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産総研とバイオ・IT融合による多元タンパク質解析装置の開発を開始

2003年06月16日

 

日本電気株式会社、NECソフト株式会社、川崎重工業株式会社、東京理化器械株式会社、日本電子株式会社の5社はこのたび、独立行政法人産業技術総合研究所生命情報科学研究センター(CBRC)と共同で、それぞれが得意とする先端技術を融合して、「バイオ・IT融合による多元タンパク質解析装置」の開発を開始いたしました。

「バイオ・IT融合による多元タンパク質解析装置」は、主に、テーラーメイド医療(注1)の現場で有用となるタンパク質の解析を高速・高精度に可能とする装置であり、(1)タンパク質微量解析装置、(2)統合プロテオーム解析(注2)用インフォマティクスシステムの2つのシステムにより構成されており、3年後を目処に実用化される予定であります。

本装置は、二次元電気泳動解析に必要な試料の約1/20にあたる1マイクロリットル程度の極微量の試料での解析を業界で初めて実現するとともに、タンパク質微量解析装置によって生成され解析された微量タンパク質の発現データを、大規模PCクラスタ(注3)システムなどにより、空間軸(組織・細胞部位等)、時間軸(成長過程等)、外部要因(疾患等)、内部要因(SNPs、 遺伝子発現等)などの多元的な解析を行い、生体機能を解明し、疾患原因の解明や新たな診断・治療法の確立に寄与いたします。

なお、今回のプロジェクトは、経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による助成事業である、健康維持・増進のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラムに係る「バイオ・IT融合機器開発プロジェクト/DNAタンパク質等解析システム及びデバイス開発」に応募し採択されたものであります。

「バイオ・IT融合による多元タンパク質解析装置」を構成する(1)タンパク質微量解析装置、(2)統合プロテオーム解析用インフォマティクスシステムの概要は以下のとおりであります。

(1)タンパク質の微量解析装置
タンパク質微量解析装置は、バイオチップ、波長可変赤外線レーザ技術、高性能な質量分析計、ならびに質量スペクトル(注4)解析技術の融合により、生体から採取した微量組織中のタンパク質発現プロファイルの解析を行い、病変組織と正常組織の判別を可能とする装置である。

(2)統合プロテオーム解析用インフォマティクスシステム
統合プロテオーム解析用インフォマティクスシステムは高精度かつ容易にタンパク質微量解析装置によって生成された膨大なデータを解析するためのシステムである。
具体的には、大規模PCクラスタや解析機器、解析ツールソフトのほか、情報を横断的に分析・統合するバイオ用統合データベース、タンパク質のアノテーション(注5)を実施する際の文献データマイニング、プロテオーム解析の大規模オートメーション化に必要なデータ管理支援システムにより構成されている。さらに、バイオインフォマティクスを用いることにより、同一でありながら異なる名称で呼ばれているタンパク質を同一のものとして認識することや、逆に、同一名称であっても実体が異なるタンパク質を正しく処理するためのタンパク質名称管理も可能である。

今回、開発を手がける5社およびCBRCは、国・大学・バイオ関連企業の研究部門、医療研究機関、大学病院、臨床検査会社を中心に、「バイオ・IT融合による多元タンパク質解析装置」を販売してまいります。

近年、ヒトゲノムシーケンス解析や遺伝子から発現されるタンパク質の立体構造・機能を解析し、医薬品や医療診断システムなどの開発に結びつけるプロテオーム解析(タンパク質の網羅的構造・機能)に対する研究競争が国際的に激しさを増しております。
このような背景を踏まえ、5社では各社のコア技術を結集することによって、「バイオ・IT融合による多元タンパク質解析装置」の開発を短期間に行うことにしたものであります。
5社は、今後とも新市場開拓のため、研究開発並びに販売の両面において協力しあっていく所存であります。

