「疲労センサ」による溶接構造物の余寿命診断ソリューション事業を開始(川重テクノサービス)

2004年07月26日

 

川崎重工グループの川重テクノサービスは、貼付型小型ゲージ「疲労センサ」を用いた鋼構造製品を中心とする各種構造物の余寿命診断ソリューション事業を開始しました。本事業は、川崎重工が開発した小型金属箔ゲージ「疲労センサ」を用いて、川崎重工および当社の疲労損傷対策に関する豊富な経験に基づき溶接構造物の余寿命診断を行うものです。

今回開始した余寿命診断ソリューション事業では、輸送機器、橋梁、建設機械、回転機器などの繰り返し荷重、振動荷重を受ける製品や、風、波浪などの自然現象で外力を受ける構造物を対象に、溶接接合部の疲労度合いを計測し、余寿命を診断します。
これまでの構造物の探傷検査では、金属疲労によるき裂や割れの有無を調べるのに対し、本手法では、繰り返し荷重が働く溶接接合部などでき裂や割れが発生する前にその場所での損傷発生時期、すなわち余寿命を予測します。
この診断を用いることで、以下のようなメンテナンスが可能になり、製品の安全性を向上させることができます。

疲労で壊れやすい部分の損傷発生時期を予測でき、損傷する前に補強、補修などの予防保全や設計変更が可能。
供用中の構造物の補強や改造の前後で診断することにより、補強・改造効果を確認可能。
新造品だけでなく、使用年数が判明している既存製品についても余寿命診断が可能。
余寿命診断結果に基づく経済的な定期点検計画の立案が可能。
実際の供用期間の数十分の1から数百分の1の期間の計測で余寿命が予測でき、製品開発時における試作耐久試験などの期間短縮や計測評価のコストダウンが可能。


川崎重工が開発した「疲労センサ」は、長さ10~20mm程度の長方形金属箔ゲージです。このゲージを構造物の溶接部付近の応力集中部に貼り付け、一定期間中にゲージ上に伸びるき裂の長さをもとに溶接部での疲労度合いを算出し、将来溶接部に疲労き裂が発生する時期を推測することで余寿命を診断・評価します。従来のひずみゲージを用いた疲労損傷度診断では、計測機器の制約から短時間で少ない応力頻度計測データを利用していましたが、「疲労センサ」では多点数で数ヶ月という長期間にわたって計測することで、寿命推定の精度を向上しています。

「疲労センサ」の特長は以下のとおりです。

10~20mm程度と小型なので、応力集中を受ける部位の疲労度合いを直接計測可能。
計測機器、配線、電源が不要。
多数貼付により構造物全体の寿命分布を低コストで作成可能。
製品の供用中に長期に計測することで、信頼性の高いデータが収集可能。
センサ製造には、電子機器製造などに使うフォトエレクトロフォーミング(写真製版を応用した薄膜電気鋳造)により、安定した性能を確保。


当センサは、すでに川崎重工製の橋梁、鉄道車両・施設、船舶などへ約900枚を適用し、製品の健全性照査や補修修繕費用を削減した実績があり、今回の診断事業はグループ製品で培ったノウハウを基に開始するものです。当社は本事業の他に、各種材料分析、構造の強度・振動、騒音など検査・計測分野において豊富な経験を有することに加え、各種製品の診断・評価事業も手掛けています。これらの経験や実績から得られる幅広いノウハウを用いることで、当社は信頼性の高い疲労強度検討・余寿命診断に基づくソリューション事業を推進します。


<疲労センサによる余寿命診断事業に関するお問合せ先>
川重テクノサービス(株)
Eメール:fds@ati.khi.co.jp