運動してごみを前に送り出す。

少ない空気で
いかに完全燃焼させるか

カワサキ・アドバンストストーカシステムは4つの基本コンセプトで開発された。つまり、①少ない空気で完全燃焼を実現する「低空気比高温完全燃焼」、②熱回収効率の向上、③焼却灰と排ガスのクリーン化、④運転の安定化、だ。
ごみがどのように焼却されていくかをまず見てみよう。施設内のごみピットにためられたごみは、焼却炉の投入口から「ストーカ式並行流焼却炉」に入り、乾燥・燃焼・後燃焼の順で3時間で灰になる。一方、燃焼の熱エネルギーをボイラで高温・高圧の蒸気に変え、蒸気でタービンを回して発電する。排ガスは、集塵器や低温触媒脱硝装置を経てクリーンな排ガスになる。
「ストーカ式並行流焼却炉」は、システムの中核部分だ。ストーカ(stoker)とは「蒸気の釜に石炭をくべる人」の意で、石炭のようにごみを次から次へと炉に投入して燃やすストーカ式は、現在のごみ焼却炉の主流だ。しかし多くのストーカ炉が炉の中央部分でごみを燃やし、垂直に熱や排ガスを導くのに対して、並行流焼却炉は方式が異なっている。階段状になっている炉のごみの送り方向と並行に仕切り天井を設け、燃焼ガスを強制的に反転させることにより燃焼ガスの撹拌を大きくしているのだ。さらに集塵器を経た排ガスの一部を炉内に戻している。

この構造について開発と設計を担っている橋元篤志基幹職は、「いかに少ない空気で安定的に燃やし、かつ完全燃焼させるかという課題に応えるものです。空気を増やして燃やすのは簡単ですが、その分排ガスが増えてロスが生じるからです。」と言う。
「並行流焼却炉は、燃焼ガスがごみと並行して流れる構造なので、従来は灰に残っていた未燃分まで完全に燃やしきります。次に燃焼ガスが再燃焼域へと反転する所で、空気と排ガスを強制的に混ぜ合わせて高温を維持し、排ガス中の未燃ガスも完全に燃やします。その結果、ダイオキシンや一酸化炭素の排出量が抑えられ、排ガス処理装置の小型化にもつなげられるのです」(橋元基幹職)。

並行流焼却炉の概念

もう一つの技術革新が、「燃え方にブレを出さない」の実現だ。ストーカ式はヨーロッパから導入された技術だったが、ヨーロッパと日本ではごみの質が異なっていた。日本のごみは水分が多く燃えにくいのである。そこで燃え方にブレを出さない技術改良が続いた。並行流焼却炉も成果の1つだが、川崎重工はAI(人工知能)をベースに燃焼状態と蒸気量の発生を同時に制御する「Smart―ACC(自動燃焼制御)」を確立した。
当施設にもSmart―ACCは導入されている。燃焼状態や蒸気の発生量などを総合的に検知して、どのような状態のときにごみをどれぐらい炉に投入するか、また空気や排気ガスをどれぐらい投入するかを自動で判断し、かつ作業も自動で行っている。橋元基幹職によれば、「Smart―ACCは、ごみ焼却ノウハウの塊だ」と言う。

高圧・高温のボイラは、安定発電の基盤となる。
焼却炉内に投入されたごみは850〜1,050℃の炎で燃焼される

安定して完全に
燃えるためのエコシステム

ごみが、ブレがなく安定的に高温で燃え続けることで多くのメリットが生み出される。熱回収率が向上し、それによって発電効率も向上するのである。システムでは4Mpaで400℃の高圧・高温ボイラを採用してタービンを回している。
ごみが安定して燃えているので蒸気の発生も安定し、〝質のよい蒸気”が得られる。質のよい蒸気が安定的に得られると、タービンによる発電も安定する。電力会社は、発電量に波がない〝質のよい電力”を供給できるかを最も重視するので、売電でも有利になる。

安定稼働する設備のメリットをさらに後押しするのが、構造部品の長寿命化だ。例えばボイラでは、加熱される管に工夫がある。「過熱器の管には腐食を防ぐために川崎重工独自の『肉盛施工』という耐食性能の極めて高い金属を管表面に溶接肉盛しています。」(橋元基幹職)。通常は10年ほどで交換が必要だが、肉盛加工では30年以上使える。焼却施設そのものの更新が30年ぐらいがめどなので、ほぼ交換の必要がない。メンテナンス費用を15億円も削減できたのは、カワサキ・アドバンストストーカシステムが、まさに1つのエコシステム(生態系)として構築されているからだった。