(注1)テーラーメイド医療

個人個人の体質や薬剤感受性、あるいは病態などに応じて投薬、治療を行う医療でヒトゲノム解析の進展によって可能性が高まっている医療をいう。


(注2)プロテオーム解析

細胞や組織で発現しているタンパクの総体をプロテオームとよび、その解析をプロテオーム解析とよぶ。


(注3)PCクラスタ

IA(インテル・アーキテクチャ)サーバを複数台相互接続し並列処理を行うコンピュータシステムで大規模並列接続によるスーパーコンピュータ並みの計算能力を有する。


(注4)質量スペクトル

測定試料を電子衝撃やレーザなどによってイオン化し、生成したイオンをその質量電荷比(m/z)に従って分離・分析する装置を質量分析装置と呼ぶ。この装置により得られた各イオンのm/zとその相対強度とを表や棒グラフの形で表したものを質量スペクトルと呼ぶ。一般に化合物をイオン化する際に、過剰なエネルギーにより分子が解裂するため、得られたスペクトルは、化合物に固有な複雑なものとなる。この質量スペクトルをコンピュータを用いて解析することにより試料の組成や構造に関する情報を得る。


(注5)アノテーション

「機能など」の注釈付けを行うこと。機能未知でも相互の相同性を書いたり、立体構造分類を書いたりするのもアノテーションという。



<各機器・システムの概要>

タンパク質の微量解析装置

○タンパク質分画用バイオチップ(担当:NEC)

微量組織試料に前処理を行うことにより、組織中に含まれるタンパク質の抽出・変性処理を行った後、バイオチップ上に形成された微細構造によりタンパク質を分離する技術を開発する。これにより、従来の二次元電気泳動解析に必要な試料の約1/20にあたる1マイクロリットル程度の極微量の試料での解析が可能となり、生体からの採取における人体の負担軽減、検査の安全性向上が図られる。


○高効率タンパク質脱離イオン化用赤外線レーザ(担当:川崎重工)

赤外域で連続的に任意の波長に調整可能な高出力の赤外線レーザを開発する。種々のタンパク質組織では、異なった波長で励起イオン化が起こるため、従来の波長が固定されたレーザではなく、波長可変とするレーザ技術が必要となる。この川崎重工の赤外線レーザは、波長可変を特長とする現在市販の同種赤外線レーザの中でもパルスエネルギーが最大であり、質量分析装置用のレーザに要求される高出力でピンポイントのレーザ照射という要件に最適なものである。


○質量分析計(担当:日本電子)

波長可変の赤外線レーザを利用したMALDI (Matrix Assisted Laser Desorption Ionization)法により離脱イオン化を行い、飛行時間質量分析計(TOFMS: Time-of-Flight Mass Spectrometry)により分析する装置を開発し、これによりタンパク質の検出・同定を行う。


○実証評価(担当:東京理化プロテオミクス研究所、NEC)

統合プロテオーム解析用インフォマティクシステムのプロテオーム解析評価を行う。東京理化プロテオミクス研究所とNECは、プロテオーム解析において、約2年前から共同研究を行っている。両社は、独自で行ったり、医療機関との共同研究で行っているサンプルのプロテオーム解析を実施する際に、タンパク質の網羅的解析(二次元電気泳動-質量分析)データをプロジェクトに提供すると共に、今回のプロジェクトで開発する解析装置、解析ソフトやデータベースを利用することによって、システムの評価を行い、システムの改善に貢献する。評価に用いるためのサンプル組織として、腎組織(IgA腎症)、肝臓組織(原発性肝内結石症)、ヒト血漿(HUPO分担課題)、尿(腎ネフローゼ)、マウス脳(老化シグナル伝達)やモデル生物(線虫)等を用いる


統合プロテオーム解析用インフォマティクスシステム

○統合データベース(担当:NECソフト)

タンパク質微量解析装置などのプロテオーム解析によって生成される膨大なデータを高速処理するための並列PCクラスタによる並列ファイルシステム機能、多様な解析機器や解析ツールソフトを統合的に扱い、それぞれの情報を横断的に分析・統合するプラットフォームになるバイオ用統合データベースを構築する。


○文献データマイニング、高精度マススペクトル解析ソフトウェア、バイオ向け並列ファイルシステム、プロテオーム解析データ管理支援システム(担当:NEC)

タンパク質のアノテーションを行う際に重要な文献データマイニング、プロテオーム解析のファクトリ化に欠かせないデータ管理支援システムを開発する。さらに、バイオインフォマティクスを用いることにより、本来同一でありながら異なる名称で呼ばれているタンパク質を同一のタンパク質として認識することや、または、同一名称であっても実体が異なるタンパク質を正しく処理するためのタンパク質名称管理機能も実現する。

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