安全で高効率な地雷探知/除去作業を実現する人道的地雷除去システム「BULLDOGシステム」のアフガニスタンでの現地実証試験を完了

2005年03月10日

 

川崎重工は、高い安全性と効率性を兼ね備えた人道的地雷除去システム「BULLDOGシステム」について、アフガニスタンの地雷原で実際に地雷除去を行う実証試験を完了し、同システムによる地雷除去作業の安全性および有効性を確認しました。

当社が開発した「BULLDOGシステム」は、以下の各装置・機器により構成されるシステムで、安全かつ効率的に地雷埋設場所の特定が行えるとともに、住民が生活する比較的平坦な居住地域、耕作地域、道路、空港およびその周辺などの地雷原において、オペレータの安全を確保しながら迅速に地雷除去作業を行うことができます。

(1) 6チャンネルの地雷探知センサーなどにより、地中に埋設されている対人・対戦車地雷や不発弾、地表面の散布地雷やわな線を探知する地雷探知車「MINE DOG」
(2) 地面を掘削しながら地雷を爆破する掘削ドラムと確認探知作業の妨げとなる地中の鉄片を回収する機構を装備した対人地雷除去車「MINE BULL」
(3) 「MINE DOG」、「MINE BULL」の遠隔操縦・操作装置

 

当社は、2004年に日本政府による無償資金協力事業「対アフガニスタン地雷除去活動支援機材開発研究計画」の一環として、日本製の対人地雷除去車および地雷探知車が、人道的地雷除去活動を行っているアフガニスタンの自然環境下でも十分適合できることを調査検討するため、今回の現地実証試験を行いました。なお、現地試験では、アフガニスタン政府機関、国連関係機関および現地NGOの協力の下、以下の項目を実施しました。

1)模擬地雷を使った性能実証試験(カブール市近郊の国連不発弾処理場で実施)

(1) 地雷探知車: 平坦地、凸凹地、鉄分を多く含んだ土壌などで地雷および不発弾の探知試験を行いました。平坦地の試験では、対人地雷、対戦車地雷、不発弾ともに探知率100%、誤警報率0.0~0.2個/m2の好結果を得ました。
  (2) 対人地雷除去車: 平坦地、うねりのある地形、硬い地面などで多くの試験を行い、耐久性、搭乗運転による作業性および車両の操作性に問題がないことを実証しました。また、300m以上離れた地点からモニター画面およびエリアマップを見ながら遠隔操縦し、作業性および操作性を実証し、各種模擬地雷に対する除去率の平均値83%、鉄片回収率90~100%の好結果を得て、国連、アフガニスタン政府および現地NGOから高く評価されました。
2)実地雷原での試験(カブール国際空港周辺の実地雷原で実施)
  地雷探知車は、地雷原を管理しているISAF(国際治安支援部隊)の指示によりサブサーフェス・チェック(地表からの深さ50cmまでクリア)の終わったエリアで不発弾探知を行い、深さ1.5mで異物を発見し、そのエリアマップを作成しました。また、対人地雷除去車は探知試験エリアからは離れた実地雷原で幅2m×長さ50mのエリアを遠隔操縦により約20分で作業し、32個の対人地雷を爆破処理しました。爆破処理後の点検の結果では、除去車の車体は無傷であり、対人地雷除去車として作業性、耐爆性および安全性が高いことを実証することができました。

3)爆破試験

地雷除去車は、炸薬量750g、2kgおよび8kgでの爆破試験を実施し、車両の損傷度およびオペレータへの影響度に関するデータ収集を行いました。

当社は、1993年から、地雷探知および地雷除去について独自の研究開発を行うとともに、防衛庁における当分野の研究活動に積極的な技術支援を行い、評価用に多くの試作品を提供してきました。また、遠隔操作については、人間型ロボットの遠隔操作技術やロボットなど各種産業用機器の電子制御に関する高度な技術を保有しており、1992年には国連のカンボジアにおけるPKO向けに遠隔操縦型ロードローラを納入した実績があります。今回の人道的地雷除去システムは、これまでに蓄積してきたこれらの技術と経験を結集して開発したものです。

当社は今後、これらの成果とともに今回の実証試験により得られた貴重な試験データ、国連および現地NGOからの要望事項の情報を基に来年度以降も開発を継続し、早期の実用化を目指します。本システムの開発を通じて、当社は政府の国際貢献活動の一環である人道的地雷除去支援活動および実際に地雷除去を推進している各国のNGO活動に貢献していきます。

※誤警報率: 試験区域面積あたり、土壌に含まれる鉄片や岩石などを地雷と誤認識した個数。この数値が低い方が、地雷除去作業後の確認作業が容易になる。