Oct. 2016

Techno Box 07

高性能多用途双発ヘリコプターBK117 D-2

Scroll

日本レスキューの要望に
応えたニューフェイス

高性能多用途双発ヘリコプターBK117は、川崎重工と独MBB社(現AHD=エアバス・ヘリコプターズ・ドイツ社、以下エアバス社)が、1977年から国際共同開発を続けてきたヘリコプターだ。優れた運航・安全性能により警察、消防、報道、さらにドクターヘリなどとして活躍している。

そのシリーズ8世代目となる最新モデル「BK117D-2型」は、大幅な性能の向上とパイロットのワークロードの軽減を実現したニューフェイスである。
搭載エンジンをコンピュータ制御方式の新型エンジンに変更。併せてエンジン動力をメインロータに伝えるギアボックスの技術向上策を川崎重工が提案。これらにより、最も馬力が必要な重重量のホバリング状態を前モデルの5分間から30分間に延長できた。日本のユーザーからの「レスキュー運用で連続して人命救助を行うには5分間では時間が足りない」との要望に川崎重工が応えたのだった。
また、新統合型計器「HELIONIX」が搭載されたことと、4軸のオートパイロットの導入によって、パイロットの操縦負担が大幅に軽減され安全性能も向上している。さらにはテールロータを「フェネストロン型」に変更し、他機にはない低騒音を実現。環境にも優しいヘリコプターになっている。

01航空電子の最先端『統合計器 HELIONIX』

エアバス社の最先端の新統合型計器「HELIONIX」を導入。計器は6×8インチの大型ディスプレイ3台に統合され、画面回りのフレームに表示させるベゼル・スイッチを押すだけで、フライト・ナビゲーションや機体関連などの必要情報が瞬時に表示される。

操縦のしやすさと静音性がバージョンアップしました!
02安全運航に『4軸オートパイロット』

ロール(機体の左右傾き)、ピッチ(機首の上下)、ヨー(機首の左右への振り)の他に推力を変えるコレクティブ・ピッチ(CP)の制御を加えた4軸オートパイロットを導入。全15モードでの自動運航ができるようになり、パイロットのワークロードを大幅に軽減させることができる。

03川崎重工が新提案!『MGB』

川崎重工は、トランスミッション部であるメインギアボックス(MGB)のベアリング歯当たりや材質変更を提案。油が漏れて高温になっても回り続けられるドライランにも対応し、エンジンの換装と併せてホバリング性能が向上して救助作業に飛躍的な効率化をもたらすことになる。

04コンピュータ制御の新型エンジン『FADECエンジン』

エンジン性能の向上とメンテナンスの容易化のため、エンジンはサフラン・ヘリコプターエンジンズ社のFADEC(Full Authority Digital Engine Control=コンピュータ制御)エンジン「ARRIEL 2E」に換装。最大全備重量が前モデル比65㎏増の3650kgになり、さらに3700kgまで向上予定(航空局審査中)。エンジンはタービンを一つ減らして軽量化。エンジンの回転数をコンピュータで制御することによってメンテナンスも容易になっている。

05変更したテールは、より低騒音に『フェネストロン型ロータ』

テールロータを、エアバス社のフェネストロン方式(通称ダクトファン)に変更。小さな径面積で大きな推力が得られ、垂直尾翼との干渉がなく、テールロータによるヘリ全体への性能影響が少ない、そして低騒音であるなどの特徴を備えている。

存在感もパフォーマンスも圧倒的!

06観音開きドア

BK117シリーズの最大特徴である後部の観音開きドア。ドクターヘリでは患者搬送を容易にするものとして高い評価を得ている。

シリーズ累積納入台数は世界で1304台

BK117シリーズは、1982年の初号機以来世界で1304台※が導入されたベストセラー機だ(2016年6月現在)。日本でも175台が最終組立されている。ドクターヘリとしては日本国内の約4割のシェアを持っている。※川崎重工とエアバス社の合計数

図:BK117の設計変更の変遷

解説

川崎重工業株式会社
航空宇宙カンパニー 技術本部
ヘリコプタ設計部
計画二課基幹職
北村 淳
Kawasaki NewsKawasaki Heavy Industries Quarterly Newsletter
川崎重工グループの和文PR誌として、多彩な製品群が陸・海・空に亘る各分野で活躍する姿と、新製品・新技術の一端をご紹介しています。

Kawasaki Group Channel