「神戸市環境局 港島クリーンセンター」の中央制御室

プラントの総合技術力で
ごみ焼却施設をプロフィットセンターへ

神戸市は、第1号となるごみ焼却施設を1963年に稼働させている。これは国内では最も早い時期の稼働だ。当施設は、同市にとっては11次、つまり11件目のごみ焼却施設の建設だった。それだけごみ焼却について多くの経験と、技術を評価する知見を持っている。
営業の市江和彦担当課長は、「ごみ焼却施設が、地域のエネルギーネットワークの中心となり、かつ大都市では複数の焼却施設を抱えることで安定的な電力供給事業者になろうとしている現状に、プラント事業者は的確な提案力が求められています」と語る。
川崎重工は、1964年に愛知県一宮市に第1号のごみ焼却施設を納入。80年に、4,000kWの大型発電施設を併設する京都市東部クリーンセンターを受注して以来、「エネルギー拠点としてのごみ焼却プラント」というシステムのあり方を追究してきた。その努力は、ごみ焼却量1,500t、発電量27,000kWで国内最大級の施設である名古屋市・南陽工場に結実する(96年)。

ごみピットへの投入風景。1日200〜300台ほどの収集車がごみを運んでくる。

「川崎重工は、各種のプラントを手掛けてきた実績からごみ焼却施設でも発電、環境負荷の低減など、総合的なシステム提案ができます。リサイクルやリユースの浸透により排出されるごみの量は減り、だからこそ地方自治体はごみ焼却施設をコストセンターではなく、プロフィットセンターに転換させようとしています。このニーズに応える社会的な意義は極めて大きいのです」(市江担当課長)。
時代が進むにつれ、エネルギーセンターとしてのごみ焼却施設への期待が強まるほど、カワサキ・アドバンストストーカシステムに結集している川崎重工の総合力への期待も高まっている。

For the Tomorrow

日本のごみ問題と川崎重工

生活者の意識の高まりによる減量化やリサイクル、リユースの拡大、ごみを減らした製品開発などにより日本国内のごみ排出量は年々減少している。それに伴いごみ焼却施設の数も減少しているが、一方で、大型化や発電設備の併設などが進んでいる。ごみ焼却施設での総発電量は年々増加し、発電効率も向上してきた。こうしたなかで川崎重工は、1日の処理量が300tを超える大規模施設を中心に焼却プラントを納入しており、名古屋市の南陽工場は1日1,500tものごみを焼却。手掛けた78施設(建設中を含む)の総処理量は約18,400t、発電能力は約500MWにもなっている。

川崎重工が手掛けた大規模ごみ焼却施設
出典:環境省『日本の廃棄物処理平成26年度版』 川崎重工
日本のごみの総排出量
ごみ焼却施設の総発電能力(MW)と発電効率(%)

Leader’s Voice

By 村田 英彰 Hideaki Murata

川崎重工業株式会社 プラント・環境カンパニー
環境プラント総括部 総括部長

日本の先進技術を、グローバルアジェンダの解消につなげる

日本では、高度成長期が始まった1960年代当初からごみ焼却施設が造られるようになり、設備はおよそ30年で更新されてきました。現在、年間4,000t規模の新炉発注がありますが、そのほとんどが90年代初頭に造られたごみ処理施設の更新です。環境問題を背景に取り組まれ始めた「ごみをエネルギー資源に」は、今や当たり前の取り組みとなり、新炉の建設では安定した燃焼と高い経済効率を両立させる技術提案が、地方自治体の財政負担の軽減にもつながっています。
川崎重工は、64年に第1号のごみ焼却プラントを納入して以来、現在国内で稼働している施設は78施設、建設実績は海外を含めて納入は178施設あります。80年代以降は、エネルギー拠点としてのごみ焼却施設のシステムのあり方を探求し、並行流焼却炉の開発や構造部品の長寿命化など独自の技術で高い評価をいただいてきました。特に大型炉や大型の発電設備を備える大規模施設分野では他社を圧倒する実績を誇っています。大規模施設だけに安全性や安定性、経済性などシステム全体の能力バランスが厳しく求められ、川崎重工は総合力で応えてきたのです。

ごみ処理は、まず埋め立て(ランドフィル)から始まり、国民1人当たりのGDPが5,000ドルを超えると焼却のごみ処理費用を出せるようになると言われ、ごみ焼却施設の建設が始まります。現在、この段階にあるのが中国やマレーシア、シンガポールなどです。その後にタイやインドネシアが控えています。
川崎重工は、中国企業と合弁企業を設立し、ストーカ式ごみ発電の施設をすでに10基受注しています。中国では、ごみをガス化し残った灰をセメント材料として活用するCKKシステムも普及させています。日本の優れたごみ焼却技術を世界に広めることで、世界の環境問題に積極的に貢献していく。この事業は、グローバルアジェンダの解消につながる極めて意義深いものだと考えています。

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