May. 2020

Techno Box 15

全没翼型水中翼旅客船ジェットフォイル

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離島航路に不可欠な船
25年ぶりの新造船

「離島航路になくてはならない船」といわれるのが、全没翼型水中翼旅客船「ジェットフォイル」だ。タービンエンジンでウォータージェット推進機(ポンプ)を回して海水を噴射し、前後2組の水中翼に発生する揚力で海面から浮上して航走する。最高速力45ノット(時速83km)で、波高3.5mの荒波でも安定航走する。まさに「海を飛ぶ船」だ。
元々、全没翼型水中翼旅客船は、米ボーイング社が航空機技術を水上に適用する目的で開発。1974年に旅客用が開発され、その時に「ジェットで、鋭く薄い翼を持つ」との意味から「ジェットフォイル」と命名した。87年に製造と販売の権利を川崎重工が受け継ぎ、国内では89年から95年までに15隻が建造された。

そして2020年6月、25年ぶりとなる新造船が東海汽船に引き渡される。船齢が36年を迎えた「セブンアイランド虹」の代替船で、新船の旅客定員は241人となる「セブンアイランド結(ゆい)」。大型客船では6時間かかる東京と大島を1時間45分で結び、ジェットフォイルの新たな歴史を刻む。

01タービン排気口
02ミストセパレータ
(空気吸入口)
03ガスタービンエンジン
04ウォータージェット推進機
05減速ギア
ジェットフォイルの
「心臓部」
推進機構

ジェットフォイルの推進機構は、左右に配された2基のガスタービンと減速ギア、ウォータージェット推進機(ポンプ)からなる。ガスタービンはロールスロイス社製で、1基で2,794kWの出力がある。ウォータージェット推進機は川崎重工製の「カワサキパワージェット20」で、毎分2,060回転する。タービンの回転力を減速ギアを介してウォータージェット推進機に伝え、吸入した海水を後方に高圧で噴射して推進力を得る。また「フェイルセーフ(多重安全)の設計を取り入れ、片方の機構が停止してももう一方の出力だけで安全に着水・艇走ができる」(菊野主事)。

06後部水中翼
07海水吸水口
技あり!1分間に
プール半分の水を噴射

後部水中翼の中央にあるのが海水吸入口。毎分180tの海水を吸入・噴射する。その量は一般的な25mプール(長さ25m×幅10m×深さ1.5m)の約半分の量に相当。吸い込んだ海水を高圧で噴射することで、わずか3分程で最高速45ノット(時速83km)に到達可能だ。

08コックピットはデジタル化

コックピットには最新型のデジタル液晶操作盤を採用している。

09フォワードストラット
10前部水中翼

前部水中翼は、フラップ部分が上下し、かつ主軸部分(フォワードストラット)が左右に回転。後部水中翼のフラップと共に最適な進路変更を実現する。船長はヘルム(舵輪)と翼深度レバーを操作するのみだ。

11フラップ
旋回半径は約220mの機敏な“いだてん”

「海を飛ぶ船」のTake Off

翼走(よくそう)

約35ノットで船体は完全に海面を離れ、波の影響を受けない翼走状態に入る。艇走から翼走に入るまでは約1~2分間、距離にして0.9~1.8km程度だ。最高速度で航走していても100mほどで停止できる。

離水(りすい)

水中翼を下ろし、加速を続けると翼に揚力が発生する。約15ノットで船体が浮き初め、約25ノットで離水する。

艇走(ていそう)

スピードは10ノット(時速18.5km)程度。水中翼は前後に引き上げることもできる。

ACSが担う「船酔いのない航走」

ジェットフォイルの揺れのない安定した航走を実現するのが、船の姿勢と動きを察知する8つのセンサーと自動姿勢制御装置「ACS」だ。ACSにより常にピッチングとローリングなどの動揺を制御しており、乗り心地が良く船酔いをしない。

進路変更の際も、ACSによって水中フラップが上下して船体を回転方向に傾斜させ、同時に前部水中翼のストラットを回転させてスムーズに旋回する。これにより航空機と同じように、旋回時の遠心力が打ち消され、最高速での旋回半径が約220mでも旅客は横に押される感じがしない。

デザインカラーは
「TOKYOアイランドブルー」

「セブンアイランド結」の船体デザインは、東京五輪のエンブレムをデザインした野老朝雄氏が担った。船体色は藍色の「TOKYOアイランドブルー」。その上に船名やロゴが白色で描かれる。また船体の色に合わせて内装も統一され、さらに車いすでも安心して乗船できるようバリアフリー対応になっている。

船首部のエンブレムは「結」の古代文字をアレンジ!

解説

川崎重工業株式会社
船舶海洋カンパニー
技術本部 基本設計部
高速船設計課
谷口 公俊(左)
高速船設計課 主事
菊野 信祐(右)
Kawasaki NewsKawasaki Heavy Industries Quarterly Newsletter
川崎重工グループの和文PR誌として、多彩な製品群が陸・海・空に亘る各分野で活躍する姿と、新製品・新技術の一端をご紹介しています。

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